第180話 駆け引き



「ハハハハ、お前は雑だな! 

 剣の道を舐めてもらっては困るわね。

 スキルで剣技を上限まで上げているようだが、そんな直線的な剣では私を斬る事は不可能よ!」


「にゃにお~~~~!!」


茜が幾ら剣を振ってもアクアに当る様子は無かった。

大剣であるタナの剣を片手剣で受け流す。

しかもアクアには広範囲で掛けた浄化魔法は何一つ効いてないようだった。


「お前たちのような転移者とは違って私は剣も魔法もそれなりの努力をしているのでな。

 私も剣のレベルはMAXなんだよ。

 神から特典として貰えるゴミクズとは一緒にして欲しくは無い!!

 足の調子も良くないようだが、そんな事で私に勝てると思っているのか?」


以前戦ったリッチと比べて全てが桁違いに強かった。

元のレベルが高いとリッチ、魔王になるとこうも違うのかと実感する茜だった。

今までは力技で押し切ることは出来たのだがアクアには通じなかった。

渾身の一撃も盾で力をそらし、間髪入れず剣で追撃が来る。

もう一歩踏み込めればアクアを斬れそうなのだが、けしてそれを許さない。

アリーナに斬られた足のせいもあるのだが、それ以上に剣の経験の差が如実に現れた。


アルファ王子と剣の練習をしておくんだったと後悔する茜であった。



「フフフ、。お譲ちゃん。

 お友達は大丈夫なのかな?

 私の周りにいたロイヤルガード誰一人いないのに気がつかない?」


え!?


茜は同様を明らかに顔に出した。


「フフフ、お前のように正義感の強い奴は自分より仲間がやられる事を恐れるだろ!!」



しまった!! 

またしてもやられた。

全てにおいて、このお姫様は自分より上なのだと実感した。


「卑怯よ! いつも奇襲奇襲ばかりで!」


「戦いは非情なのよ!

 正面突破しか出来ない脳筋は戦争なんてしちゃダメなのよ!

 よく覚えておきなさい!! 

 敵の弱いところ、敵の嫌がる事を徹底的に突く!

 それが戦いよ」



茜が加奈たちの元へ向かおうと反転したときアクアも俊足を使い行く手を遮った。


「ウウ!」


茜が唸る。


「甘いわね!

 行かせはしないよ!! お譲ちゃん!」


ブラドーが近寄り茜の耳元で囁く


「姫様、安心してください。

 ご友人の側にはフェネクシーがいます。

 ロイヤルガードごときが100人いても問題はありません。

 老いたとはいえ姫様がいらっしゃるまで、この世界最強の一人といわれた男ですから」


ブラドーが力強く言うと茜も安心したように動揺を振り払うように改めて剣を握り直した。


「そうね!」


改めてアクアに向き直り気合を入れなおす。

タナの剣を振りかぶり渾身の一撃をアクアに叩き込む!


ガン!!

ガシン!!


タナの剣とアクアの盾がぶち当たる音が響く。

アクアの剣が振り下ろされる前に茜はバックステップで距離を取りもう一度振りかぶり渾身の一撃を繰り出す。


ガン!!

ガシン!!


また剣と盾がブチ当る音が響く。


「何度繰り返しても意味ないわよ! お譲ちゃん!!」




「ならこれはどう!?」


左手でマシンガンを腰から取り出し連射する。


ダダダダダーーーーン


アクアも反射的に盾を前に出し防ぐ。


「そんな物、効かないわよ!」


「ならこっちは?」


マシンガンを切り替え炸裂するバルカンモードに切り替えた。


ズダーーン! ズダダダダーン!


玉が盾にあたるたびに炸裂する。


辺り一面に玉が炸裂した煙で何も見えなくなる。

その煙が一瞬渦巻く!


茜がまたタナの剣を大きく振りかぶり渾身の力をこめ叩き込む!


ガン!!

ガシン!!


また盾で防がれる。


「お譲ちゃん、残念ね。

 煙幕に使うアイデアは悪くないのだけど、それもお見通しよ」


「うぐぐぐぐぐぐ」


茜は歯軋りをする。



ガシャガシャ・・・・

バキン!


ガン!

ガキン!!


ガン!

ガキン!!


