第164話 ハゲハゲ波


ライキンの突撃は凄まじくウオレルの騎士たちでは、とてもではないが止める事はできず片っ端から倒されていった。

続く茜もライキンに負けずタナの剣で兵士をなぎ倒す。

そして、獣人たちも突撃を開始し城の周りをあらかた制圧することが出来た。


「市民のみなさんは家から出ないでくださいね~

 抵抗しない限り攻撃しませんから。

 それから城には逃げ込まないでくださいね。

 城にガンガン魔法を叩き込みますので危険ですよーーー」


と茜が大声でウオレルの市民に警告を発した。


「バカねー 茜も作戦をベラベラ話して・・・・・でも、あの子らしい。

 これでいいのよね・・・・」


と誰に向けて言ったのだろうか?

2000年後にいる碧か

それとも時に情け容赦しない智弘に向けてか。


城の裏手からウルフェン率いる部隊が突入を開始したその時!


城正面の城内から


ドスンドスン!

ドスン!ドスン!


と地響きが響く。


10mほどの灰色の人型の岩石が出て来た。


「ゴーレムだ! 気をつけろ!!」


ライキンの大声が響いた。


「気をつけろ!! 一体だけでは無いぞ!!」


先頭のゴーレムの後に一体、もう一体、また一体と続いて城内から出て来た。


「いったい何体いるんだ!!」


次から次へとゴーレムが出てくる。

20体、いや、30体を超える数が城から出て来た。


「ウオレルの兵士が少なかったのはこれがあったからなのね」


突入部隊に遅れ加奈とフェネクシーも城下へ入ってきた。



「おいおい、これは凄いぞ!

 まさか一人の魔道師が操っているんじゃないだろうな」


「ハゲじじー、それは凄いことなの?」


「凄いも何も、ワシクラスの魔道師がおると言うことじゃぞ!」


「え!?さすが一人は無いんじゃない?

 何人かの魔道師が操っているんじゃない?」


「ゴーレムの操術は特殊でな優秀な魔道師でも2体が限界じゃ!

 優秀な魔道師が15人以上いるとしたら、それはそれで危険じゃ!」


「じゃ、撤退命令を出した方がいいの?」


加奈が青いかおをしてフェネクシーに聞くと黙って頷いた。


「撤退!! 撤退ーーーー!

