一国の王女様に救いの手を!
第17話 初めての魔法習得!
──オーク討伐戦を経て、アンリィがトイレトイレとうるさいこと以外に何事もなくスタットに帰り、冒険者ギルドに立ち寄った。
アンリィは町に着いた瞬間どこかに走っていってしまい、カレンいや、アンリィとは別れてしまった。
なんだか無意識にカレンと呼んでしまいそうだ。
いや、オレはどちらの名前で読んだ方がいいのだろう。
……あとで聞いておこう。
「──どうです? あのオークを、このオレ達が倒したんですよ?」
いつも変態だのといって馬鹿にしてくる受付娘にからかい気味に話しかける。
「確かにこれはオークの角ですね……」
「いやぁ、オレがオーク五頭を一掃した瞬間を見て欲しかったなぁ……」
「一頭は私が射抜いたのよ!」
「あれ、そうだったっけぇ? でも大半はオレが一掃したから今日の手柄はオレが八割貰おうかな?」
そんなことを口走るオレをサエとリッカは酷い目で見つめる。
確かにエルフの国宝を使っていたのは事実だが。
「……なんだか少しだけかっこよく見えたのは私の勘違いだったようね」
と何を言ったのかわからないくらいの小声でリッカは言った。
「今なんて言ったの?」
「なんにもよ!」
なんだ? あの時のオレの行動は結構好評だったらしい。これはもしかして異世界でラブコメ主人公とかになれるのではないだろうか?
「──こ、これが今回の報酬金額となります……」
そう言ってなかなか重たそうな袋を取り出した。
「これからはオレをただの変態呼ばわりはさせ……おいっ! 手をどけろ!」
受付娘はこの重たそうな袋をギュッと握りしめて話そうとしない。
受付娘はオレを見つめてニコリと笑っている。
「──たっ、頼むから、手をどけてくれ!」
──オレ達は魔法の使い方を教えて貰うために、草原に来ていた。
冒険者ギルドにアンリィが来たらオレ達は魔法の練習をしてくると伝えてくれるように言っておいた。
冒険者ギルドではお金をしっかりと貰っておいた。
クエスト報酬が金貨一枚と書いてあったのだが、袋には銅貨が千枚入っていた。
通りで重たそうな訳だ。
この町に金貨はないのだろうか。それとも受付娘なりの仕返しなのだろうか。
その後受付娘はそういえばと言って謎のカードをオレとサエにくれた。何に使うのかはさっぱりだが、一様貰っておいた。
「──ヒラガとサエ。まずはステータスを開いてみるんだ」
メタルスライムのベムが魔法の使い方について説明し始めた。
「ステータス? ってどうやって開くんですか?」
「おいおい、嘘だろ? 親に教えて貰えなかったのか?」
「えぇ、すみません」
本当に申し訳なさそうな顔をしていたサエに対してベムが息を吐き、説明し始めた。
「ステータスボードを開いてみるんだ。すると自分のステータスとか魔法だとかスキルが出てくるだろ? それで魔法を選択して今まで入手してきた経験値をつぎ込むんだ」
「ステータスボードってこれか? えっと……開いた!」
職業 ニート
レベル 10
ステータス
MP 10
攻撃力 10
防御力 10
魔法攻撃力 10
魔法防御力 10
魔法 なし
スキル 非常用の水
経験値 2000
な、なんだこれ。
転生した勇者とは思えないステータスなんだけど。レベルがステータスに比例してるんだけど。
これから魔王を倒すんだよな……?
転生者補正とかないの?
こんなので魔王倒すの無理でしょ。
てか、職業ニートってなんだよ! もうそれ職業じゃないだろ。
「サエのステータスはどうだった?」
「私はえーと、はい!」
サエはステータスボード見せてくれる。
職業 妹
レベル 5
ステータス
MP 99999
攻撃力 5
防御力 5
魔法攻撃力 5
魔法防御力 5
魔法 なし
スキル 非常用の水
経験値 200
「サエもレベルにステータスが比例して……ない。MPのとこバグってないか?」
「私もよくわかりませんが、やっぱりそうなんでしょうか……」
「これはすごい、才能だな」
ほぼカンストしている妹のMPに驚きを隠せない。
いやそれ以上に職業『妹』にも驚きを隠せないのだが……。
ベムが才能だとか言っているがそんなわけがない。
これは神の手違いだ……。
チートはないとか言っていたが本当はあるんじゃないか。
どんな世界でも、世界はオレに対して理不尽にできているのではないだろうか?
「──まぁ早速経験値を振ってみてくれよ」
そう言われてオレは魔法をおして、魔法一覧を眺める。
なんだか本当にゲームの世界みたいだな。
水魔法とか風魔法とか色々とある。
オレの一番使いたい魔法は炎魔法。
だがその炎魔法は魔法一覧にはなかった。
そこでリッカが以前にとてつもない炎魔法を使っていたのを思い出す。
「おい、リッカ。以前に盛大にかました炎魔法は一体どこで覚えたんだ?」
そう聞くと、今まで大人しく丸岩でくつろいでいたリッカがいきなり慌てだし、オレのステータスボードを取り上げいじりだす。
「し、知らないわよ。そんなのここら辺にあるでしょう? ……あれ?」
「──そういえばこの国の王女様が炎魔法はとても危険だから二十年前に禁止になったはずじゃ……」
ベムの言葉にリッカはさらに驚き慌て出し、オレのステータスボードをパチポチといじりだす。
「し、し、し、知らないわよそんなの! 本当に知らないんだからね!」
なんだか胡散臭く聞こえてくるのはオレだけか?
「それより早くオレのステータスボードを返してくれよ」
「あっ……。──こ、こ、これは私がやったんじゃないからね! あなた達が変なこと言い出すから悪いんだからね!」
変な間があいた後、リッカはオレの顔を見ないで目を逸らしながらステータスボードを返した。
なんだと思い、オレはステータスボードを確認してみる。
魔法 フラッシュ
経験値 0
「おい、何だこの魔法は! てか経験値がなくなってるぞ!」
オレがそう言うと、ベムがオレのステータスボードを覗き込む。
「おい、ヒラガ! 誰もが習得したがらないその魔法を選んだのか!?」
「誰もが習得したがらない?」
「その莫大な使用経験値2000で全てのMPを消費して、ただできることは…………」
謎の間を開けるベムに対して、オレは喉をゴクリと鳴らす。
「……二秒間の目くらましだ」
「おい、リッカ何やらかしてくれてんの?」
仲間のことを散々ダメなやつだとか思ってきたが、こうしてオレ自身も残念なやつの仲間入りとなってしまった。
そんなやり取りを見ていたのか、一人の重装備のどこかの国の兵士のような勇ましき男が近寄ってきた。
「──お嬢さま? お嬢さまじゃあないですか?」
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