第181話 バーサーカー

アクアの願いを聞き届けるように雷と共にアリーナが現れた。


アリーナはアクアを抱きかかえ空に舞い上がった。

アクアは抱きかかえられながらアクアを見やり


「女神・アリーナ!

 我らの偉大なる母!アリーナよ!

 最後の力を私に・・・・・」


「信徒・アクア。

 私の可愛い娘!アクア!

 あなたに今一度力を授けましょう。

 そして、そこの赤い髪の女を始末しなさい」


抱えているアリーナからアクアは宙に浮き体が静かに黒い光り光の粒子がアクアに寄ってくる。

その黒い光がアクアの胸に集中したとき。


「凶戦士!! バーサク!!」


アリーナが呪文を唱えた。


黒い光がスパークした。

まばゆい光が爆発したように見える。

その光が消えたときアクアは美しい金髪の鎧姿の騎士に戻った。

そして、体が巨大化していき鎧を弾き飛ばすように破壊し、腕、足は丸太のように太く。

胸は女性のそれとは異なりボディービルダーをも凌駕する大胸筋になり、腹の腹筋は金属かと見まごうよう割れていった。

体全体はライキンにも負けないほど巨大化した。

顔も『ハルフェルナで最も美しい騎士』といわれたのが嘘のような醜い大女になってしまった。

自慢の金髪もボサボサになり、だらしなく伸びているだけだった。


アリーナは虚空庫から超巨大なシャムシールを取り出しアクアに渡した。

本来シャムシールは片手で使う剣なのだがアリーナが渡したシャムシールは両手で持つようなサイズで剣の先端が大きく湾曲していた。

巨大なシャムシールはドス黒い炎を纏っていた。


「あぁ!素晴らしい! 体から力が漲ってきます。

 さぁ!勇者・茜!! 第2ラウンドよ!!」

巨大なシャムシールを片手で振り回し茜に斬りかかった。


ガン!

ガキン!


甲高く重い音が響く。

今まだに誰も聞いた事の無い異様な音だった。


ガン!

ガキン!


アクアが力任せに剣を振り下ろす。

それを受ける茜だが足が万全の状態でないために踏ん張りが利かない。


「勇者・茜! 相当足は悪いようだな。

 完全に力負けしているではないか!」


「にゃにお~~~!!」


と言うとアクアの剣を弾き飛ばす。

その瞬間、


「フレイム・アロー! サンダーブレード!!」


と矢継ぎ早に魔法を唱えるのだがアクアは巨大なシャムシールで薙ぎ払う。


「子供だましだな!ハハハハハ」


またアクアが巨大なシャムシールを茜に叩きつける。


ガン!

ガキン!!


茜はアクアの太刀を受けるが足に力が入らない。

今度は剣で薙ぎ払う。


ガン!

ガキン!!


また甲高く重い音が響く。


「ファイヤーボール!!」


アクアは茜が剣を受けた瞬間に左手で魔法を発した。


「うぐ!」


見事ファイヤーボールは茜に至近距離から直撃し体が燃える。

が、ロゼのローブに護られており致命傷になることは無かった。


「バーサーカーになっても魔法は使えるのよ。

 驚いたでしょ。

 さっきまでリッチだったから魔法もお手の物よ。ハハハハハ」


完全にアクアに押され全てが後手後手に回る茜であった。

茜は俊足をも使いスピードをのせ対抗しようとするのだが自重も増加しているアクアを剣で押し返すことは出来なかった。

再度、剣と剣がぶつかり合い茜は弾き飛ばされてしまう。

間髪をいれずアクアは距離を縮め茜を斬るつける。


マズイ!やられる!!


右腕をくの字に曲げ斬激を防ごうとしたとき!


ブラドーが二人の間に割り込み剣でアクアの斬激を受けた。


「チッ! ブラドーか!!」


「フ! 姫様の隣には必ず私がいる事を忘れて貰っては困るな!!

 さきほど、姫様から『伯爵』の名を賜った! 覚えておいて頂こうか!」


「ぬかせ! 吸血鬼が!!」


シュパッ!!


ブラドーは離れ際に短剣を数本投げつけた。

すべてがアクアの体に刺さるのだが大きな怪我を負わせる事は難しそうだった。


「サックブラッドナイフがあればな・・・・・」


とヒルの魔王を倒し自分で作ったナイフを失くしてしまった事を嘆いた。


「ハイフラッシュ!」

アクアの目前で光を爆発させた。


「う、目がー!!」


ブラドーは茜を抱えアクアから少し距離を取り


「ファイヤーボール」


アクアの顔面にヒットしたがたいしたダメージを与える事は出来なかった。


ブラドーは蝶のように素早く巨大化してバーサーカーとなったアクアの周りを回り的確に細身の剣で刺していくが、致命的傷を与えるのは難しい様子だった。


「ちょこちょこ小ざかしいぞ。ブラドー! 伯爵の名が泣くぞ!ハハハハハハ!」


ブラドーが攻めあぐねていると



ドドン!!

と地面を鳴らしながらライキンがやってきた。


「茜ーーー!ライキンさまが来たぞーーー!!」


「ありがとう、ライキンさん!」


「遅いぞライキン!! そんなことでは茜さまの臣下は勤まらんぞ!!」


「いつから俺が茜の家臣になったんだよ!!」


「恩の一つも返さずに何偉そうなこと言っているんだ!!」


「チッ!うるせーな! が、しっかり借りた物を返しておかないとマリーシャに怒られるからな」



腕をブンブン振り回しアクアを威嚇する。


「おら! アクア! 今までの借りはしっかり返してもらうからな!!」


ライキンが鉤爪振り回しながらアクアに斬り掛かるとアクアは巨大なシャムシールで防ぐ。

もう一方の手でライキンは薙ぎ払うのだが鉤爪が当る前にバックステップでアクアかわす。


「オラ!オラ!オラ!!」

と腕を振り回しアクア目がけ突撃をした。


「ケダモノ風情が!! バーサーカーとなった私に勝てると思うのか?

 バカめ!!

 フレイム・アロー!!」


ライキンの体に炎の矢が刺さるが何事も無かったように再度突進をする。


「ファイヤーボール!! 

 ハイフラッシュ!!」


アクアが連続で魔法を唱えライキンの体を焼き視界を封じる。

その後、ライキンの体を巨大なシャムシールが斬る。


「うごーーー、いてーーー!!

 その剣、凄いな。

 斬られてダメージを感じたのは始めてたぜ!」


どこまで脳筋なのだろうか?

それとも巨大なシャムシールが格別なのだろうか?

それともシャムシールから発せられる黒い靄のせいだろうか?

初めて斬られることの痛みを感じたライキンだった。


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