第203話 フルアーマー・碧


「みんな、強いんだね」

ジーコさんが

則之、智弘、七海を見ながら、

則之、智弘、七海を見ながら、

則之、智弘、七海を見ながら、


と言った。

悔しいので3回連呼しておこう。


則之も不意を突かれなければ、この程度のオークなら一人で倒すことが出来ただろう。

魔力が弱くなったとはいえ七海も楽勝だろう。

智弘も空から一方的に攻撃できるだろう。


「聖女さまの魔法障壁に助けられましたよ。

 あんな近距離でオークの鬼気迫る顔を拝む事になるとは・・・・

 あそこまでおぞましいオークを見るのは初めてだよ」」


ジーコさん、それ将太がいたからですよ。

将太が美味しく見えたんですよ。エロエロと美味しく。


う~~~ん、相変わらず使えない俺はただ一人蚊帳の外。

伝説の勇者・茜さまの兄以外取り得が無いという体たらく。

と一人良いとこなしな俺が落ち込んでいると



ガサガサ

ゴソゴソ


木々の陰から一匹の巨大なオークが出てきた。

オークは身の丈ほどある巨大な剣を肩に乗せのしのしと出てきた。

頭を見るとバンダナを巻いているではないか!


チッ!生意気なオークだ!!

ハルフェルナのオークはおしゃれなんかして色気づいてるのかよ!


・・・・・うん?

違う! なんだ!!

何を頭に巻いているんだ!



「あぁーーー拙者の乳バンド!!」

則之が声を上げる!


さすが破廉恥オークだ!!

どこのセクハラ・サラリーマンだよ!

そして、倒れているオークを見ると


ブモ?

ブモーーーーー


と大声を上げた。

仲間が殺され怒っている。怒っている。


俺はみんなより一歩前に出て!


「お~~~ら、かかってこいや! 破廉恥豚野郎!!

 フルアーマー・碧の強さを教えてやるぞ!!」


俺はいきり立ち中華君を力一杯オークに向かって投げた。


ガン!


という音とともに見事頭に命中。

ナイス!俺!!


オークも軽い脳震盪を起こしたのか頭を振った。

戻ってきた中華君を掴み再度オークの頭を目掛け投げつけるが、オークは屈みかわすと


ニヤリと笑った。

その顔は

「バカめ!同じ手には引っかからないぞ」と書いてあった。


オークは大剣を振りかぶり俺を真っ二つにするような勢いで斬りかかった。


ガキン!


タナニウムで出来た焼肉プレートで受けると金属同士が当たるような音が響く。


咄嗟に。いや、分かっていた。

オークが大剣を振りおろしてくることを。


則之に稽古をつけてもらっているのである程度は剣の太刀筋が分かるようになってきた。

豚、お前とは違って俺の先生は剣でも有数の腕前を持つ学生だぞ。


則之は俺に戦い方を教えてくれた。

俺は体力、HP、力だけはある。

多分、1000を超えるHPを持っている人間は歴史上、俺だけしかいないのでは無いだろうか?

則之曰く、俺は積極的に攻撃を仕掛けるのではなく装備の耐久度、HPの高さをを生かすべく相手に打たせてから隙を見つけるか崩してから攻撃した方が良いというアドバイスをしてもらった。

そう、待ちの姿勢だ。


ガン!

ガン!

ガキン!!


と次々とオークの大剣が振り下ろされる。

その程度の攻撃ではタナニウムの焼肉プレートは屁でもないよ。


ガン!

ガン!!

ガシン!


と向きになってオークが大剣を振り下ろす。


「アオ君! 危ない!! 魔法障・・・・!」

将太が叫び魔法障壁を掛けようとするが隣にいた右手を出し智弘がそれを遮った。


ヒュルヒュル

ガンッ!


ふっ!豚野郎! 人間様の知力を舐めるなよ。

力一杯投げた中華君がブーメランのように戻ってきて巨大なオークの後頭部に直撃した。

不意打ちだぜ!さっきよりも強烈に脳が揺れたろ。豚野郎!

タナニウムの焼肉プレートの取っ手を力強く掴み左腕を大きくスイングしヒットする瞬間に手首のスナップを利かせオークをぶっ叩く。


ドゴーーン!


鈍い音とともにオークが10mほどぶっ飛ぶ。

スピードやテクニックは無いが力だけはあるんだぜ!!


サックブラッドナイフを手元にイメージし呼び出す。


「往生せいや!!」


グサッ!


ナイフをオーク目掛け投げつけると綺麗に突き刺さった。

ナイフの付け根が真っ赤に染まっていく。

なおもオークは立ち上がり大剣を振りかぶり駆け寄ってくるが途中で足が縺れ前のめりになって倒れ絶命した。

サックブラッドナイフを手元にイメージし戻すと柄の部分は赤からいつもの輝く銀色に戻っていた。


ふっ!どうだい!? これがフルアーマー・碧のスーパーコンボ!


名付けて


『碧・スペシャル!!』


俺はいつもクスッと笑うアレックスさんのほうを見てドヤ顔をして見せた。


アレックスさんが

「碧さん、かっこいーー! 素敵です!!」


と手を叩いてニッコリ微笑んでくれた。


隣に将太がやってきて俺のつま先を踏みつけながら言った。


「アオ君、何、格好つけてるの!

 女神様のおかげでしょ!」」


「あ、はい」


そうなのだ!そうなのだ!!

俺が凄いのではない。

女神様がくださった武器が凄いのだ。

どれも伝説に残るような武器なのだ・・・・

正確に言おう。


『伝説に残るキッチングッズ』


なのだ。


コンボ名も


『女神様、ありがとうございます!! 今日も生き残れました!!』


に改名した方が良さそうだ。



「碧! カッコよく決まった後で申し訳ないがオークのアレの回収を頼むよ」


と智弘は軽く言った。


グハッ!!


「もういいんじゃないか? お金は充分あるしさぁ~」


「いやダメだろう! 『金は天下の回りもの』だろ! いつ文無しになるか分からないんだから

 何かのときのためだよ! 何かのときのため!!」


俺は思った。

これは罰なのだろうか?

大物をカッコよく倒しドヤ顔をした罰なのだろうか?

それとも智弘の魔法少女デビュー戦でグリフォンを横から俺が美味しく頂いたことの罰なのだろうか?

と。


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