実況:トッピー 解説:オドリー

「本シリーズも十作目を迎えました!そんな記念すべき回に実況を務めさせていただきますのは、私トッピーでございます」

「今回は解説をさせて頂きます、オドリーです」

「さてオドリーさん。今回の勇者は一風変わっているという事で」

「ええ。今回実況させて頂く勇者は、自在に異世界とニホンとを往復できる能力を持っております」

「そんなんチートや、反則やぁ……という声が聞こえてきそうですね」

「色々と、とってつけたような制約はあるらしいのですが、そのあたりの解説など皆様は求めてはいないと思うので、スルーさせて頂きます」

「流石はオドリーさん。面倒な説明をうまく省きましたね」

「その言い方はちょっと。そこを説明したところで、今回の実況にはさして影響はないだろうと判断したまでです」

「では、早速実況をして参りましょう。今回の勇者は女性ですか」

「どうやら異世界ではなく、ニホンの総合スーパーと呼ばれる場所にいるようですね」

「まずはエレベーターで一番上まで上がってから、女性服を見ていくようですね」

「勇者として呼び出される以前の本業は大学生だったと聞いていますから、おしゃれには気を遣っているのでしょう」

「常に鎧を着ておけばいいんじゃないですかね?あれこそ、勇者の正装でしょう」

「現代ニホンでそれをやったら、ある意味人目は惹くでしょうね。悪い意味で」

「ふむ、どうやらインナーを選んでいる様子」

「見せるインナーというものもありますからね。まずは内側からコーディネートを考えるタイプなんでしょうかね?」

「鎖帷子でいいのでは?」

「それは戦闘用ですね。今選んでいるのはあくまでも私服でしょうから」

「いざという時の為に戦闘にも耐えうる服装を選ぶのは、常在戦場を心がけるなら当然の事では?」

「彼女はそういうことを考えてはいないと思いますよ?」

「不用心ですねぇ」

「現代ニホンなら、心配はないでしょう」

「いやいや、突然魔王が異世界から攻めてくるかもしれませんよ?」

「まさか。ファンタジーじゃないんですから」

「この実況自体が既に、ファンタジーに足を突っ込んでるのですが?」

「それは考えない方向で」

「なるほど。都合の悪いことから目を逸らすことも、時には必要という事ですね」

「素晴らしく不本意な言われようですね」

「さて、今度はスカートを見ている御様子」

「手に取っているのは、フレアスカートと呼称される類のものですね。色合いや柄、丈の長さなど、さまざまな種類があります」

「あまり丈が長いと、足捌きの邪魔になりますね」

「そういう観点で吟味しているわけではないと思います」

「蹴りを繰り出すにも不向きですし、スラックスなどの方が良いのでは?」

「繰り返しますが、そういう観点で吟味しているわけではないと思います」

「やれやれ。この国の平和ボケも、なかなか深刻ですね」

「一概には否定しづらいところですが、闘争が身近にある世界とは違うので、ある程度は仕方ないのでは?」

「やはり、ここは我々の力で腑抜けた国民たちの目を覚まさせてやるべきでしょう。とりあえず、エンシェントドラゴンとかいっときます?」

「居酒屋で追加を注文するような感覚で、曲がりなりにも平和な世界を混沌に陥れるのはやめてください」

「じゃあ、レイスキングで」

「召喚する対象を変えればいいという問題ではありません」

「そこまでいうなら、シャドウアイぐらいにしておきます。暗闇の中から一つ目がお前達を見ているぞ!」

「都市伝説や怪談になりそうですね」

「まあ、そちらの実行は友人にやってもらっておくとして」

「あ、やるのはもう確定なんですね。……まあ、じっと見つめてくるだけで害はないから大丈夫でしょうが……」

「今度は、雑貨屋のような場所を訪れていますね」

「100円均一ショップと言う奴ですね」

「どうやら、文房具を見ているようですね」

「100円均一のボールペンは安くていいですよね。書き心地は難ありですが」

