第15話 大ピンチ、オーク討伐戦!

 ──町をでてすぐ近くのとある森にて。


 「オレのパーティメンバー達よ! これから荷物検査を開始する! まずはリッカ、以前、弓使いなのに肝心の矢を買い忘れていたリッカ。今日は流石に矢の準備はできているな?」


 目的地に向かいながらオレ達は荷物検査を開始した。

 こんな荷物検査は普通はしなくてもいいことだが、オレ達のこのパーティでは必要なのだ。

 そしてオレはリッカを指さす。


 「え、ええ、私をなんだと思っているのよ。そんなの当たり前よ。それにいざとなったら私には炎魔法があるんだから!」

 「前はその当たり前のことをやっていなかったんじゃないか。あと、炎魔法はやめてくれ。命が持たない」


 あの時は回復魔法を使える人がたまたまいたから助かったと言ってもいいだろう。

 その人がいなかったら、完全に気絶していたオレはもうすぐあの世に旅立つところだったのかもしれない。

 感謝感謝。


 「次はサエ、杖は持っているな?」


 そう言ってオレはサエを指さす。


 「はい、一様には。でも私、魔法の使い方なんて知らないんですよね……」

 「おいおい、魔法の使い方を知らないだと? まったく、俺が後で教えてやるよ」


 ……サエは戦えんらしいな、しょうがない。

 それにしてもこのスライム、今までとてつもなく大人くて空気でしかなかったのに、急に喋りだしたな。

 もしかして本当に人見知りなのだろうか。


 「えっ!? こ、このスライム、今喋ったわよ!」

 「おいおい、スライムだって話はするさ。それとオレは“メタル”スライムなんだからな」


 ……話すスライムなんてベムくらいだろうと思う。


 「そ、そうなのね。スライムって実は喋るのね」


 納得しちゃうの? え、なぜメモをとる? カレンは本当に大魔道士で大剣豪なのだろうか。

 持ってきている大剣を地面に置いて、ポケットからメモ帳を取り出したカレンにそんなことを思う。


 「あ、そういえばオレまだ剣持ってないからこの先はみんなで行ってきてくれ」

 「お兄ちゃん!? わ、私も人のことは言えませんが、それは最初から戦う気がなかったと言っているようなものですよ!」

 「流石はオレの妹、察しがいいな。実はその通りだ」

 「こいつ今認めたわよ! やっぱりヒラガはただのヘタレね」

 「こいつ呼ばわりするなよ! オレの方が歳上なんだぞ!」


 カレンはオレ達のこんないつもの様子を見ながらクスリと笑い。


 「やっぱりこのパーティはにぎやかね。あっ、それと剣なら私の予備の剣が──」

 「──おい待った、それ以上は言わないでくれ みなまで言うなみなまで。あとはみんなに任せると──」

 「──ほらやっぱりヘタレね。剣があるなら戦えるわよね?」


 リッカに正論を言われて何も言えなくなったオレは黙り込む。

 何とかしてオレが戦わない方法はないだろうか。


 「あっ、ちょっとその予備の剣とやらを見せてくれ」

 オレがそう言うとカレンがすぐさま足の短刀ケースから短刀を取り出した。


 「──どうぞ」

 「どれどれ……」


 どうにかして剣を批判して戦わない方向に持っていきたかったが、これは見事な出来だ……。

 そこら辺にあるただの刀には思えない。


 「え、えっと……これは……そのそうだな……なにこの刀短いな」


 オレは一体何を言っているんだ。でもこれは本当に批判する言葉が出てこない。


 「それはそうでしょう。どう見ても短刀だし」

 「これは我が国に伝わる秘宝なので、大事に扱ってくれないと、呪われるよ?」

 「え!? なにそれこわい。なんてもの渡してるの? てか本当にいいの? 秘宝なんでしょ?」

 「ええ、いいわよ。だってこれからは仲間なんだし。あと、ものには心があるかもだから、変な悪口言うと呪われるわよ?」


 「ものに心があるわけないだろう? まったく……」


 刀が短いとか言ってごめんなさい。

 刀が短いとか言ってごめんなさい。

 刀が短いとか言ってごめんなさい。

……てか短剣なんだし普通のことか。

あっ、今のが少しでも気に触ったのならごめんなさい。


 よし、これで呪われないだろう……。

 


 ──とある森を超えた先にある平原にて。


 「──そろそろ見えてくるはずだ」


 オレ達がクエストで向かっていたのはオーク達の住処すみか

 クエスト達成条件はオーク五頭の討伐。

 この討伐量はかなり初心者向けのクエストらしい。

 カレンは初心者向けのこのクエストをおすすめしてくれていたのかな。

 そんなことを思いながらオレは突然足を止める。そしてオレは喉をゴクリと鳴らし、その場を眺める。


 「──あれが、オーク……」


 目の前にはオレ達人間とあまり背丈が変わらず、とても頑丈そうなオークの姿が一頭。

 オークは首に角笛を背負っているようだ。

 それを瞬時に見抜いたオレはリッカにあの角笛を弓で射てくれと頼む。


 「任せなさい! これが長年鍛えてきた弓の実力よ。絶対にいてみせるわ」


 フラグになっている気もするが、ここはリッカに頼むしかない。

 オレはオークから一歩引いて逃げる準備万端な状態で見守る。

 そのあとリッカは真剣な表情になり、投射した。

 

 ──リッカの放った矢は見事に角笛を射た。


 リッカが射た角笛は一瞬で砕け散った。


 「や、やるじゃないかリッカ!」

 「……当然のことよ」


 オレはリッカが活躍したことに驚きリッカを褒める。

 自分でも本当に当たるとは思っていなかったのかリッカも少しだけ驚き嬉しそうにしている。


 「凄いです! リッカさん。それによく角笛を持っているなんて分かりましたね」

 「よくもやったな……誰だ……」


 サエも両手を握り、目を輝かせてリッカとオレを褒めた。


 「敵の観察はゲーマーの基本だからな」

 「げーまー?」

 「カレン、気にしないでくれ。オレの国の遊びみたいなものだから」


 まぁ、オレにとってはただの遊びではなかったがな……。


 「ヒラガさんの国にはそんな遊びが……。今度でいいので是非ヒラガさんの国のことを聞かせてね」

 「まぁ、時間があったら少しは話してやるよ」

 「──おい、お前ら何やってるんだよ! 俺と戦えよ!」


 オレ達はリッカの弓の実力に驚き、長々と話していてすっかり忘れていたが、オーク倒してなかったな。

 てか、オークって喋れるのかよ。


 「俺の宝なんだよあの角笛! どうしてくれるの? ねぇどうしてくれるの? オレの宝物を破壊した上に、散々俺を無視した罰は大きいぞ! 喰らえ雑魚どもが俺の棍棒のいりょくをおも──」

 「──エイ!」


 オークの長話の途中でリッカの放った矢がオークの頭を貫いた。

 言いたいこと言えずに退場ってなんだか可哀想だな……。


 「てか、なんだかとても臭くないか……」

 「それはオークを倒した時に出す特有の臭いだな。他のオークはその匂いに反応して直ぐにここに──」

 「お兄ちゃん! 囲まれています!」

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