第23話 王都へ③混浴温泉は最高なんかじゃない!

 ──オレ達は王都に向かう途中の中間地点の休憩所に来ていた。


 あたりはすっかり暗くなり、当初の予定通り、オレ達は休憩所に泊まる予定となった。


 休憩所は高い石垣で囲われており、その入口には門番が二人いる。

 門番は前に会ったケルベルトとかいう、リッカを迎えに来た、人を見下し態度の悪いやつと同じような鎧を着ていた。

 おそらく、王都からの命令でここに来て、交代でここの門番をやっているのだろう。


 「──休憩所に入るには、身分証が必要となりますが、見せてもらってもいいですか?」


 身分証というのはステータスボードのことだろうか。

 オレは門番の言う通りにして、ステータスボードを取り出そうとしたが……。


 「──そんなのあるわけないだろう?」


 カシラ頭が前に出て、そんなことを言い放つ。


 「あ、あの、でしたら休憩所に入ることは出来ませんので、どうかお引き取り下さい」


 ならここで死んでもらいます、とかいう反応でもされるのかと思っていたが、至って普通の対応だ。

 ケルベルトとかいうやつがよっぽど変なやつだったのだろう。

 王都にはあんなやつしかいないのかと内心思っていたところがあった。

 だがこの兵士は至って普通の門番をしているので王都は普通の国なのだと少し安心した。


 だがカシラ頭はステータスボードを持っていないってどういうことだ? 普通は肌身離さず持っているものじゃないのか?


 「──あ? 俺達、どうしてもこの休憩所に入りたいんだけど」

 「ですから、身分証を見せて貰えないと、入ることは……え? なっ、なんですかあなた達は──ッッ────!」


 世紀末戦士こわ、まさか門番二人を気絶させるとか……。

 そのままカシラ頭に続いて他の世紀末戦士達も休憩所に入っていく。

 仕方なくオレ達もその後をついて行く。


 「お兄ちゃん、私、今とてもいけないことをしている気分なのですが……この気持ちは私だけでしょうか……」

 「大丈夫だ、オレも同じ気持ちだから」

 「さすがにやりすぎよね……」


 今のはオレもサエもアンリィもドン引きだ。

 やっぱりこの人達に刃向かうのはやめようと結束した瞬間だった。

 

 休憩所の中に入り、でかい建物の中にゾロゾロと入ると、受付娘が明らかに戸惑いながら、オレ達の顔を見て。


 「──なっ、何部屋にしますか?」

 「四十で」

 「はい、かしこまりました。では四十部屋で……四十? 四十部屋も!? 間違いないですか?」


 まぁ、当然の対応だ。

 だがオレの後ろにいる世紀末戦士達の数で察して欲しいものだ。


 「ああ、はい、四十部屋で間違いないです」

 「あ、ああの、えーと。はい。かしこまりました。ではそのように手配します」

 

 ──オレ達は個人で部屋を使うことにして、そのまま部屋に別れた。


 ──オレは自分の部屋に入り、早速ベッドに横たわる。


 硬いなこのベッド……。

 こうやってどこかに出かけてどこかに泊まると、なんだか修学旅行とかを思い出す。

 こうやって部屋に入ったら直ぐにベッドの硬さとかを確認したり、見回りの先生が来たら寝たふりしたりとかしてたっけ。


 硬いなこのベッド……。

 オレはふすまにしまってあった毛布を取り出して、床に敷いた。

 まぁ、これでいいか。


 この部屋に来る前に廊下に貼ってあった案内図を見たが、どうやらこの休憩所には温泉があるらしい。

 実はこの世界に来てからオレはシャワールームで少し体を流す程度のことしかできなかったからか、早く温泉に入りたい。

 

 ──オレは部屋を出て直ぐに温泉に向かった。

 

◆□◆□◆□◆□◆□◆□◆□◆□◆□◆□


 ──いや、聞いてないですよ神様。


 まさか混浴なんて……。

 だがさすがにこれは喜べない。ていうかもはや修羅場だ。

 だって今、オレの目の前にいるのは……。


 「──お兄さん、お兄さん、ちょっとこっちおいで」


 ……。


 「あんたいい男だねぇ。私の婿むこにしてあげるよ、あはははは」


 ……いや、笑えねぇよ。


 「あんた、どこから来たんだい? 職業はなんだい?」


 「ニートです……」


 しまった、声にでてた。


 「あはははは、面白い冗談だねぇ。ニートなんて職業あるわけないじゃないか」

 「あはははは、ですよねぇ……」


 ……何この空気、どうしよう。誰か助けて。


 「気に入った! この子は私が婿にとるよ」

 「あんたその歳で何言ってるのよ」

 「……あら、そうだった」

 「「「あはははは」」」


 ……帰ろう。


 オレは外に出て、風呂の扉を閉めた。


 ──すると、脱衣場にはサエとアンリィの姿が……。


 サエ、成長したな……。

 アンリィはやっぱり見た目通り……。

 じぁない。


 サエとアンリィは手で自分の胸を隠すようにして、近くにあった色々なものを投げつけた。


 「お、お、お、お兄ちゃんの変態! エッチ!」

 「変態! 変態! 変態!」

 「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい!」


 オレは脱いであった服を脱衣場に置いたまま、そのままの格好で自分の部屋に駆け込んだ。

 

◆□◆□◆□◆□◆□◆□◆□◆□◆□◆□


 「──お兄ちゃん、取り敢えず服を渡しますので、着替えてきてください」

 「……あっ、はい、わかりました」


 サエは脱衣場から持ってきてくれた服をオレに渡すと、アンリィと共にオレの部屋から出ていった。



 「──もういいぞ」


 オレがそう言うと、ドアが開き、サエとアンリィがオレの部屋に入ってきた。


 すると、サエとアンリィは無言でその場に立ちつくす。

 オレは不思議に思って首を傾げて、サエの顔を見つめる。


 「…………どうしたんだ?」

 「じ、自覚がないんですか! 履いてください! 着てください!」


 そう、オレは今パンツを履いただけの状態でベッドに腰掛けていた。


 「別にいいだろう? 兄妹なんだし、男の裸なんて水泳の授業の時には普通に──」

 「それとこれとでは話が違います! いいから服を着てください!」


 「あの、水泳の授業とは……まっまさか男のは、は、裸なんかを拝む授業なのか!?」

 「そんなもののわけがあるか! オレの国には皆で集まって泳ぐ練習をするんだよ!」

 「そ、そういう事か、なんだ……」


 てか今アンリィ、男の裸と言うのを躊躇ためらわなかったか?


 「なんだ? 男の裸に興味でもあったのか?」

 「そんなわけがあるか! 男の、男のは、はだかなんて……そんな──」


 アンリィが顔を顔を赤らめて、恥ずかしそうにしながら声を小さくしてボソボソと言う。

 オレの中での印象はビッチだったのだが、まさか……。


 「もしかしてアンリィって処──」

 「──何が悪い!」


 オレの今から言う言葉を察したのか、即答してオレの部屋を飛び出していった。


 ……そうなんだ。

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