第204話 運転中に乳繰り合ってはいけません!
すったもんだがあったがリーパスを出て3時間ほど装甲車を走らせる。
施設まで数キロほど距離はあるのだが木々の隙間から巨大な蒸留塔が見えてきた。
「大きい塔ね~
100mくらいあるのかしら?」
当たってます。当たってます。
七海さん、巨大なメロンが俺の肘に思いっきり当たってます。
助手席には窓が無く運転席側にしかないために七海が体を運転席に座る俺にあずけるようにしながら言う。
後部座席に座っている将太が
「七海さん、アオ君にくっつきすぎなんじゃないかな?」
「え? だって、助手席には窓が無いから運転席側に寄らないと見えないでしょ」
と七海が将太に反論する。
そして、後から智弘と則之のクスクスという笑い声が聞こえてくる。
「じゃ、僕も塔を見たいから前に行こうかな? ヨイショっと」
装甲車の前席は運転席と助手席の間に体を横にすれば通れるくらいの通路があり俺と七海の間に割り込んだ。
七海は助手席側に押し込まれながらクスクスという笑い声が聞こえた。
装甲車の助手席は男二人が座るのには狭いが七海と女体化してさらに小さくなった将太が座るには充分な広さだった。
「なに、七海さん、笑っているの?」
と少し将太がトゲのある言い方をする。
「いえ、別に。助手席じゃ見えないからもっと運転席に近寄ったら? こういう風に」
と七海が将太を俺の方に押す。
「あぁぁぁぁぁ、ちょっと七海さん!」
「おい。七海、押し過ぎだぞ!」
「おいおい前列3人!! 乳繰り合ってると事故るぞ!!」
と智弘が厳しい口調で言うが、その後にクスクスという声が聞こえてくる。
「あら、なんか前列は楽しそうですね~
私も前列に行きましょうか?」
アレックスさんが前に来ようとする。
「アレックスさん、無理無理、いくらスマートと言っても4人は無理だから!!」
「あら、碧さんの膝の上に乗れば問題ありませんよ!」
とアレックスさんが言った瞬間、七海と将太が凄い勢いでアレックスさんのいる後席へ振り向いた。
智弘と則之が笑いを押し殺しながらクスクスと。
最後列ではロッシさんとジーコさんの『うッぷ』と言う呻きが聞こえてくる。
「え~~~アレックスお姉ちゃん、碧お兄ちゃんの膝の上は、智子の専用席よ~~ 取っちゃダメ~~~」
と智弘がアザトいブリっ子をしながら言った。
イラッ! 殴りて~~ 智子ちゃん、いや智弘をぶん殴りて~~!!
「と、と、と、とモくン! そ、そういうのは良くないと思うよ!」
将太は声が裏返りながら反論する。
「ダメ? 智子ちゃん? アレックスお姉さんも膝の上に座りたいな~」
「クスクス、しょうがないな~~ アレックスお姉ちゃんになら譲ろうかな~」
「トモ君!!」
「水原君!!」
「怖いよ~~アレックスお姉ちゃん!」
「大丈夫よ! 二人とも嫉妬しているだけだから」
とアレックスさんが言うと将太と七海は前席で二人並んで下を向きながら大人しくなった。
「アレックス殿が一枚上手でゴザルな」
後部席から智弘と則之、アレックスさんのクスクスという笑い声が耳に入ってくる。
後席3人!! 絶対、楽しんでいるだろう!!楽しんでるだろ!
あぁ~~殴りて~~~!
則之も一緒に殴りて~~~!
アレックスさんは殴るわけに行かないから、その分を智弘に上乗せして殴りて~~!
そして、最後列に座るロッシさんとジーコさんの『うッぷ』『うッぷ』の大合唱が大きくなったところで、目的に施設の入り口が見えてきた。
施設は一辺500m、高さ5mほどの石壁で四方を覆われており軍事施設にも見える。
いや、ひょっとすると軍事施設だったのかもしれない。
施設の入り口には警備小屋があり警備兵が立っていた。
俺たち以外にも数台の馬車が出てきた。
そして数台の馬車が入り口に並んでいた。
入口の上には『アルファンブラ商会 第3倉庫』と紺色の文字に金の縁取りがされている看板があった。
『第3倉庫』と言うことは少なくとも『第1倉庫』と『第2倉庫』は確実にあるはずだ!
やっぱりアルファンブラ家は相当な財力があるのだろう。
グラッとアルファンブラ家に婿入りを考えたのは俺だけの秘密だ。
迂闊にも入口に装甲車で近づいてしまったため警備兵が盾と槍を持ち一斉に飛び出てくる。
馬車に乗っている人たちも一斉に降りてきて武器を構えているではないか。
しかも全員、紺色と金の縁取りをしている服を着ていた。
アルファンブラ商会の前では恐怖心を一切感じる事はなかったが・・・・
この服、軍服みたいにも見えなくは無いぞ。
武器持って威嚇されるとけっこう怖い!
「あぁあああぁ! しまった! 馬車に乗り換えるのを忘れていた!!」
と俺は馬車の列の後ろに並んだ時に頭を抱えた。
「あぁぁ、大丈夫、大丈夫! これでもこの商会の会長だから」
と言うと装甲車のハッチを開けよいしょ、よいしょっと装甲車の上に乗り下へ降りて行った。
「はいはい、みなさん。会長のジーコですよ~
危険はないから大丈夫ですよ~」
と言うと全員が武器を下ろした。
「皆さん、この乗り物のことは秘密ですからね。口外しないでくださいよ~」
「か、会長でしたか。申し訳ございません!!」
と警備兵の中で一人だけで紺色に金の縁取りがされた豪勢なマントを着たガッシリとした体躯の男が飛び出てきた。
男は犬・・・・・いや、狼のような顔をしていた。
おいおい、おっさん!こんなんで秘密を守れるのか?
本当に大丈夫なのかよ!!
「主任、ご苦労さま。我々を先に通して欲しいのだが、かまわないかね?」
「はい、分かりました」
とジーコさんが言うと通路を整備し装甲車が通れるように馬車を移動させた。
「碧君、はい、こっちこっち」
とジーコさんが手招きをし空いているスペースに案内してくれた。
装甲車から降りると智弘は施設をぐるっと見回しながら
「ジーコさん、凄いね~
俺をアルファンブラ家の嫁として迎えてくれないかな?」
言った。
ヤベー 俺と智弘のさもしさは同じレベルだ!
「ネーナは女だから難しいわね~
ジーコおじさんの愛人とか?wwwww」
ブッ! 俺は思わず吹いてしまった。
何言い出すんだ、この人は!
深窓のお嬢様キャラが俺の目の前で崩壊していった。
「じゃ、こうしたら!?
智子ちゃんが養女になって碧さんをお婿さんに迎え入れるの。
いいアイデアでしょ~」
「さすが、アレックスお姉ちゃん! 頭いい~~
智子、碧お兄ちゃんのお嫁さんになる~~」
と言って飛びつこうとしてきた智子ちゃんにアイアンクローを無言でブチ噛ましたのは言うまでもない!!
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