第174話 リッチ誕生!


「スーシャール・アリファルベルド・ハプス・ケイサン!

 カクタス・グリングダーク・エデダクスカク・サーラン!

 よくワシの召喚要請に応えた。

 そなたらに命ずる! ウオレルの騎士を討伐せよ!!」


「「ハハーーー」」


2体の悪魔は跪いたまま再度深く頭を下げた後、立ち上がると疾風のような速さでウオレル騎士に襲い掛かった。

突如、目の前に登場した悪魔2体のプレッシャーに加奈は少し漏らしてしまった。


「だ、だ、大魔王さん・・・・・大丈夫なの?」

と加奈は2体の恐怖に震えながらもフェネクシーに尋ねた。


「安心せい! ワシの部下たちじゃ・・・・・・

 が、扱いが危なくての~~~

 魔族の中でも飛びっきり危険なヤツらなのじゃ!

 三度の飯よりも血が好きと言うとんでもないヤツらなのだが腕はピカイチじゃ」


「そんな危険な悪魔を呼ばなくても・・・・・

 もう少し大人しい悪魔にして欲しかった」

と加奈は嘆くのであった。



痩せた悪魔は長い爪をもっと伸ばし、伸ばした左爪でで剣を受け右手の爪でミスリルで出来た鎧を切り裂いた!

太った悪魔も同じく長い爪で相手の剣を受け右手の爪でアダマンタイトの兜の隙間を突いて頭を串刺しにした。

2体とも騎士を殺した後は必ず爪に付いた血を長い舌で啜るように舐めていた。


茜は2体の殺気を感じ取り後ろを振り向いた。


「魔王!!」


反射的に剣を振りかざし2体の悪魔方へ体が動いてしまった。


「女子ーーーー!! そいつらは味方じゃぞ!

 斬るでないぞ!!」


「え? そうなの?」


「そうじゃ~ 味方じゃからな!!」

とフェネクシーが辺りを揺らさんばかりの大声で注意を促した。


太った悪魔は押され気味の千代や織田の下へ援軍に行きウオレルの騎士を蹴散らした。

空に舞い上がったかと思うと鋭角な角度で蹴りを放った。

それは何もないところで木を蹴って方向転換したような物理の法則を無視した運動だった。

迫ってくる騎士の足元に魔法で底なし沼を作ると数人の騎士が沼に嵌り沈んでゆく。


「ウワーーー!!」

騎士たちが叫び声を上げると口角を釣り上げニタリと笑い沈んでゆく騎士たちの首を片っ端から刎ねていく。

辺りに狂気が溢れかえる。

沈んでゆく騎士を放置しておいても何れ沼に飲み込まれ死ぬにも関わらず自分で止めを刺さないと気が済まないようだ。

これが悪魔の本来の姿と言うものだろう。



痩せた悪魔はアルファの元へ赴くとアルファを斬りつけようとするウオレル騎士の剣を爪で防ぎ片方の手の爪で鎧ごと切り裂いた。

そして爪を5mほど伸ばし距離の離れている騎士を鎧ごと貫き、爪を元の長さに戻すとペロッと舐めた。

アルファに近づく騎士たち次々になぎ倒していく。


アルファの前方にいるミスリルの鎧を着た5人の騎士たちに向け手の平を向け呪文を唱えた。


「フィアーバースト!」


「「「「「うわーー」」」」」


と叫び声を上げると5人は失禁し剣を放り投げ腰を抜かし後にバタリと倒れた。


「う~~ん、呪文で作った恐怖は美味しくないな」


と透き通る声で細身の悪魔は呟いた。



アルファが茜たちと合流するを見届けると千代たちの援軍へ向かうために後退した。



アルファはアクアを目視できる距離まで来ると遠巻きに剣で指しながら


「アリア姫を返してもらおうか!!」

と口を動かす。



アクアもにやりと笑いながら口が動く。


「力で取り戻してみなさい」





アダマンタイト部隊がアクアの前に並び槍を構え茜、アルファたちに突進を始めた。


「茜! 行くぞ!!」

ライキンが茜に声を掛けると


「うをーーーー」

と言ってライキンに応えた。


それを遠巻きに見ていた加奈は


「・・・・・・・もう、馬鹿なんだから!

 今、魔法を撃ち込めば楽に殲滅できたのに・・・・・

 あの子は、すぐに頭に血が上る!」



猛スピードで両者がぶつかり合う!


グサ! ブス! グス!


ゴン! ガン! ドンガラガラ! ガッシャン!


ライキンは体を刺されながらも手で掴んだ物を片っ端から投げ飛ばし、鎧と鎧がぶち当たり聞こえてはいけない擬音が辺りに響く。

茜は剣をなぎ払いながらソニックブレードを連発してアダマンタイト部隊を怯ませた隙に俊足で近寄り騎士たちを一刀両断していった。


ライキンの通った後は破壊されつくしたアダマンタイトの破片が散らばっていった。

茜の通った後には騎士の流した血で赤く染まっていった。

勝負は決した。





戦場の注目が茜、ライキンとアダマンタイト部隊の激突に注がれているときブラドーはこっそり後方に捕らわれているアリアの元に赴いた。

周りにいた騎士を細身の剣で鎧の隙間から突き刺しアリアを脇に抱えようとしたとき


「そうはさせない!」


と言って後退していたアクアが斬りかかった。

アリアを抱えながらもブラドーは軽く避け飛空魔法で飛びあがった瞬間、アルファはロイヤルガードが一瞬ブラドーに気を取られた隙に間隙を縫いアクアの剣を持つ右手首を切り落とした。



「うぐわーーー!!」

鮮血が吹き上げアクアが呻く。


「よくも私の手を!」


「降伏なさいアクア姫。

 あなたの虎の子の部隊も全滅しました!

 最強の騎士であるあなたがそれでは勝ち目は無いですよ。

 今ならアリア様に切断した手を治していただけますよ」


「それはどうかな!!

 ウオレル王国に降伏は無い!!」

と力強くアクアは言うと腰の後に仕込んである袋から銀色の指輪を左手で取り出し口にくわえると左薬指に器用に嵌めた。

その指輪からは禍々しいオーラを発しブラードーには黒い憎悪が見えた。


「それは!リッチの指輪!!

 王子! 危険です!後退を!!」


ブラドーは慌ててアリアを抱えながら空に舞い上がりフェネクシーが陣取る後方に退避した。

アルファもブラドーの進言に倣い後退をするのであった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る