第153話  ウオレル軍! 強襲!!


「大変です、ウオレル軍が攻めてきました!!」


「何だと!」

とライキンは慌てて立ち上がる。


「敵さんも同じ事を考えていたようじゃな」

フェネクシーが答える。


「応戦するぞ! お前たちも力を貸してくれ!」


とライキンは茜を見て言う。

部屋にいた獣人たちは部屋を飛び出していった。


「私は行くけど加奈たちは残っていて。 行くわよ大魔王さん!」


「やっぱりワシも行くのじゃな」


「言いだしっぺでしょ」


茜、フェネクシー、ブラドーは部屋を飛び出すと飛空魔法でライキンたちの後を追った。



茜のスキルがライキンの居場所を教えてくれる。

ライキンたちは『北の森』を出て森の中を走って戦場へ向かっているようだ。

そのスピードは馬でも用意に追いつくことは出来ない速さだった。

しかも森の木々を縫うように、時々木を飛び越えてライキンたちの姿が見える。


「凄い速さね~ これじゃ人間なんか太刀打ちできないわね~

 でもウオレルに押されているんでしょ。何故?」


と空を飛びながらフェネクシーに聞くと


「先ほどの作戦会議でも分かるじゃろ。碌な考えもなしに突っ込んでいくことしかしないからの~

 命令は前進と後退の二つだけじゃ。あやつはそれくらい脳筋なんじゃよ」


「わ~~~バカ丸出し・・・・・・

 でも私も加奈に同じこと言われるからな~ ライキンさんのこと言えないわね」


茜はスピードを上げライキンたちを追い抜いた。


「向かっている前方に敵はいるのよね」


「多分、そうじゃろう」


さらに進むと開けた草原があり銀色に光る一団が布陣している。

どうやら獣人たちは森に陣取り、ウオレルは草原に布陣して森と草原の境目で戦いが行われているようだ。

獣人たちは木々を利用してウオレル騎士団の馬の突破力を弓による攻撃を防いでいる。

森の中に入ると馬の機動力を生かせないのでウオレルの騎士団は突入を躊躇しているようだった。


ウオレル騎士団もすぐに突破を諦め距離を取ると魔法部隊が前進して炎の魔法による攻撃が始った。

あちらこちらに火の玉が着弾すると見る見るうちに森が焼け始める。


「これは危ないわね~ ウオーターウェーブ!!」」

と茜は咄嗟に大量の水を空から降らせ延焼が広がるのを防いだ。


ライキンが前線に着くと


「突撃ーーーー!」


と大号令と共に獣人たちが特攻を開始した。


「バカな! ライキンは何を考えているのだ!」

ブラドーがあまりの無策に驚いた。


「やっぱりダメなパティーンなの? ブラドーさん」


「ろくな確認もせずに突撃をかけるなんて愚の骨頂です」




が、魔法部隊は、獣人たちの突撃に恐れ全力で後退をした。


「ハハハハハ!魔法使いなど恐れるにたらず!! 腕力こそが戦いを決する!! 進め~~!!」

ライキンの怒号が辺りに響く。


「ライキンさんたち、凄い! 一気に押せ押せムードじゃ無い」


獣人たちはスピードを上げ、魔法部隊に襲い掛かろうとしたとき!!



ボシュ

ボシュっ!


