第27話 ローラースケート
ローラースケートが流行った時期があった。
おもちゃ屋で売っていたのは、4つのローラーがついて靴底に固定して使うタイプだった。つま先にブレーキに使うゴムが付いている。
父は兄弟で遊べるように弟へもローラースケートを買い与えた。弟も少しずつ滑れるようになった。足の不自由な兄はローラースケートで滑るのは無理だった。つまづくような走り方で一緒に駐車場で遊んでいた。私達が転けたら笑っていた。
早速、遊び場の駐車場集まった。座り込んでローラースケートを靴に固定する。駐車場の壁に手をついてゆっくり立ち上がる。ローラーは4つも付いているから立ち上がるだけなら初めてでもなんとかできた。だが、進もうとするとおぼつかない。
足を上げるとコケる。
両足で歩こうとしてコケる。
右足と左足にうまく体重をかけられるようになったら、ローラーで音を立てながらスピード出して滑ることができた。
「ローラースケートを履いて、絶対に車が走る道路に出たら駄目」
母は私達に言った。
度胸試しだ。
こっそり家の前の一方通行の狭い道路を往復。
兄弟で次の挑戦に望む。
駐車場は奥の方に向かって上り坂になっている。この坂をローラースケートで登れない。勢いをつけて登っても途中で失速する。登りたい。
弟も私も手をついて四つん這いになって坂を登った。
そして、一気に下って壁に激突する前に手をついて止まる。
一気に下るスピードは爽快だ。
調子に乗った私は、ローラースケート履いたままで駐車場に停めてあった真新しいバイクCB750に跨った。父が開放していた自宅裏の家に出入りしていた大学生のものだった。バイクからの目線の高さを楽しんだ。
バイクから降りて、再び駐車場をグルグルと駆け回る。
大学生が裏の方からやって来た。帰るところだったのだろう。
バイクの側まで来て彼が言う。
「バイクに乗ったりしなかったよね」
私達は無言で首を振る。
いつもは優しい大学生が厳しい口調で言う
「ローラースケートを履いたままのってないよね」
私達は無言で首を振る。
バイクのタンクの塗装に見て小さい傷が入っている、ようだった。私が近づいてみたけれども分からない。
優しい彼は、それ以上は何も言わず、バイクで走り去った。
「750ライダー」という漫画も流行っていた。バイク乗りは硬派な男の人のイメージだった。その後、バイトして買った新品の、そのバイクは駐車場の奥の方に停めてあった。
今日は、春を感じるいい天気だ。
私は車を運転しながら窓を全開にした。
タンクの傷はあったかなかったのか。分からないけど、ごめんなさい。
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