第6話 オレの仲間はとてつもなく無能だった!
──始まるはずだった……。
ネットでは天才ゲーマーとまで言われていたオレが、なぜこんなことになるとだろう。
時は
──夜が明けると、オレ達は冒険者ギルドで、借金返済のためにクエストを探している。
「──あなた、何も分かってないのね」
呆(あき)れたようにリッカがそんなことを言う。
「いい? スライムってのは服を溶かすの! 女子の天敵なのよ! なぜ私がそんなことをしなければいけないのよ!」
「そうだぞサエ! スライムは天敵だ!」
クエストボードの前でオレ達はサエが提案したスライム討伐を全力で反対する。
「ヒラガ、あなたは別にいいでしょう……」
「なんでだ! なぜオレは差別された? 男だからか! そんな不平等なのオレは認めないね」
「な、なによそれ! 私達が服を溶かされてもいいって訳? って、何ニヤついてんのよ! キモ!」
「に、ニヤついてなんかないさ! 心外だな!」
正直言って、まぁ悪くない……。
だが先程買ったサエのローブ姿はめっちゃ可愛いし、溶かされるとなると最悪だ!
サエがそのせいで他の男に目をつけられるってのも困るな。
「でも、今クエストはスライム討伐しかないんですよ?」
そう、今の時期はスライムが大量発生していて、クエストがスライム討伐しかないのだ。
毎年はこの時期になると討伐隊がスライム駆除をするらしいのだが、今年は何故かスライム駆除がされていないらしい。
「二人とも、明後日のご飯が食べれなくなってもいいんですか?」
「うっ……」
そう言われるとオレ達は何も言えない。
オレ達が今まで働いてきたお金は、ほとんど装備品に使ってしまったので、明日の飯代くらいしか残っていない。
「わかったわ。それでいいからはやくいきましょ?」
「てかなんでリッカも一緒に来ることになってるんだ?」
オレは当然のようにその場にいるリッカに、少し
「そんなの私の勝手じゃない! 言っとくけど私はあなたの仲間になったわけじゃないからね!」
「な、なんだそれ!」
……正直に仲間にして欲しいと言えないのだろうか。
──オレたちはスライム討伐のため、街の外に出た。
今回のスライムの種類はメタルスライム。ゲームで出てくるあのメタルスライムだ。
出現率は非常に低く頑丈だが、倒すと大量に経験値が手に入る。
ちなみにオレ達三人のレベルは全員ゼロ。まだ魔物を討伐したことがないからだ。
レベルも上がるしクエストも達成できるという、効率的なやり方にオレは賛成したのだ。
「本当に見当たらないですね……」
「そうだなぁ。そういえばまだ魔物一体もみてないなぁ」
街を出てからオレ達は一時間ほど歩いている。
武器を試してみたかったのだが、途中別のスライムに出くわしたりはしなかった。こういう時に限って魔物が出てこない。
「もう私、クタクタよ……」
もうちょっと頑張ってくれよメイド。
そう、リッカは未だにメイド姿なのだ。
町の中では変に目立ってしまい、オレはなんだか一緒に居ずらかった。そんなメイドは今、オレ達よりも疲れている。日頃の労働とはまた違うのだろう。
「こういう時、簡単に出てきてくれないものかしら……」
「まぁ、俺達にも事情があるんだよ。毎日毎日命を狙われて……」
「へぇ、あんたもいろいろと苦労してるんだな」
……。
「おい、待った。お前誰だ!」
「ん? 俺か? 俺は
「なんでスライムが喋ってんだ!」
そこにはリッカの横でくつろぎ喋る、灰色のメタルなスライムの姿が。
オレはそうそうに剣を取り出す。
「ま、待ってくれ。俺は悪いスライムじゃないよ!」
と、某ゲームのセリフを……。
「そんなの信じるかああぁ!」
オレはメタルスライムに剣を振る。
バキッ!
「……えっ?」
だがオレの振った剣は、木が割れるような音を立てて壊れた。そしてオレは剣を確認する。
「ん?」
……これ、どう見ても木の剣だ。
オレは店長オススメの鉄の剣のように偽造された木の剣を買ったらしい。
「……って、驚かせるなよ! それ木の剣じゃねえか!」
「オレも今驚いてるよ! なんだよこれ!」
オレは壊れた木の剣を投げ捨てた。
ふざけんなよあの武具屋! 後でしばいてやる。
「まさか、騙されて買ったのかなー? ははっ。どんだけ間抜けなんだよ。まさか店にはオモチャを買わされたのか?」
オレはメタルスライムの方へ怒りの顔を見せる。
「──おい、お前ら何やってる! 今すぐあのメタルスライムをぶっ倒せ!」
「で、でもこのスライムさん、可愛いですし……」
「そ、そうだよ。すごく可愛いスライムだからなあ……」
突然何を言い出すんだこの女子達は。
おい、まさか……。
「おお、この子達は俺の魅力に気づいたみたいだぜ? どうするんだ?」
いや、違う……。
「おい、サエ。さっきから杖を持ってないが、杖はどこにあるんだ?」
オレがそう言うとサエは途端に視線を逸らす。
「それにリッカ。弓は持ってきているようだが、
「そ、それは……」
リッカもまた、オレから視線を逸らした。
オレは重要なことを見落としていた。
オレはバイト中、こいつらの尻拭いを何回したことなのだろう。
こいつらはろくにバイトもこなせない無能なのだ。
──これは本当に先が思いやられた瞬間だった。
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