 全員、撤退ーーーーーーーーー!」

加奈の絶叫が響く。


ゴーレムは手当たり次第、拳を振り上げ獣人たちに狂ったように攻撃を始めた。

殴りつけるのだが獣人たちは殴られることもなく回避する。

暴れ狂うゴーレムの拳は獣人たちよりウオレルの城下を破壊することが多かった。

残骸となった町の建材を投げつけゴーレム。

家の柱を振り回すゴーレム。

あたれば破壊力はあるのだが・・・・・・破壊しているのは町の方が多い様子だった。



その中に躓き逃げ遅れたネコの住人にゴーレムの拳が迫った。

茜は咄嗟に飛び出しネコの獣人とゴーレムの間に飛び込み岩の拳を全身で受け止めた。


ドン!と言う音が聞こえた。


「ふんご~~~~」

と茜は大股を拡げ踏ん張りゴーレムを持ち上げ後に投げ飛ばした。


「ネコさん、早く逃げて~~」


ネコの獣人は這い蹲ったあと立ち上がり逃げていった。





「獣王・ライキンに撤退は無い!!」

と叫ぶと


「うを~~~~」

と言う雄たけびを上げゴーレムに突撃を開始した。


「ライキンさん、ダメー」

「ライキン!! 撤退だ!」

「あのバカネコ!」

茜、ブラドー、加奈、三者三様の警告を発した。


茜は無意識にライキンの元へ向かいタナの剣を抜きゴーレムに斬りかかった。

一刀両断とはいかなかったがゴーレムの頭は真っ二つにドスンと言う音と共に地面に落ちた。

が、まだ動きは停止していない。

頭がなくとも茜の位置が分かるようでパンチを繰り出してくる。

そのパンチを跳躍で避けると再度斬りかかり真っ二つにするのに成功した。

一体倒してホッとしているところに、他のゴーレムの拳が茜に迫る。


「アカネーー! 危ない」

加奈が叫び茜が振り返ったときにはゴーレムの拳は茜に直撃し吹っ飛ばされ石作り民家に激突した。


「茜!!!」

「姫様!」

「女子!!」


「痛いわね~~~でも、加奈の杖攻撃に比べればたいしたことないわね」

と民家の中からホコリと共に茜が出て来た。


「心配させるんじゃないわよ!!」


加奈が大声で怒鳴るが声に怒りは殆ど含まれていなかった。


茜はタナの剣を構え


「往生せいやーーー!!」


と叫びゴーレムに突っ込んでいった。


「もう、撤退命令出したじゃない!! 猪なんだから!!」


ライキンはゴーレムに飛びつくと馬鹿力で頭部を捻じ切りボディースラムの要領で地面に投げつけ一体一体破壊していった。


「ライキンさん、さすがね~!!」

「獣王としてお前に負けていられないからな! ガハハハハハ」



「あの二人、脳筋同士、気が合うのね~」


と悪い意味で感心する加奈の元へゴーレムのパンチが襲う。


「キャーーーーー!!」


「加奈ーーー!!」


拳があと僅かに迫ったとき!!


シュルシュル!!


と言う音と共にゴーレムが縛り上げられ


ドタン


と地面に倒れた。

倒れたゴーレムは銀色のロープで縛り上げられて身動きが取れずもがいていた。

加奈が目を開けたときブラドーがゴーレムの側に立っていた。

虚空庫に手をいれ自分の身長よりも巨大なハンマーを片手で軽々取り出した。

その仕草はまるで重さがないように華麗に流麗に。

ヘッドの部分には無数のトゲ付いておりゴーレムの頭に振り下ろした。

あくまでも華麗に流麗に。


ダン!!

と言う音と振動が近くにいる者に伝わる。

再度、軽々華麗に流麗に持ち上げると、今度はゴーレムの体に撃ち下ろした。

あくまで華麗に流麗に。


ゴーレムは砕け散り粉々に散った。


「ブラドーさん、ありがとうございます」

「ブラドーさん、カッコいい!! 貴族みたい!」

「チッ! ブラドーのヤツ、格好つけやがって!」

加奈、茜、ライキンから三者三様の言葉が贈られた。


「まぁ~ブラドーならこれくらいやるじゃろうな」


「ハゲ! お前も働け!!」

と加奈が毒舌を発した。


「女子よ。ちとワシに冷たくないか?」


「うるさい!! 乙女の純情を弄んだからだ!!」


「あーはいはい。

 これはちと疲れるんでな」

フェネクシーは重い腰を上げると足を前後に広げ腰を少し落とし踏ん張るような体制をとると両手を右脇へ持ってくると、そこで呼吸を整え大きく息を吸った。

すると両手の中に光の玉が精製された。


「ふんがー!」


と言う掛け声と共に手を前へ押し出すと光の玉が猛スピードで飛び出しゴーレムに命中すると


トワンバンガー!!


と言う激突音と共に木っ端微塵に砕け散った。


「どうじゃ、凄いじゃろ! ゴーレムに最も有効な魔法なのじゃが老人には応えるんじゃ」


「かっこいーー大魔王さん、私もやってみようかな?」


茜はフェネクシーのマネをしながら腰を落とし気を溜め、そして


「ふんがーーー!」


と言う掛け声と共に光の玉が飛び出す。

が・・・・・・やはりと言うかフェネクシーの作った光の玉より遥かに大きい!

ほぼ人間の倍はありそうな玉が出来上がり縦に並んでいたゴーレムたちに直撃し砕け散っていく。

が、ゴーレムをなぎ倒したあとも光の玉は壊れることなく城の城壁に激突し城壁を破壊した。


辺りは砂埃が舞い何も見えない状態になった。


「アカネーーーーーーーー!! 

 ハゲハゲ波! 禁止!!」


「えーーーーこれもダメ?」


「実戦でいきなり使うんじゃないわよ!! 失敗したらどうするつもりなのよ!!

 考えなさい!!

 ちゃんとコントロールできているの?

 味方に当たったらどうするのよ!!」


先ほどまで撤退を考えていた加奈であったが茜やライキンたちの活躍を見て城への突入に作戦を変更するのであった。


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