と地面の至るところに大きな穴が開き体格の良い大きな豹、トラ、熊などの獣人は落とし穴に落ち動けなくなってしまった。


さすが獣王と言うべきか、ライキンは落ちる寸前に避け転落を免れ、なおもライキンは突撃する。


魔道部隊と入れ替わるように方向転換を終えた騎士たちが一斉に穴に落ちた獣人襲い掛かる。

上から槍で突き刺し何人もの獣人が犠牲になっている。


孤立したライキンに弓が襲い掛かる。

ライキンに降り注ぐ矢が腕に刺さる。なおも降り注ぐ矢を払いのけながら突撃をする。

しかもたった一人で。


「ライキンさん、大丈夫なの?」


「大丈夫じゃろ」

と呑気にフェネクシーは答える。


「あやつも『獣王』と呼ばれる猛者。

 あれくらいで死んでいたら『獣王』なんぞやっていられんわ。

 それよりヤツの家来たちの方が心配じゃ」


と言うとフェネクシーは穴に落ちた獣人を助けるべく下に降りた。

茜もそれに従い地上に降りた。


茜はタナの剣を背中から取り外し横一閃に剣をなぎ払う。

カマイタチが獣人たちを襲っている騎士たちに命中すると騎士たちは吹き飛ばされていった。

そして俊足で移動し剣の刃ではなく腹で片っ端から騎士たちを殴り飛ばす。

その間にフェネクシーとブラドーは落とし穴に落ちた獣人たちを引っ張り上げ救い出す。


茜は50人くらい剣で殴り飛ばしたろうか。

それでもまだ、100人以上の騎士がいる。


「メンドーーー!! ファイヤーボール!!」


と左手を天に向けた呪文を唱えた。

砦を一撃で吹き飛ばしたファイヤーボールをイメージした。

明らかに巨大な火の玉が形成される。



「危ないぞー!」


「逃げろーー」


「巻き込まれる!!」


火の玉は尚も巨大になり、辺りにいる騎士、獣人ともに事の重大さに気がつき茜の周りから逃げ出していく。


「女子よ、大丈夫か! そのファイヤーボール、ちと不味いのではないか?」


「姫様、危険です!!」


「あ~~~ちょっと不味いパティ~~ン?」


茜はウオレルの方角へ巨大なファイヤーボールを投げた。

ファイヤーボールは遥か上空で爆発をする。


爆発後、熱を帯びた熱風が地面を襲う。

ウオレルの騎士団、魔法部隊は熱風で吹き飛ばされ散り散りに撤退を開始した。


「これで何とかなったじゃろ」


「姫様! ウオレルの部隊は撤退を開始しましたね」


「一件落着かな!?」


そこへ黒い塊が猛スピードで寄って来る。


「キャーーーーー!!ゴキーーーー!!!」


茜はタナの剣を抜き黒い物体を両断しようと振り下ろした。




スパッ!!


見事な真剣白刃取りが決まった。


「バカヤローーー!! 俺を殺す気か!!」


「ライキンさん?」


「そうだ、バカヤロー!!」


黒い物体は焼け焦げたライキンだった。

ライキンを良く見ると体には無数の矢が刺さっており立派な鬣は見るも無残に焼け焦げチリチリに。


「ライキンよ、矢の方は大丈夫なのか?」


「こんなもの何ともないわ!」

というと体全体に力を入れると刺さっていた矢が見る見るうちに抜け落ち、体についていた傷も見る見るうちに治っていく。


「ライキンさん、ごめんなさい。ヒール」


「あの魔法はお前が撃ったのか?」


「威嚇のために撃ったのよ。狙い通りいいアイデアでしょ」


「威嚇? 狙い通り? お前、本当か!!」



「本当よ!」



「本当なのか!」



「・・・・・・・・」





ライキンの真剣な眼に耐えられず目をそらす茜であった。


「この野郎~~~~~」


とライキンは握りこぶしに力を入れる。


「ライキンよ、女子のおかげでウオレルは撤退したのじゃから良しとするべきじゃな」


「奴らの攻撃より、小娘の魔法で死ぬかと思ったわい!!」


「ライキン! 姫様を小娘呼ばわりするとは! 口を慎め!!!」


「あぁ! ブラドー、いつからそんな軟弱に成ったんだ!」


「私は姫様を主とし忠誠を誓ったのだ。 

 姫様を侮辱するような言い方は許すわけにはいかぬ!!」


はいはい、と手を叩きながら


「ブラドーさんもライキンさんもつまらない事でケンカはしない!

 小娘呼ばわりされて怒る茜ちゃんではありませんよ」


「ライキン! 心の広い姫様に感謝しておくんだな」


「うるせ~~」



ドゴーーーーーーーーーーーーン!!


とその時、巨大な音が響き渡る


『北の森』の方角に稲光が降った。


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