第24話 王都へ④大きなお城が見えてきた!
──オレ達はそれから何事もなく夜を越し、オレの部屋の扉が開く音がした。
そして誰かがこちらに近づいてくる足音。
「お兄ちゃん! いつまで寝てるんです? もう出発しますよ?」
サエか。
なんだか前のことを思い出すな……。
「もうちょっとだけ……」
「もう、いつもいつもお兄ちゃんは……。あまりにも遅かったら置いていきますよ?」
「わかったわかった」
オレがそう言うと、サエはため息をついて部屋を出ていった。
「──しょうがないな……」
オレは体を起こし、布団から出て、部屋の扉を開いた。
すると、オレの扉の前にはサエではなく、アンリィの姿があった。
「おはよう、どうしたんだ? こんな所で」
「いや、昨日は済まなかった。話の途中だったのに逃げ出してしまって」
あぁ、そのことか。
「それはオレも悪かったよ。アンリィの裸をバッチリ見ちゃったしな」
「へっ? は、裸を? バッチリ?」
……しまった、地雷を踏んだのかもしれない。
「こ、こ、この件については忘れよう。それでいいな?」
「あ、ああ、わかったよ」
オレがそう言うと、アンリィは顔を赤らめながらどこかに歩いていった。
……あんなの忘れられる訳がないだろ。
──オレ達はその後馬車に乗って再び王都に向かった。
馬車酔いは酷く、もう王都に行きたくないとか思っていた頃だった。
「サエ、回復魔法を、オレに回復魔法をかけてくれ。この状況は最高なのだが、この吐き気が雰囲気を邪魔する!」
そう言いながら、オレはサエの膝の上で
「アンリィさんもいるのに……。我慢してください。あれはMPの消耗が激しいんですよ」
「そ、そうか……ん? 何を言ってるんだ? サエのMPが底をつくことがあるわけがないだろ」
「いえいえ、あの魔法はMPを百も消費するんですよ?」
「そうか百も…………ん? 余裕じゃね?」
サエのMPカンストしてたじゃないか。
「百ですよ!」
「百だよ?」
「…………一回だけですよ?」
「あぁ、頼む」
「──『マジック、ヒールリング』ッッ!」
いやぁ回復する……。
本当にサエはオレの救いだよ……。
「──ありがとな、いつも」
「どうしたんですか改まって……?」
「いや、サエにはいつもいつも感謝してるよって話だよ」
そう言うとサエは目を泳がせながら、下を向いて。
「そうですか、喜んでもらえて何よりです。……私の方こそ、いつも感謝してますよ」
「そ、そうかそれは良かった」
……何この雰囲気めっちゃいい。
オレ、今なら死んでいいかも……。
膝枕をされたままのオレはそんなことを思う。
──オレは徐々に意識が薄れてきて、そのまま目を閉じた。
──目を開けて周りを見渡すと、黒い世界。白い柱が十二本立っているだけの謎の建物(?)の中。
いや、いつもの場所だ……。
オレの目の前にはいつもの女神コスプーレが堂々と立っていた。
「──いや、まさか本当に死ぬなんて聞いてませんよ……」
「お前は安らかに眠りに着いたんだ。もう、いいんじゃないの? なんなら別の転生者にこの世界を任せてみるのも悪くわないのよ」
「いえ、それだけは嫌です! オレの妹をおいて死ぬわけにはいきません!」
「死んでるじゃない?」
そう言われると何も言えない……。
「正直あなた、無能すぎるのよね。前に送ったセントやタイタイの方がよっぽどこの世界に名を上げてるわ」
「セント!? セントってあのセントか?」
「ええそうよ、あなたが何度も遭遇していたあのセントよ」
セントって、転生者だったのか……。
「スキル、非常用の水が使えるのがその証よ」
この世界に召喚されたあの日、スライムに襲われてたオレを助けてくれた時に、あの水使ってたな……。
てかあの時、セントはアクアショットと言ってジョウロから流れるような水を出していた。
あれってオレを馬鹿にしてたってことか?
てことはオレが転生者ってセントにはバレてたってことか?
……やられた、いつか仕返しにでも行ってやろう。
「あと一ヶ月で魔王の幹部を一人でも倒しなさい。さもなければ、一ヶ月後にはあなたを昇天させるわ」
え!?
「ではもう一度だけ、あの世界に送ってあげるわ…………ん?」
オレをもう一度あの世界に送ろうとした瞬間、この何も無い世界に、いや、オレの頭の上に魔法陣が現れる。
『お兄ちゃん、今助けますから!』
「何事? なぜあなたの妹の声が?」
「そ、そんなの知るか!」
「『マジック、リバイブマイブラザー』」
その声と共に、暴風でも吹いたかのように女神コスプーレが吹き飛ばされる。
次の瞬間、オレはこの空間から離脱した。
「……なんなのよあれ、私の出番を返してよ! 女神を敬いなさい!」
──オレが目を覚ますとサエが膝枕をしてこちらを見ていた。
「馬鹿なんじゃないんですか! なんで死ぬんですか!」
涙を流しながらサエはこちらを見ていた。
「すまない、サエの膝枕の心地良さに、なんか死んでたみたいだ」
オレがそう言うと、サエはクスリと笑い。
「もう、お兄ちゃんったら。本当にどうしようもない人ですね?」
と、涙を拭き取り、笑顔を浮かべて言ってきた。
「──見えてきたぞ、あれが王都キャメロットだ」
オレとサエ、アンリィはカシラ頭の声を聞いて外を見ると、そこには巨大な城門、それよりもでかい王城のようなものが見えてきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます