理解されない想いと悩み

どらぽんず

理解されない想いと悩み


 ――私はきっとおかしいんだろうと、そう思う。


 私には幼馴染が一人いた。


 彼女はとても綺麗で、ちょっと性格に難があるところもあったけど基本的には善人で。なにより面倒見がよかった。


 どんくさくて殆どの人間が見放すような私と、今でも時間を作って遊んでくれているところからもわかる事実だった。


 ……まぁ、偶然にも学校とそのクラスがほぼ同じだったことが影響している気はするけれど。


 彼女は元々綺麗な人だった。


 しかも、その上でおしゃれなどの工夫も怠らない努力家だった。


 そして、そういった努力家にありがちな傾向とでも言えばいいのだろうか――彼女は私にも度々、同じような努力をするように言ってくることがあった。


 勉強などはむしろ私の方が出来ていたので教える側に回ることができたのだけど、おしゃれなどは彼女の領域だったから、大人しく教えられる側に回っていた。



 ――一番好きな時間は、化粧について教えてくれる時だった。



 彼女の家、彼女の部屋で、二人きりの時間を過ごせる瞬間がたまらなく嬉しかった。


 もちろん、友人と遊べる時間を持てることが嬉しい気持ちもあった。


 でも、私にとってその時間は好きな人を独り占めできる時間でもあったから、そのことが何よりも嬉しかったのだ。


 ――同性を好きになることが異常だと思われることが多いのは知っていた。


 だから、この気持ちを彼女に伝えるつもりはなかった。


 拒絶されて、今ある関係を失うことは私には耐えられないからだった。


 ……それに、どうせ学校を卒業したりすれば無くなってしまう関係なのだから。


 せめて、あと何回あるかわからない機会を楽しむくらいは許して欲しかった。


 ――二人きりで居られる時間は砂糖菓子のように甘いものだった。


 あまりにも楽しくて、いつか二人で同じドレスを着たいなぁなんて考えたりすることもあったけれど、そんな未来が来ることは無いとわかっていたから、想像するとほんの少しだけ胸の奥が重くなった。


 だけど、それすらも今は楽しむことにしていた。


 ……私はきっとおかしいのだろう。


 いずれ、この時間が終わってしまった後に、この気持ちも含めて私自身がどうなるかはわからないけれど、それはその時になって考えればいいことだったから。


「どうしたの?」


 目の前の彼女が心配そうにこちらの顔を覗き込んできた。


 どうやら、考えていたことの一部が顔に表れてしまっていたらしい。


「何でもないよ。今日の宿題、苦手なところだったからちゃんとできるか不安になっちゃっただけ」


 誤魔化すために作り笑いを浮かべながら、思っていないことを、さも本当のように彼女に伝える。


 彼女はこちらの言葉を受けて、ならいいんだけどと言ってから次の話題を口にし始めた。


 私はその話題に適当な相槌を返しながら、この時間がいつまでも続けばいいのにとそう思ったのだった。



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