第12話 小探検
通っていた小学校の裏には、低い丘があった。
周囲には木が生い茂っていたが、山頂は岩場になっていた。山頂からは、近所の家の屋根が並んでいるのがよく見えた。隠れ展望スポットだった。
ほどよく茂みもあって、鬼ごっこや隠れんぼにぴったりの丘だ。近所の子供の遊び場になるのは必然だ。学校に隣接していたけれども、自然学習の森というわけでもなかった。
放課後に一人で、その丘まで探検に行った。
何もすることがなかったからだ。
頂上まで行ったら、知らない大人がいた。男性だ。
日が少し陰り始めた時間だったから、顔まではっきり見えてない。
こちらに気がついたみたいで、ゆっくりと立ち上がった。私は怖くなって距離をとりつつ頂上付近から遠ざかろうとした。すると、男はポケットに手を入れつつ、歩いて降りていった。今思えば、高校生くらいの年齢だろう。
離れてすれ違う、様子を伺いながら入れ違いに頂上に立った。
景色を眺めてみた。だが、怖い思いをしたからか、落ち着かない。折角、丘に一人だけになったから、ケイドロに有利な場所を探してみようと思った。うまい隠れルートを発見できるのかもしれない。
急な斜面で茂みで、普段入り込まない領域。真っ直ぐに降りれないが、頂上から少し降りたとこから回り込めば通れるかもしれない。小学校の反対側で目立たない茂みの隙間に入り込む。しゃがんで歩くとどうにか通れた。そのまま、ごそごそと進むと、少しだけ開けた空間に出た。
高い木々に囲われてて薄暗い。
見回すと、崖の下にくぼみを見つけた。その穴は土砂に埋もれていたが、奥がありそうだった。たぶん、防空壕の跡だ。踏み出すと、足元が沈み込む。枯葉が深く積もっている場所だった。驚いて後退った。
どうしたものかと思案した。見上げると、木々の間から空が見えた。
鳥の声がする。小学校の校庭で遊んでいる声がする。
脳内に音が入って来て、身動き取れなくなった。
夕日が沈み始め、薄暗くなり始めていた。
その後、どうしたのか覚えてない。
音が印象に残っている記憶はあまりない。そんな小さな探検だった。
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