第163話 突入!ウオレル城

ウオレルの城下の戦いの前哨戦は問題なく獣人たちが圧勝した。

獣人たちの被害はほとんどないといって良い状態だった。



「あの戦好きな姫さんが前戦に出て来ないとのがおかしいな。

 大体大きな戦いには先頭に立って指揮しているはずなのだが」


「ライキンさん、それはアクア姫のこと?

 私、あの人好きになれそうにない。

 仕草の一つ一つが凄く冷たいのよね。

 同じお姫様のウインレルのアリア姫と正反対よね。

 アリア姫は心優しい絵に描いたようなお姫様なのに」


「そうだ! 茜! あの女にどれくらい痛い目に合わされたか」


「それはそうでしょ~ 突撃しかできない脳筋なんか戦い慣れしたプロの軍人に敵うわけないじゃない!」

とライキンを睨みながら冷たく加奈が言う。

まだフェネクシーにからかわれた怒りが収まりきってはいないようだ。



「うぐぐ・・・・そうは言うが・・・・・」


「そうは言うが!何ですか? ライキンさん!

 私は戦闘に先立って忠告しましたよね!

 3歩、歩いたら忘れるのですか? ニワトリなんですか?

 ネギトロが可愛そうよ。パパがこんなに馬鹿で!」

と、先ほどの愚行を思い出し怒りが蘇ってきた加奈であった。


「うぐぐ・・・・」

何も言い返せないライキンだった。


「ニワトリですって!ライキンさん。ハハハハハハ」



と茜も調子に乗ってライキンをからかうと


「茜! あんたもニワトリ脳でしょ!」


「ハ、ハイ!」

と名指しされると茜もビクッとなり背筋を伸ばすのであった。


「加奈が、怖いんですけど・・・・

 まだお怒りが静まっていないのですけど」


「まぁ~ 女子もいつまでも怒っていないで落ち着け」


とフェネクシーが仲裁に入った瞬間。


「ハゲ! お前は黙ってろ!!」


と加奈の怒りに油を注ぐのであった。


ブラドーはというと怒りがぶり返した加奈を恐れ隠密スキルを使い静かにその場から離れるのであった。


「おい、茜! この女は一度怒るとこうなのか?」

とライキンが小声で茜に尋ねると


「そうなのいつも、こうなの。

 お兄ちゃんがいればすぐに宥めてくれるんだけど・・・・

 いい!ライキンさん変なことは言わないでね」


「お、おう。

 茜がこの女に逆らわないのよく分かった。

 俺も逆らわないようにしておこう。

 この女の怒りを納められるお前のアニキ凄いんだな」


「そこの二人!!

 聞こえているわよ!!」


といわれた瞬間、茜とライキンはビクっと背筋を伸ばすのであった。



加奈の怒りが収まりウオレルの城が見えるところまで歩みを進めた。

城門はしっかり閉じられ城壁にはウオレルの兵士が弓を持った兵士が配置されているのが分かった。


「籠城するようだな。

 では正面突破するか!!」


とライキンが言うと。


「なぜそうなる!! この馬鹿ネコが!」


と杖を地面に突きたて加奈が間髪入れずに答える。


「あんな門の一つ二つ俺様が簡単に破壊してやる。

 体当たりすれば一撃だ!」


と10mはありそうな巨大で頑丈そうな門を見て答えた。


「門の後に落とし穴があったらどうするの?」


「飛び越える!」


「門の後ろに鋭利なヤリが沢山あったらどうするの?」


「全てへし折る!」


「門の後ろに魔道師が構えていたらどうするの?」


「すべてブッ飛ばす!!」


加奈とライキンの押し問答が続き、ついにキレた加奈が


「ライキンさんは待機!!」


と杖を地面に突き怒鳴った。


「茜とハゲが城へ向けて魔法を撃ち込む。

 その後ライキンさんたちが前門から突撃。

 時間を空けて頃合を見計らってウルフェンさんの部隊が裏から入いってウオレル王やアクア姫を捕らえる。

 え~~~と、なんて言ったっけ・・・・・宰相の・・・・・・」



「ニッケルメッヒ!」


と茜が言う。

あまりのライキンのバカッぷりに頭に血が上りすぎたために記憶力の良い加奈もニッケルメッヒの名前がすぐに出てこなかった。


「そのニッケル宰相も出来たら捕らえる。

 お偉い人を捕まえて奴隷の獣人さんたちと交換。

 もし獣人さんを人質に取られたら速やかに撤退!

 どう?この作戦で!」


先ほどの戦いで魔力を消費した加奈は平内が作ったマジック・ポーションを1本、また1本開けながら眉間にシワを寄せ指示をした。


「それにしても兵士の数が少なすぎるのはおかしいわね。

 アクア姫も出てこない。

 強そうな部隊もでてこない・・・・・」


と加奈はウオレルの対応を不審に思うのであった。






^-^-^-^-^-^-^-^-^-^







「さぁ、茜! ウオレルの城へ攻撃を開始して。 

 あそこなら物見の兵くらいしかいないはずよ」


というと城から突き出た塔を指差していった。



茜は微妙なサイズ、破壊力の魔法が苦手であった。

初めて使ったときとくれべ実戦もずいぶん経験したのだが、上手く出来るときと出来ないときの差が激しいのだ。

家事全般が得意な家庭的な女子なのだが・・・・・戦闘だけは雑なのだ。

色々と残念な子であるのだが不器用は不器用なりに考えた。

アイスボールが巨大になる前に投げてぶつければ良い!と言う事に気がついた。


「私、頭いい~~~~~~」


茜は右手を高く、手の平を天に向け


「アイスボール!」


と呪文を唱えた。


手の平に氷の塊が出来る。

塊は徐々に大きくなっていく。

10mくらいのサイズになったところで城の上部めがけ投げつける。


ドガーンと大きな音が数秒遅れてやってくる。

ほとんど城は壊れることなく氷が砕け散っただけであった。


「ダメね~ お城、けっこう固いのね」


再度、手の平を天に向けアイスボールの呪文を唱える。



「今度はもう少し大きくと」


再度、アイスボールを唱える。


20m 30m 40m  60m   80m     100m


となったところで慌てて塔へ目掛け投げつける。


ドン!


と言う音と共に塔がゆっくり向こう側へ倒れ、砕けた氷が城下に降り注いだ。


「ナイス、私!!」

と自画自賛すると、


「城下は水浸しじゃろうて。

 なら、雷撃の方が良いだろう。

 サンダーブレード!」


とフェネクシーは右人さし指を天をに向け唱えた。

おびただしい数の雷がウオレル城下を襲う。

城の中の様子は分からないが大多数が感電していると思われる。


「ライキンさん、突撃!!」

加奈が命令を下す。


「いいのか?行っても? 怒られないか?」


とライキンが加奈にお伺いを立てると黙って頷いた。


「うをーーーー! 突撃!!」

ライキンの雄たけびで獣人たちが一斉に城門を目指し突入を開始した。

ライキンの突破力は凄まじく高さ10mほど有りそうな門が体当たりした瞬間、砕け散った。


「うわ~ライキンさん、えげつない!

 あんなのに当たったら一溜まりもないわね~

 さすが、獣王ね」


「姫様、あんなの避ければ良いのですから、動いている敵には当たりません。物の数にもなりません」

ライキンには厳しいブラドーであった。


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