第165話 裏切り!?


「この気を逃さず残りのゴーレムを排除して城へ突入よ!!」


加奈の作戦変更が響き渡ると


「「「「「「うをーーー」」」」」


の掛け声と共に残りのゴーレム掃討に力が注がれた。


ライキンは力ずくで

茜はハゲハゲ波の禁止を喰らってから頭部を切断したあと体を破壊する方法に

ブラドーはあくまで華麗に流麗に

フェネクシーはハゲハゲ波を駆使し

他の獣人たちは複数で協力しながら一体を撃破していった。


ゴーレムの大群も茜たちの前では少しの足止め程度にしかならかった。

少しの足止めにしか・・・・・・・


「城の中へ突入するぞ! カイトを捕まえろ!!」


ライキンが全員に号令を出し城への突入が開始された。

ウオレル兵が回廊で突入を阻む。

弓兵がライキンを目掛け矢を射り体に刺さる。

が、ライキンは何事もなかったように弓兵に近寄り片っ端からなぎ倒す。

兵士が剣でライキンの体を斬りつけても多少の出血はするようだが気にするそぶりもなく殴り飛ばしていく。

ライキンの無謀ぶりに兵士たちも勝てる相手では無いと言うことを悟ると剣を捨て逃げていく。




そして、玉座の間に。


そこには玉座に据わったカイト王。

左隣には宰相ニッケルメッヒの二人だけがいた。


カイト王はゆっくり立ち上がり、


「ライキン、ついにここまで来たか」


「カイト王よ! お前には死んでもらう。そして、俺の仲間の全てを解放してもうら」


「お前たち獣人なぞに自由など与える必要は無い!

 無学で蒙昧な愚か者は飼われるのがお前たちのためだ!」


「ふざけるな!」


「お前たち獣人にどれほど我々人間が苦しめられてきたのか分かっているのだろうな!

 お前たちは考えることもせずに、あればあるだけ食料を消費する。

 植物を栽培することもせず、家畜を飼育することもせず、あるものを根こそぎ消費していく。

 お前たちが巻き起こした飢饉はどれくらい有ると思っているんだ!

 獣人・亜人たちこそがハルフェルナの諸悪の根源!

 抹殺されなかっただけでも有り難いと思え!!」


「うるさい! 黙れ! お前が無下に殺した獣人は何百人いると思っているのだ!

 ふざけるな!カイト!」


「そうよ! 獣人さんたちを奴隷なんて可愛そうじゃないよ!!

 虐殺してる人間が何言ってるのよ!」

茜がカイト王に敵意をむき出しながら言った。


「小娘よ! 子供の脳みそでは分からぬか! 貴様はハルフェルナの歴史を知らないで言っているだろう!

 可愛そうとかそんなくだらない問題では無い! 

 奴らのせいで人間が苦しめられておるのだ!

 苦しめられたのは人間なのだ!

 分からぬか! 人間こそが被害者なのだ! 

 だからこそ、獣人・亜人、魔族など全てを抹殺して人間だけの世界を作るのだ!

 人間の人間による人間のための統一国家が必要なのだ!」


「人間だけの世界もけして幸福にはならないわよ。

 人間同士で殺し合いの歴史を永遠に繰り返しているわよ。

 獣人、亜人が国に変わっただけよ。

 ハルフェルナだって人間同士で争いをしているでしょ。

 何も変わらないわよ」


「だとしてもだ! 獣人がいなくなれば!国が統一されれば争いはなくなる!!」


「ならないわよ! 

 国が統一されたとき、分裂が始るだけよ」


「それは統治者が無能だからだ!」


「なら、あなたには無理ね! カイト王!

 少なくともあなたは世界を丸く治める技量は持ってないと思うわ!

 あなたより私のほうがまだマシね」


「ハハハハハハは 舐めるな小娘! お前ごときが政治に口を出すな」


「あなたの国には『愛』がないわ。

 こんな国、遅かれ早かれ何れ滅ぶわ」


「生意気な小娘! お前に何が分かる!」


「あなたより『愛』を多く持っているから分かるわよ。

 誰もあなたを支持しない、誰もあなたを愛さない。

 あなたよりはみんなに好かれる自信はあるわ!!」


「忌々しい小娘だ! 異世界から来た召喚者のクセに生意気だ!

 フフフフ 小娘!こんなところで遊んでいて良いのか?

 ファイレルがどうなっているか知っているのか?   ハハハハハハハ」


え?何?どういうこと?

ファイレルには桃香や理紗が残っているじゃない!


「城に兵が少ないのを疑問に思わなかったのか?

 戦の素人め!  ハハハハハハ」


カイトが茜を見下すように高笑いをしたあと









「ウッ!!」


と、カイト王が左後ろを振り向くと


「カイト王、口が軽いのは王としての威厳が損なわれますよ。

 あなたも存外、戦に関しては素人ですね。

 優秀な指揮官はペラペラとおしゃべりはしませんよ。

 アクア姫のように」


とニッケルメッヒはカイト王の左脇腹を短剣で刺しながら言った。

そして、


「時間切れです。あなたの役目は終わりました」


と冷たく言い放った。


カイトは膝から崩れ落ち左脇腹を押さえる。

刺されたカイトも茜もライキンもそこにいるすべてのものが何が起きたのか理解できないでいた。

たった一人ニッケルメッヒを除いて。


「さぁ~ カイト王。最後の仕事ですよ。

 猿知恵の貴方にはこれが相応しいでしょう」


ニッケルメッヒは虚空庫から一つの王冠を取り出し崩れ落ちたカイトの頭に冠を載せた。


カイトの体は見る見るうちに巨大化し服は破れ体毛が一気に伸び顔は猿のような顔に・・・・・


「ウッホーーーーー」


10mを超えるマントヒヒがそこにはいた。


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