第5話 異世界メイド登場!

 「──いや、まさかこの町にメイド喫茶きつさがあるんだなんて……」

 「ええ、この世界では『少し前に伝えられた遠くの国の文化』らしいですよ」


 ほぅ、てことはオレ以外にも転生者が居るのかもしれないな。少し前ってのがどれくらい前なのかによるが。

 オレは店のバイトとして、皿洗いなどの雑用を。サエは表に出て接客をすることになった。


 「それよりもあの、少し恥ずかしいのですが、どう……でしょうか?」


 サエは頬をポっと朱色に染め照れながらも、オレにメイド服姿の格好を見せる。


 「ま、まぁ似合ってるんじゃないか?」

 「気を使っていませんか?」

 「いや、最高だ! 目の保養ほようになる」

 「そ、そこまで言われるとなんだか照れますね……」 


 サエはそう言いながら頭をいて、視線をらす。


 「堂々としてればいいさ。サエなら大丈夫だ」

 「ありがとうございます。それでは私はもう仕事ですので」

 「あぁ、頑張れよ!」


 サエはニコッと笑って店の表に出て行った。

 一時はどうなることかと思ったよ。

 あの後サエはなんとか許してくれたけど……。しかもここの店長のおじさんは、最初とても怪しい人に見えたし。

いや、今も怪しい人か……。

よくよく考えてみるとオレはなぜあの男について行ったのだろう……。まぁ結果良ければ全てよしだ。宿も借りてる事だしな。

 借金はともかく武器等はここで働き金を貰えば手に入りそうだ。そしたら仲間なんかも募集して……。

 オレは今後の予定を考え期待に胸を膨らませる。

 

 「──たしかあなたは雑用のはずよね?」


 おっといけない。すっかり時間を忘れていた。

声を掛けてきたのは昨日サエと一緒に着替えてた……。


 「あの、君は……」

 「君は君って言わないでよね! これでも私は十五なんだからね!」


 昨日も見たが、この青髪少女は本当に小さい。うん非常に小さい……。そして赤く輝いた瞳がかなり可愛い……。てかオレは十七なんですが……。


 「私はリッカよ。これからはバイト仲間になるんだし、よろしくね」

 「オレは鈴木平賀すずきひらがだ。よろしくな」


 軽い自己紹介をした後、リッカはオレの顔をじーっと見つめる。


 「な、なんだよ。オレの顔に何か着いてるのか?」

 「いいや、あなた達本当に兄妹なのかなって、ほら顔とか性格とか……」


 「性格って、オレはリッカと一度だけだよな?」

 「の間違いでしょう? ほらさっきだって私のどこを見てたのよ?」


 ……気づいてたのか。でもないものをみたって言うと怒りそうだしな……。


 「気のせいだろ、リッカは自信過剰じしんかじょうだな」

 「ほら、そういう所も似てないのよ。あの子は嘘をつかない綺麗な目をしていたわ」


 なんて鋭い子なんだ。関わるとろくなことがなさそうだ。できるだけ関わりたくわないな。



 ──そしてオレ達の労働が始まった。

 リッカが働き始めたのはつい最近のことで、仕事慣れはしておらず、サエと一緒に失敗ばかりしていた。

 その度にオレの雑用業務が増え、そのせいでオレは酷く忙しい日々を過ごした。

 


 ──こうしてオレ達の労働生活が始まり、一ヶ月が経った。


 「「「今まで本当にありがとうございました!」」」


 ここの給料はなかなかなものだった。だが店長は店をこの世界の中心部にある、王都に移すことになったらしい。

オレ達は王都までついて行くことは出来ず一時的にバイトを辞めることになった。だが一時的にだ。店長はいつでも来ていいと言っていたので金に困った時には行くつもりである。

 それにしても本当にこのメイド喫茶には世話になった。これでオレ達の装備が買えるな。


 ──そして今、オレ達は武具屋にきている。何故なぜかリッカまでもが一緒だ。


 「リッカ、お前なんでオレ達の後ろを着いてきてんの?」

 「そ、そんなの私もここに用があったからに決まっているじゃない」


 はて、本当にそうなのだろうか……。先程オレ達が道を間違えた所、リッカも一緒についてきていたのだが。


 「行く宛てもなく、オレ達についてきたんじゃないだろうな?」

 「そ、それは……。そうね、今回は認めるわ。でも私の気持ちもわかるでしょう? 本当に行く宛てもない少女が餓死したっていいわけ?」

 「またそこらで働けばいいだろう?」

「私は何故か小学生扱いされて、どこも相手してくれないのよ!」


そんな時変わった店長だけが相手してくれたのか……。


 「それはそうだろうよ。リッカは小さいんだから」

 「失礼ね!」

 「ん? ちょっと待て、小学生? この町には学校があるのか!?」

 「それはそうでしょう。学校がなかったら世の中みんな馬鹿ばかりになるわよ」


 その言葉を聞いた瞬間、隣でサエが目を輝かせる。

どうしてサエはこうも学校に行きたがるのだろう。

オレは学校という場所には、ろくな事がなかったら全くわからない。


 「あの、どんな学校があるんですか?」


 サエは現在十六歳でリッカよりも歳上だ。だがサエは幼い頃から敬語を使い慣れているため、誰に対しても敬語なのだ。

異世界の学校には何があるのか、それが気になったのだろう。オレも行く気は無いが、どんなことをしているのかは多少気になる。


 「魔法の訓練とか、授業。歴史とか数学かな」


 この世界の歴史については少し知りたいし、魔法についてはかなり知りたい。だが学校に行かなければいけないのなら、それすらも妥協しよう。


 オレ達はそんな話をしながらも自分の防具を整えた。


 リッカは冒険者になることを決意したらしいが、いつまでもメイド服のリッカ一人を覗いて、みんな最初の冒険者らしい姿だ。


 そして武器に関しては、店長のおすすめということで、オレはゲームの王道武器、鉄の剣を買う。

 サエはこれがいいと駄々を捏ねたので杖を買っておいた。

 そしてリッカは弓を買った。

 オレはゲーマーとして最初は剣とかの方がやりやすいと進めといたのだが。

 まぁいい、オレ達の成金なりきん物語はここから始まるんだ。

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