第22話 駐車場
自宅前の駐車場。
コンクリートを打った地面に背の高いスレートの屋根が建てられれあって車は横並びに4台入れることができる。その前には緩やかな坂になっていて、さらに数台駐車できそうな広さがあった。
そこで、よく遊んだ。
お盆には花火をしたり、補助輪なしの自転車の練習もした。
幾つかの事件も起こった。
駐車している我が家の自動車の運転席に座りステアリングを操作して運転ごっこをするのが、兄は好きだった。機嫌よく、ステアリングを操作したり、あちらこちらキョロキョロしていた。念の為、居間の窓から父は様子を眺めながらTVを見ていた。
私は父の側でTVを見ていたときだった、父が突然ソファから立ち上がり、窓を開け、塀を乗り越えて駐車場に飛び降りた。が、そのときは、車は駐車場の壁に激突していた。
兄は無事だった。
ハンドブレーキを下ろしたため、緩やかな勾配のある駐車場を車が進んでいったのだ。車も大きく壊れた様子は、なかった気がする。
兄は思わぬ出来事でびっくりしながらも喜んでいた。父に叱られはしたが、しばらくすると懲りずに自動車に乗りたいと、指を指して主張していた。
そんなことが、二、三度あった。
広い駐車場ではボール遊びもできる。
カラーボールを屋根まで放り投げ落ちてくるところをキャッチする。友達と一緒のときには、かわりばんこで放り投げる。遠くまで投げすぎると、戻ってこずに反対側へ転がり落ち、ドブにぽちゃんと落ちることになるから、そこそこの難易度はあるのだ。
ある時、新しい遊びを思いついた。
給食当番で着用する白衣と帽子を入れた白い袋を放り投げるのだ。袋の口を締める紐を使って袋を回し、勢いをつけて放り投げると、駐車場の屋根まで届くのだ。
「そりゃ」
声を出して放り投げる。トンと軽い音を立てて屋根に落ちると、こちら側に転がって落ちる。後ろに下がりながら給食袋を受け止めた。
友達も負けじと放り投げる。
「そーれっ」
同じようにトンと軽い音を立てた。
しかし、落ちてこない。
友達の顔が青ざめる。小学低学年では屋根の上の様子は分からない。
給食袋を忘れるどころか、屋根に放り投げる大事件。名案も湧かず、その日は解散することにした。
小さな大事件が幾つもあった駐車場。
家族で忘れられない事件、父も母も知らない子供だけの事件。
思い出すのは些細なことばかりだ。
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