第173話 デビルロード 召喚!!



フェネクシーは空を飛びながら馬車の中のアルファ王子へ話しかけた。


「この辺りにロゼ教の総本山があったはずだが・・・・

 なんと言ったかの~ ストーンキャッスルと言っていたはずじゃがの。

 今もあるのか? 王子よ」


「もうしばらく飛んだところにありますが今はもう廃墟になっています。

 ストーンキャッスルと言う名前だったのですか。

 我々は『ロゼ教の遺跡』で名が通っています」


「廃墟と申すか・・・・

 残念じゃ、昔は美しい神殿が数多く立ち並び賑わっていたのじゃがな」




遥か彼方、神話と言われている時代『魔神大戦』と言う神と魔族の戦いを終わらせた異世界から転移してきた勇者。


『慈愛の勇者』

『博愛の勇者』


と後に言われたロゼの教えを元に広まったのがロゼ教であった。

フェネクシーも今よりも遥かに若かった頃、何度か訪れたことがあった。

長く続いた『魔神大戦』も終わり世界の全てが平和だった頃、人類を初め獣人、亜人、魔族さえもストーンキャッスルの建設に力を貸していた。

この地はハルフェルナの平和の象徴だった。

国々は統一などされておらず無数の市や町などが多く存在し多くの民たちが数年に一度ストーンキャッスルへ巡礼へ訪れていた。

人間、獣人、亜人、魔族など関係なく・・・・・

それはもう遠い昔の話でしかなかった。

そう思ったとき、フェネクシーは飛びながら一筋の涙を流した。



・・・・・・勇者タナとロゼが異世界では犬だったとわな。

今はその飼い主が転移してくるとわ。

何たる偶然。

この世界にあるありとあらゆる世界は案外狭いのかもしれない。

・・・・・いや偶然ではなく必然なのかもしれんな。


フェネクシーは一人思うのであった。



「今では訪れる人も少ないので軍を休憩させるのにはもってこいの場所かと」


とアルファが言い終らないうちに巨大な火の玉がこちらに向けて飛んできた。


「大魔王さん!危ない」

と茜が魔法障壁を張ろうとした瞬間、フェネクシーは火の玉に向け息を吐きかけると弾け飛んだ。


「あの程度、何も問題は無い。安心せよ」


「キャーー!カッコいい、さすが大魔王さんね」


「どんなもんじゃ! 女子!」

 とフェネクシーは誇らしく言うと


「どうやらあそこにいるようじゃな」


とフェネクシーは少し離れたところに着地した。


着地した途端、アルファは全速力でアクアのいる遺跡の方向へ駆け出した。


「王子様ーーーー!!」

「王子ーーーーー!」


茜と加奈の声は王子には届かないようだった。



アクアの周りに多くの騎士たちがいるにも関わらず剣を抜きアクアを指し


「アクア姫! 

 アリア様を返して頂きに来ましたよ!

 もうカイト王はこの世にいません!

 ニッケルメッヒ、いや女神アリーナも逃げ去りましたよ。

 あなたとあなたの子飼いの騎士たちでは茜さまや魔王には勝てませんよ。

 終わりにしましょう!!」


アクアは一瞬、苦い顔をした。

父であるカイト王が死んだということは援軍の魔法部隊も来ないであろうということを察した。


アクアはアルファに襲い掛かろうとしたロイヤルガードを手で遮り


「先ほど袋叩きにされたのにまだ懲りていないのですか?

 軟弱王子様。

 一人では太刀打ちできないので助っ人を連れてきましたか。

 軟弱王子様らしいですね。

 私の兵はあなたのように軟弱者ではありませんよ」


「黙れ!!いざ尋常に勝負!!」


「ハハハハハハハ!あなたは本当に無能ですね!

 あなたがノコノコ突撃してくるものだから、お仲間たちが困っていますよ。

 本来なら魔法の一発、二発撃ち込んでから奇襲攻撃をかけるのが指揮官としての戦い方。

 あなたは仲間を無視して自分勝手に。

 武人として失格ですね」


「アリア姫を返して頂こう!!」

アルファは数々の暴言を無視して言い返しアクアに向かって突進した。


ガキッン!!


アルファの一太刀をアクアの左にいたロイヤルガード剣で防ぐ。

右にいたロイヤルガードがすかさずアルファに斬りつける。

アルファはこうなる事を分かっていたようで余裕を持ってバックステップでかわし短剣をアクアに投げつけた。

アクアも余裕でかわし後へと後退した。


遅れること数秒、茜、ライキン、千代、織田、藤吉らが駆けつけ乱戦となった。


ガン!

ガキ!


バシッ!

ゴゴン!


と剣と剣、剣と楯が打ち付けあう音が響く。


 

ドゴン! ガシ!ブッシュ!!


ライキンは素手でミスリルの剣を掴み片方の手でミスリルの兜を上から殴りつける。


ボコン!


硬質であるはずのミスリルも簡単に凹み兜の中から血が吹き出る。

ライキンも幾度か斬りつけられたのだが硬い体毛、硬い皮膚に阻まれアダマンタイトの剣でも擦り傷レベルの怪我しか負わせることが出来ず、その傷も瞬く間に回復していく。


茜も迷うことなく斬りかかってくる兵士たちを片っ端から斬り捨てていく。

足を引きずりながら・・・・・


が、千代、織田、藤吉たちは並の騎士以上のレベルに達してはいたがエリート中のエリートが集まるアクアの部隊には苦戦をしていた。

斬られる度に詩織と理紗がヒールを掛け難を逃れている。


「これはちとマズイの~

 接近戦になると魔法使いは無力化されてしまうの~」


「大魔王さん、何とかならないの~

 もう~本当に男は馬鹿なんだから!!

 目先のことしか考えずに突っ込んで行くから!!」

と魔法使いである加奈は何も出来ずにオロオロするだけだった。


フェネクシーは少し考え込み


「まぁ~女子もバサバサと人を斬れるようになったことじゃし、まぁ~良いか」


と言うと両手を天高く上げ呪文を唱えた。


「デビルロード、召喚!!」


目の前に稲光と共に2体の悪魔が現れた。

1体は細身で背が高く、もう一体は背が低く重量級のような様そうだ。

2体ともはフェネクシーのようなナマケモノ、人間のような姿ではなく、

体はどこまでも黒く、口は犬のように長く牙が飛び出て、目は赤く染まり狂気が溢れていた。

背中からは黒い羽が生え尻尾の先は槍状になっており指は細く爪はどこまでも鋭く長かった。

誰もが一目見てこの世の物と思えない姿をしていた。

絵に描いたような不気味な悪魔がそこにはいた。


その2体はフェネクシーの前に跪き


背の高い悪魔が

「スケルシャール・アリファルベルド・ハプス・ケイサン!参上!!」


肉付きの良い悪魔が

「カクタス・グリングダーク・エデダクスカク・サーラン!見参!!」 


「「大魔王・フェネクシー様のお呼びに参上いたしました!」」


辺りに恐怖が撒き散らされた。


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