その後も幾度かタナの剣とアクアの盾がぶつかり合う。


がついに盾もついに耐え切れず壊れた。


「チッ!!」


アクアが舌打ちをする。


「浄化魔法!!」


茜が唱えるとアクアは魔法障壁でそれを防ぐ。


「フフフフ。お譲ちゃん狙いはいいけど、残念だったわね。

 最初から盾を破壊する魂胆は見え見えよ。

 盾が壊れても魔法障壁があるわよ」


「にゃにお~~~」


マシンガンをまた乱射するが魔法障壁に弾かれてしまう。

距離を開け、俊足を使いタナの剣を振りかぶり全ての力を込め魔法障壁に叩き込む。


ガン!

ピキーン!


壊れないはずの魔法障壁が砕け散った。


「何て馬鹿力なの! 

 常識を超えているわね」


とアクアが呆れていると茜は腰の辺りから何かを取り出し


「聖魔法!! 浄化!!」


と叫びそれを投げつけた。


聖魔法と言う言葉に反応したアクアも


「魔法障・・・・・」


魔法障壁で対応しようとしたが聖魔法でない事を瞬時に見抜くと飛んできた物を剣で反射的に叩き切った。



パリン!!


アクアが叩き切ったのはガラスの瓶だった。


「ウワーーー! 熱い!熱い!

 体が焼ける!! 焼け崩れる!!」


アクアの体から蒸気が上がり体が溶け始めた。


「聖女の聖水か!

 アリアの物か!!」


「あ~残念。うちの学校一の美少女!詩織ちゃんの混じりっけ無し! 原液100%聖水よ!!」


「く!! 舐めた事を」


「うちの学校の男子なら喜んで被っちゃうわよ!

 ハイ、もう一本オマケ!」


とアクアに渾身の力で投げつけた。


バリン!


また聖水が入っていた瓶が砕け散る。


「ふ、ふ、ふざけるな!!

 一国の王女に何たる不敬!!」


アクアは剣を地面に刺し体を支えた。


「もう国はなくなっているのと同じよ。

 そして、あなたはもう人間じゃないでしょ。

 いえ、最初から人間ではなかったのかもしれないわね。

 私にはあなたが人間だったとは思えないわ。

 人として何か大切な物を持っていなかったんじゃない?

 他人を愛する心が最初から感じることが無かったわ」


「何を偉そうに!

 私がどれほど熱心なロゼ教の信者だったか!お前には分かるか!!

 ロゼ教に身を捧げ、奉仕したのにロゼ様は答えてくれなかった!!」


「そりゃ、そうでしょう。

 そんなに小さい心の人間にロゼが愛を与えるわけ無いじゃん。

 ロゼだってお断りよ!

 そんなんだからアルファ王子もあなたを認めないのよ!」


「アルファなぞ関係ない!

 私こそが聖女に相応しかったのだ!!」


「あ~~無理無理。

 そんな心の狭い人が聖女なんて無理に決まっているじゃない。

 戦争に関する事は頭いいけど人としてあなたはダメダメね」


「知ったような事をいうな!ロゼ様の何を知っているんだ!」


「あ~~・・・・・

 ロゼはうちの飼い犬よ。

 うちの犬が遥か昔にこの地に転移して来たのよ」


「な、な、何をふざけた事を!」


「まぁ~そうよね。

 私も信じられないから」


「勇者・タナ様もお前のところの犬では無いだろうな!!」


「あ~・・・・・ごめんなさい。 そうみたい」


「ふ、ふ、ふ、ふざけるな!! 異世界人!!

 どこまで私を愚弄するのだ!!」


アクアは激怒して叫びだした。


「その気持ちも分かるけど・・・・・

 なんだか事実みたいよ」


「ふざけるな!ふざけるな! ふざけるなーーーーーーーーーー!!」

アクアはさらに激怒し叫んだ!


「これでおしまいよ!

 往生せいやーーーーーー!!」


タナの剣で肩からアクアを切り裂いた。


骨が砕け散っりながらも飛びのき次の一振りから逃げた。

片膝を付き体をそらし大声で叫んだ。叫ぶ。



「我が女神・アリーナよ!! 

 偉大なるアリーナよ!

 最後の力を私にお与えください!!」


とアクアは仰向けに倒れたその時!!



スガーーーーーーン


一筋の落雷が茜の前に落ちた。


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