第175話 ネクロマンシー
アクアの体から湯気が上がり皮膚が溶け出す。
「う、うおーーーー! 熱い! 熱い!!」
「体が焼ける!! うぐ!!
「ウゴーーーーー!!」
辺りにも熱が伝わる。
「あーーーーーー!!」
「うううーーーーー」
アクアの叫び声が響きバタっと倒れこんでしまった。
ゆっくりゆっくり左手で剣を杖代わりにして立ち上がると、
周りに黒い霞が漂い、その霞がアクアに纏わりついたと瞬間、ビカッと光った。
そこに立っていたのはオリハルコンの鎧を着た金髪の骸骨だった。
切断された手首は復活しており禍々しい黒いオーラを辺りに撒き散らしていた。
「ほー素晴らしい!
体の底から力が漲ってくる。
これが禁忌の力! リッチになった者の力か」
復活した皮や肉が無くなった右手の平を見ながら呟いた。
「愚かな!! アクア姫!
なにを血迷ったのですか!
あなたが魔族、魔王になってどうするのですか!
人間による世界統一はどうしたのですか!」
アルファが叫ぶ。
「ウオレル王国に敗北は無い!!」
「愚かな!! 何て愚かな!!
あなたの理想はどこへいったのですか!!」
「う、う、うるさい!! うるさい! うるさい!!
ファイヤーボール!!」
アルファに向け魔法を撃つとアルファは剣でファイヤーボールを叩き切った。
「ウォーターブレード!!」
アクアが右手を天に向け手の中から鋭い水で出来た剣をアルファに振り下ろす。
激突する瞬間、茜が俊足でアルファの前に立ちはだかり右手で遮った。
「いたーーーい!!」
「茜さま、ありがとうございます」
茜はマシンガンを取り出しアクア目がけ乱射した。
「王子様、下がりましょう.
王子様は一旦下がってアリア様の下へ」
アルファを抱え後に後退した瞬間、ライキンがアクアに殴りかかり20mほどブッ飛ばした。
勝負あったかと思ったがアクアは何事もなかったように立ち上がりライキンに向けてファイヤーボールを撃ち込んだ。
「うおーーー 熱い!!
さすが、リッチのファイヤーボールは違うな!」
ライキンは体毛が黒焦げになりながらも余裕を見せる。
「ケダモノ風情が何を余裕を見せている!
そろそろお前と決着をつけなくてはな! ライキン!!」
と言うとアクアは剣を抜きライキンに斬りかかるが白刃取りをする。
「甘いよ、アクア!
肉弾戦で俺に勝てるわけないだろう!」
といった瞬間、光の玉を作りライキンの目の前で炸裂させた。
「目がーーー!!」
アクアは飛びのき
「これだからケダモノはバカなんだよ!」
そしてウォーターブレードを唱えるとライキンの腹に突き刺した。
「うぐ!! いてーーな、この野朗!
ライキン様がこの程度でやられるわけないだろ!」
ライキンはまた突進を始める。
「スワンプ・ポンド!!」
ライキンの足元に底なし沼を作り見事にライキンは嵌った。
「その突進しか出来ない頭は何とかならないの? バカね」
と笑い沈みゆくライキンの首を目掛け渾身の力を込め剣を振るった。
すまん、マリーシャ、ネギトロ。
お前たちの元に帰ることも叶わんか!
とライキンは目を瞑り観念したとき!
ガキン!!
と硬いもの同士が当る音が響く。
「茜ちゃん、参上!!
ライキンさん、大丈夫!
ヒール、ヒール、ヒール!!」
「お、おう! 茜、助かった!!」
「死に損ないが!! フレイムアロー!!」
茜は咄嗟に魔法障壁を繰り出す。
「ブラストチェンバー!!」
茜はアクアの四方を壁で囲み隔離した。
「そんなものリッチになった私には効かない!!」
「時間稼ぎよ!!」
と茜は言うと飛空魔法を駆使して沼に嵌ったライキンを引っ張り上げ上空に飛びあがった。
「ライキンさん、重いわね~ ダイエットしてよ!!」
「獣王の俺がそんもんするかよ!!」
「それなら私も面白いモノを見せてあげましょう~」
アクアは地面に剣を突きたて両手を広げ呪文を唱えた。
「ネクロマンシー!!
散りゆく勇士たちよ!私の子供として蘇りなさい!!」
アクアが呪文を唱えると赤い煙が辺りを覆い倒れていったウオレル騎士に纏わりついた。
死んだはずの騎士たちがガシャ、ガシャと鎧と鎧があたる音をたてゆっくりと立ち上がる。
その頃、フェネクシーのいる後方でも!
「うっ!!」
「詩織!!」
加奈が叫ぶ。
アクアのアサシン部隊が秘密裏に展開し襲ってきた。
グレーコ王を刺した暗殺武器の短剣で詩織が刺されたのだった。
見る見る詩織の顔色が悪くなっていく。
自分で自分にアンチポイズンを掛けるが呪文に集中できないのか効果が薄い。
「キャーーー!」
そしてアサシンの短剣は加奈をも襲おうとしたとき!
ガシッ!
危機一髪! フェネクシーが短剣を素手で掴んだ!
そして短剣をもぎ取るとアサシンに刺し返し左手を刀のように変化させアサシンを刺し絶命させた。
他にもいたアサシンに石化魔法を次々と掛け石にした後、今度は手をハンマー状に変化させ次々と砕いていった。
理沙が駆け寄りアンチポイズンを掛ける。
「詩織!!詩織!! しっかりして!!
「う、う~~~ 茜ちゃん、茜ちゃは大丈夫?」
詩織の意識が混濁する。
「詩織、、茜のことなんていいから。意識をしっかりもって。 アンチポイズン!! アンチポイズン!!」
理沙が一生懸命解毒魔法を掛けるが効果は薄い。
「こんなことなら、もっと回復魔法を練習しておけばよかった!!」
理沙は賢者なのだが攻撃魔法を得意としていた。
一緒に行動していた桃花が僧侶だったために回復魔法より攻撃魔法を主に練習していたのだ。
「しまった、敵の姫さんは知・勇に優れた武将だったな。
こちらと同じ事を考えていたとは・・・・・」
とフェネクシーが悔しそうに呟いた。
そこへ運良くブラドーが飛空魔法でアリアを救出して戻ってくると状況を察したアリアは倒れている詩織の下に駆け寄り呪文も口にせず渾身のアンチポイズンを掛けた。
詩織の体は光り輝き周りにいるすべての者が毒が浄化されたと分かった。
すかさずアリアは寝ている詩織の胸に手を置き、ゆっくりと回復の呪文を唱えるのであった。
この回復呪文の掛け方は雑な茜とも丁寧に掛ける詩織とも違う空気が辺りに流れた。
アリアは深く深呼吸をするともう一度回復呪文を掛けると誰の目にも詩織が回復途上にあるのがはっきりと分かった。
「アリア様、詩織をありがとうございます」
加奈が涙を浮かべながら礼を述べるのであった。
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