第152話 バ○の○カによる○○な作戦



ライキンに案内され町の中心にある唯一の石作りな大きな建物へ入った。

この建物だけは他の建物と比べ明らかに頑丈に出来ている。


特別な建物のはずなのだが中は調度品や高級そうな物は何一つ置かれていなかった。

特別な建物のはずなのだが獣人の子供たちも平気で出入りしている。

通路の左右には槍や剣、楯なども置かれている。


軍事拠点なのだろうが子供たちが出入りできるって・・・・・

と茜は疑問を感じながらライキンの後を付いていった。


ライキンは部屋の扉を開け中に入ると長テーブルと椅子が20脚ほど置かれていた。

長テーブルの左側には獣人、亜人たちが数人座っていた。

その中には先ほどの狼の獣人・ウルフェンもいた。

ウルフェンは長の席の一番近いところに座っていた。


ライキンが長テーブルの長の席に座ると

「適当に掛けてくれ」

と手で着席を促す。


茜たちの正面に座る獣人たちは明らかに不満・不審そうな顔をしていた。


「お前たち、今回の作戦には異世界人たちが協力してくれる事になった」


ライキンが言うとウルフェンが立ち上がり


「ライキン様!! 人間など信用できません!」


「そうです! こいつらを信用する事はで来ません」

「ライキン様! 再考を!!」


他の獣人たちも一斉に反対の声を上げた。


ライキンは獣人たちを手で制した。


「協力してい貰う事は決定事項だ。

 ウルフェンがやる事になっていたウオレル城下への陽動・襲撃をお願いしたい」


「そんな大事な作戦を任せられません! 

 私の部隊で陽動します!!」


ライキンはまた手でウルフェンの意見を遮った。


「やってもらえるか?異世界人」


「お城に行って暴れてくればいいの?」

と茜がライキンに尋ねると


「そうだ」

と言って頷く。


「私一人でいって来るわよ。危ない事は私がやるから」


「茜!! もう少し作戦を詳しく聞かないとダメでしょ!

 雑なんだから」


「私が姫様のお供を致します」

ブラドーが随伴を申し出た。


「ライキンさん、この作戦は何を目的としているのですか?」

加奈が手を挙げ質問をする。


「城を攻めることでウオレル前線部隊の注意を城へ向けさせ、あわよくば補給を妨害する。

 その間にウオレルの前線部隊に攻撃を加える」

と胸を張り『完璧な作戦』と言わんばかりであった。


「なるほど~~上手い作戦ね。ライキンさんやる~~」

と茜はライキンを誉めた。

その隣で加奈が顔を押さえた。そして首を振った。

そして、


「そんな雑な作戦があるわけ無いでしょ!」

バン!と机をたたきながら


「ねぇ~ライキンさん、いつもこんな雑な作戦で戦っていたの!?」


「そ、そうだ!! 獣人は正々堂々と真正面から戦うのだ!!」


「何言っているの!! 陽動とか言ってる時点で正々堂々もないでしょ!!

 まずは一番近くにいる敵を叩くのが普通でしょ!!

 そのために陽動を仕掛けるのは最前線にいる敵の部隊でしょ!!」


「な、何を言っているんだ!

 敵の本陣である城に陽動を掛けた方が動揺するだろ」


「そうかもしれないけど、ウオレル城下まで距離はどれくらいあるの?

 茜がいなかったらどうするつもりだったのよ!

 飛んでいける獣人の人たちでもいるの!?」


「そ、そうだ。ウルフェンたち狼族の足は最速だ!」


「こんな作戦ダメに決まっているでしょ!!

 地面走っていってどれくらい時間が掛かるのよ!


 それに部隊を分散させたらバラバラに攻撃されるでしょ!!

 最強の戦力の茜をそんな遠くに派遣するより真正面の敵にぶつけた方が良いに決まっているでしょ!」

と意見を述べるたびに机をばんばん叩く加奈であった。


「こ、こ、この女子も言うときは言うのじゃな~」

とフェネクシーは驚いた。


「小娘!ライキン様に失礼だぞ!!」

「無礼だぞ!」

他の住人たちが非難の声を上げる。


「失礼も無礼も無いじゃない!!

 ライキンさん、部下の命を大事にしないとダメでしょ!

 こんな作戦じゃ無駄死にを出すだけよ!!

 私のような素人でも分かることでしょ!!

 誰か良い作戦を立てる人はいないの?」


と立ち上がり机を叩く加奈に茜が恐る恐る見上げながら


「いっそのこと加奈が作戦立ててあげたら?」


「何言っているの茜!

 素人の私にそんなこと出きるわけ無いじゃ無い!!」


「未来のファイレル国宰相でしょ」


「何馬鹿なこと言っているの!!」


と素人以下の作戦会議中にネコの亜人が部屋に飛び込んできた。


「大変です、ウオレル軍が攻めてきました!!」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る