第10話 勉強と、図書館と、富山くんと
「そろそろ中間テスト、二週間前ですね。皆さん、ちゃんと勉強してますか? してないという人は、そろそろ勉強し始めた方が良いかもしれませんね」
真江ちゃんに威嚇? をされてから、富山くんとギクシャクしてしまっていた。
それでも何とか愛想笑いでのりきり、一週間ほど経った朝···朝礼で担任の先生がにこやかに微笑んで言う。
私は、その言葉で中間考査の存在を思い出した。
やばい。何もしてない···中間考査って、どうやって勉強すれば良いのかな? 受験は塾に行ってればよかったし···とりあえずノートでもまとめてみる?? いや、それとも何か問題集でも···?
そういえば、私は今まで塾以外で勉強していた事がない。勉強の仕方が分からない。どうしよう···?
私が内心パニックになっていると、
「きりーつ」
慌てて立ち上がる。
「気をつけ、礼」
はぁぁぁぁ。
どうしようか···。
誰かに相談してみるかな?
七海はきっともう何かしらやってるよね···、うん! 七海に頼ろう!
そう思って私が七海の所に、歩きだそうとした時。
「あのさ。河本···なんか、ここ最近ごめん」
「え」
富山くんが、座った姿勢のまま見上げるようにして話しかけてくれた。
「···それで相談なんだけどさ。あの、図書館で勉強しようって言ってたことあったよな? 嫌だったら断ってくれて全然良いんだけど、良ければ···明日とかに、図書館で勉強しないかなと思って」
「明日···って、土曜日?」
「そう。一時までは誰でも残れるからさ、弁当持ってきて食べて、それから勉強するとかどう?」
富山くんは少し赤いように見える顔で、必死に誘ってくれた。
···赤くなってる? 赤くなってるよね? 脈アリと見ていいかな? でも、真江ちゃんのこともあるしなぁ···どうだろう···
「あ、あの、ほんとに断ってくれて良いよ」
「え? あ、いや、全然大丈夫だよ!」
「ほんと? 遠慮しなくて良いんだけど」
やばい。思考に没頭しすぎて返事してなかった。遠慮なんてしてないのに、嬉しいのに、このままだと誤解される!!
「嬉しいから! ほんとに! 大丈夫!」
必死に訴える。
ここで誤解されるとだいぶ困るから。
すると、富山くんは軽く目を見開いて驚いたような顔をした後、ふわっ、と笑った。
「良かった。じゃあ、明日弁当持ってきて。楽しみにしてる。ありがとう」
「え、あ、うん! 私も、凄く楽しみ···」
富山くんがあまりに屈託なく笑いかけるから、恥ずかしいはずのセリフもぽろっと言えてしまった。
その後。
···うわぁぁぁどうしよう! これは脈アリ? ってか明日ほんとに一緒に勉強できるの?! 夢みたい! 覚めないで! え、ほんとに良いのかな?! 明日どうしよ···話せる自信が無いよぉぉぉ···!
私の心の中で、大パニックが起こったことは言うまでもないだろう。
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