第7話幼なじみ、真江ちゃん

ガラガラッ


私がドアを開けて教室に入ると、咲絵と七海がぱぱぱぱっと駆け寄ってきた。


「おはよう? 珍しいね、ふたりがこんな時間に来るなんて·····」


「「そんなこと言ってる場合じゃないよ!」」


のんびりと声をかけたら、ふたりが声を揃えて訴えてきた。

いつの間に仲良くなったんだろうか? まぁ、友達同士が仲良くなってくれるのは嬉しいから気にすることでもないか。


「ほらほら、あそこ!さっきからずーっとあんな感じなんだよっ!」


七海が、手をバタバタさせて訴える。


指さした方向を見ると·····


「ねぇ、春樹!今日ってさー、春樹のクラス社会ある?」


名前呼び·····?!

私が驚いてふたりを見ると、七海と目が合った。明らかに、目が尖っていて面白い。


「そうだね。あるかもしれない」


春樹くんも、普通に返しているようだ。


「そっかー。春樹って、社会得意だったよね? って、あ! 隣の席の子、まだ来てないけど仲良くしてるー?」


女の子が、爆弾発言。

私は隣に行くにも行けず、ドアのところで止まっていた。というか、咲絵と七海によって止められていた。


「·····ねぇねぇ、どうすればいいの?!」


ふたりに、小さな声で助けを求めると。


「行ってくれば? 私が隣の席ですって」


「ええ? 無理だよ!」


焦るばかりで、行動に移せない。

もたもたしていると、富山くんがぐるっと教室を見渡し·····私と、目が合った。


あっ、と思う間も無く、富山くんは私を見て言う。


「あの子だよ。河本奈緒さん」


「どの子?!」


富山くんの視線を追って、その子は私を見る。

·····若干目が怖いのは、気のせい、だよね??


「よ、よろしくね」


焦ってとりあえず言ってみた。

隣で七海が


「ライバルによろしくって、何がしたいの?!」


とか小さい声で騒いでいたけど、しょうがない。だって、可愛いんだもん。できれば仲良くしたいもん。


でも、そんな私の思いも虚しくその子は剣呑な目をしながら笑いかけてきた。


「よろしくね、河本さん。私、林このはです」


·····目が怖くなければ、めちゃくちゃ可愛いんだけどな。


「河本、仲良くしてやって。」


富山くんが本当に嬉しそうな笑みを見せてくれるけれど·····それはちょっと無理っぽい、かな?ゴメンナサイ。


「ま、そんなことより春樹?ここでは、私のことこのはって呼んでくれないんだね?私は呼んで欲しいのに」


うわぁぁぁ!名前で呼ぶ間柄なんだ!

傷ついてないよ?傷ついてないけど·····いや、やっぱり傷ついてる。

相当なショックを受けていた私には、


「んー?別にいつもだって林のこと名前呼びしてなくない?そんなに仲良くなかったし」


という富山くんの声は聞こえなかったのでした·····

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る