「そうですね。硬化魔法を併用すれば、即席の投擲武器にもなりますし」

「中のインクに関わりなく、赤色が滲みそうですね」

「カッターナイフなども、隠し武器としては一考の余地ありですよね」

「そんな余地はないです」

「ナイフよりもさらにコンパクトな武器ですよ!?これは使うっきゃないでしょう」

「本来の用途以外に使用しないでくださいと、注意書きにも書いてありますよ?」

「世界の危機と天秤にかける程の拘束力ではないでしょう」

「そう返されると、私としては沈黙する他ありません」

「どうやら、シャープペンシルというものを買っていくようですね」

「異世界から見れば、便利なことこの上ない筆記用具ですね」

「ノックするだけで、中に装填した針が射出されますからね。音も小さいですし暗殺向きです」

「そんな機構は搭載されていません」

「そうなのですか?私が以前見たスパイものの映画では確かに……」

「それは創作です」

「そういうていで、実際には存在するのでしょう?」

「確かにないとは言い切れませんが」

「ともあれ、日用雑貨に紛れて、こういった武器の類もしっかり扱っているとは。ニホンの武器屋恐るべしですね」

「武器屋でなく、雑貨屋です」

「ニホン人が平和ボケしていると言ってしまいましたが、あの武器商人のような方に対しては失礼だったかもしれません」

「パートタイムで働いているあの店員がそれを聞かされたら、さぞかし困惑するでしょうね」

「表向きは日用雑貨店と言い張りながら、裏では武器の卸売りも行っているとは。法律の目を盗んででも、同胞を未来の危機から守るために、黙々と地下活動を行っているのですね」

「素晴らしい買い被りですね」

「さて、最後は一階の食品売り場のようですが」

「今日の夕飯の材料の買い出しでしょうかね」

「お、あの冷凍された魚はなかなかですね」

「おや、トッピーさんは魚の良し悪しがわかるのですか。私は目利きというのがどうにも苦手でして」

「冷凍されており硬度は充分。おまけに冷気の属性付き。きっと、良い打撃武器となるでしょう」

「食材を武器に見立てないでください」

「以前映像で見たカジキマグロとやらなら、刺突武器としても使えそうですね」

「そして完全に解凍された暁には火で炙って食糧にですね、わかりません」

「あれ程の性能なら、食材ではなく武器として使っても良い結果を出すでしょう。今度、私が勇者を送りこむときには、初期装備として贈呈するのもいいかもしれません」

「その勇者の模様を小説にでもすれば、案外評判になるかもしれませんね。ユーモアが主題の場合はですが」

「いっそ、このコーナーで実況してみるというのはどうでしょうかね?」

「これ以上カオスを詰め込むと、収拾がつかなくなって視聴者を置いてきぼりにしそうです」

「それもそうですね。今回は比較的良識のある私が実況なので、そんな心配は無用ですが」

「良識はともかく、常識は欠けているかと思います」

「あの長ネギというのもなかなかですね。魔術師に杖として持たせてみるのはどうでしょうか?」

「手から臭いが取れなくなりそうですね」

「やはりゴボウの方が無難でしょうか?土属性魔術に特化しそうですが」

「そういう問題ではありません」

「ゴボウはリーチ的にも形状的にも、槍として使う方が向いてそうですものね。これは、私としたことがうっかりしていました」

「これまでの発言を鑑みたら、もっと反省するところがあるかと思われます」

「さて、そろそろ時間となりますので、今回はこのあたりで締めとしましょうか」

「そう致しましょう。視聴者の方々も、お腹一杯でしょうから」

「食材だけにですか?」

「武器と言い張らなかった点は評価しましょう。上手い事言ったかどうかは、視聴者様次第という事で」

「では、また次回お会いしましょう!さようなら!」

「お疲れ様でした」

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