第8話 かしらかしらかしら?
──オレは今、人生の修羅場でございます……。
「喋るスライムを渡そうとしただけ? もっとましな言い訳を作れよな」
「嘘じゃないんですよ! オレさっきまで手で持ってましたから」
くそ、いつからあのメタルスライムいないんだよ。絶対許さないもう換金してやる。
「カレンさんだ! カレンさんが帰ってきたぞー!」
そんなことを考えている時、世紀末の男達が突然騒ぎだす。そしてオレの前に緑髪のロングヘアを後ろで縛っているポニーテールの美少女が現れる。
少女はでかい帽子をかぶっていて、マフラーをしていてよく顔が見えないが、それでもかなり可愛い。
「かしらかしらかしら?」
ん? 今なんて? 日本語か? というか今さらながら考えてみると、オレはこの町の言葉がわかる。というか話しているのが日本語だ。やはりこういうのは女神がなんとかしているのだろうか。そういうものか。
だけどオレはこの少女が今なんて言ったのか分からなかった。
「それがな、こいつ受付の嬢ちゃんに変態なことをしていたんだよ」
「誤解だ! ……誤解です」
少女はオレの顔を見た後目を擦り、もう一度オレの顔をガン見する。そして驚き顔を隠す。
「……えっと、どこかであいましたっけ?」
「い、いいえ……しょ、初対面になるわね。私は……カレンというの。よろしくね」
「そうですかよろしくお願いします」
カレンという少女はかなり早口で話した。
彼女は初対面だと言うのにかなり動揺しているように見える。
「カレンさん、なんで自己紹介なんてしてるんですか。早くやっちゃいましょうよ」
なんでそんな
「いいえ、この人は冒険者に成りたてで、あまりお金の方は持っていないでしょうからそこら辺に置いてきなさい」
「ですが……」
冒険者に成り立てというのをなぜ知っているのかはわからないが、この人はオレを救ってくれるようだ。
世紀末の男は不満を言いたげな顔をしながら少女に敬語を使う。
「おわかり?」
「は、はい!」
世紀末の男は声を高くして返事をする。やはり世紀末達のリーダーはこの少女なのだろうか。体格のいい世紀末の男が震えているくらいだ。おそらく相当強いのだろう。
「よかったな。カレンさんに感謝しろよ!」
そう言って男達はオレの拘束を解いて不満げに歩いていった。
「一体なんだったんだよ。もうやめてくれ! 次来たら全員ぶっ飛ばしてやるからな!」
「あ?」
オレがそう漏らした瞬間だった。不覚だった。オレの後ろにまだ世紀末の男が一人居た。
「ていうドラマの撮影を……」
「何言ってるんだてめぇ?」
「ひぃっ! ごめんなさい!」
オレは再び拘束されて連れていかれた。
「──なんでこうなるんだ……」
ネットで天才ゲーマーとまで言われたオレが、なんでこんなことに……。
どこの誰がこれを見てもダラダラプレイ全開だと言うだろう。
「おい、あんちゃんこっちきな」
もういいから、世紀末なイベントはもういいから帰らせてぇ!
「あんちゃんは盗みをやった事はあるかい?」
「…………は?」
「今からな、とある貴族の家に盗みに入るんだよ。だからお前もこい、というか強制だ」
頭悪そうな世紀末の奴はオレに拷問でもするのかと思っていた。だがなぜだかわからないがオレに盗みをやらせようとしているらしい。
「なんでオレが?」
「こいって言ったらこいや!」
「はい!」
こんな理不尽があってたまるか! 世紀末滅んじまえ!
オレは断れない心を持っているわけじゃない。断れば殺されそうで怖いのだ。
──そして男は、オレを盗みの現場に連れてきた。
今時間帯は太陽が最も高く昇っているようにも見える時間帯だ。そう、今は盗みをするのなら最も適していない真昼間なのだ。
だが今、貴族の家は世紀末な男達に襲撃を受けている。
ある人は壁を腕力だけでよじ登っており。
「お母さん、あの人達何やってるのー?」
「すみません。警察の方ですか今、貴族の家が襲撃を受けています。はい。人数は見た感じ二十人はいます」
もう、通報されてるじゃんか。まぁ、それはそうだな。こいつら本当に馬鹿だ。
「さぁ、行くぞ!」
オレを連れてきた世紀末の男は、清々しい顔をして指を指し、今から行こうと言う。
「行くわけないだろ! 捕まりたいのか!」
「だから、早く盗みに行くんだろ!」
……。
「コラッ! またお前たちか! そろそろ懲りて大人しく働け!」
もう警官来てますけど……。まぁそれもうか……。こんなバカみたいに盗みに入るやつは目立ってしょうがない。
「まずい、お前ら、警察がきたぞー!」
「またか、なんでこんなに早く見つかるんだ!」
「かしらかしらが捕まった!」
「かしらかしら! ……俺たちはもう終わりだ」
まぁ、こうなるわな。
「おい、あんちゃん早く逃げるぞ!」
オレを連れてきた世紀末の男が慌てて言う。
だがオレに盗みをやらせようとしたことを後悔させてやるよ。
「こういうのは堂々としていたらいいのさ」
「あぁ、それもそうかもしれん」
世紀末の男はオレの提案に乗り、堂々と警察の横を通り過ぎようとする。
「君、止まりなさい! 君も仲間なんだろ?」
そう言われたのは、オレではなく世紀末の男だけだ。それもそのはずこのバカは他の奴らと同じ格好をしているんだから。
「あんちゃん、おい、待ってくれよ。オレ達仲間だろ!」
世紀末の男は突然そんなことを言って騒ぎだす。それを聞いた警察はオレを捕まえる。
「君も仲間なのかい? まぁいい話は後で聞こう」
「えっ、待ってくれ。オレはあいつが誰かもわからんし、ただオレはこいつらに捕まってただけなんだよ!」
「そうか、それは悪かったな。最近こいつらに捕まって金を根こそぎ盗られる人が多いんだよ。君も気をつけなよ?」
思っていたより話が通じるんだな。さすが警察。てかこの世界にも警察はいるものなんだな。
オレはあっさりと解放されてギルドに帰った。世紀末の男の悔しがる顔が今でも忘れられない。
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