第148話 アイアンクロー
ブラドーを助けた茜たちの下へウオレルの15人ほどの騎士たちがやって来た。
先頭の騎士が話しかけてきた。
「お前たち、何をしている!!
ここには吸血鬼を見せしめにしていたはずだが!」
と言うと茜たちを見やる。
「それは私のことか?」
とブラドーはみんなの前に立った。
「お、お前は死に損なっていたはずでは無いのか!」
「姫様に救われたのでな」
「お前たちは、この吸血鬼の仲間か! 捕らえろ!!」
と先頭の騎士が命令を下す。
「私はファイレルの王子、アルファだ!」
とアルファが前に出る。
「王子、これはどういうことですか?
我々が捕らえた魔王を解放するとは・・・・・ 我が国への敵対行動です。
王子と言えども見逃すわけには行きません。
捕らえよ!」
騎士たちは一斉に襲い掛かった。
「ちょ、ちょっと~~~」
茜は魔王より強い力を持っているのだが人間と戦った事は今までなかった。
自分の力を使うと言う事は相手の騎士を滅することになる。
人としてそれをする事は躊躇われる。
魔王やモンスターと対峙するのときは躊躇いなく剣を振るえる。魔法を使えるのだが・・・・・
茜は完全に後手に回った。
騎士が剣を振り下ろす。
辛うじてタナの剣を抜き剣を受け止める。
が、力や体力は人間を超えても剣技は一般人と変わらない。
ヒュン!
と騎士が風を切りながら剣を振るう。
ガキン!
騎士が振り下ろした剣にタナの剣が当たる。
完全に防戦一方。
特に最近はアイアンクローしか使っていない。
アイアンクローしか・・・・・アイアンクローしか。
シュピーン!!
閃いた。
相手が騎士だからと言って剣で対応しなくてもいいじゃない。
右手でタナの剣を持ち相手の剣を受ける。
左手で
「アイアンクロー!!」
と叫び相手の騎士の頭を兜ごとガシッと掴むとぺコンと兜が凹む。
「ウガーーー、いてーーー」
騎士が絶叫する。
掴んだ騎士を他に騎士たちに向かって投げつける。
ガシャン!
鎧と鎧がブチ当たる金属音がする。
詩織、加奈は最後尾に避難し何も出来ずにおろおろしているだけだった。
加奈も人間相手に魔法を撃つのを躊躇っているようだった。
アルファとお付きの騎士はさすが戦い慣れしており剣と剣を合わせ戦っている。
アルファの実力なら一刀両断することも不可能では無いがウオレルの騎士を殺めてしまう訳にはいかないので加減しながら剣を合わせている。
ブラドーは完全な状態ではないが、その辺の騎士などが相手になるはずなく軽くかわしていた。
織田も剣を抜きウオレルの騎士と戦っている。
意外な事に完全に圧倒している。
織田も今や勇者としてその辺にいる騎士など相手にならないレベルになっていた。
千代は流石に剣道の有段者だけあり臆することなく騎士と剣を合わせている。
全員が相手より強いのだがウオレルの騎士を殺す訳にはいかないので手加減していた。
「これじゃ、埒が明かないの~
ちょっとでかいファイヤーボール!」
とフェネクシーは言うと騎士たちの足元に撃ち敵味方の距離を取らせた。
距離が開いた瞬間に
「アースウォール!」
フェネクシーは高さ10mほど幅500mほどの土の壁を瞬時に魔法で作った。
「なんだ~これは~」
ウオレルの騎士たちが土の壁に驚いている。
「これで時間を稼ぐぞ。みんな逃げるんじゃ」
全員馬車、馬に乗りこの場を離れようとした。
が、茜はSky highの呪文で壁の上まで舞い上がり
「Light!」
と照明の魔法を壁の向こうにいるウオレル騎士たちに向けて撃った。
「うわ~~ 眩しい」
「目が、目が~~~!!」
「何も見えない!!」
壁の向こうから絶叫が聞こえる。
茜は走っている馬車の後から飛空魔法で飛び込んだ。
「茜ちゃん、性格悪い~~」
詩織が言うと。
「人聞き悪いわね~ これで、より時間を稼げたでしょ。
大魔王さん、凄いわね~ ああいう魔法の使い方も出来るのね」
「年の功じゃよ」
茜は思った。
『私に人を斬ることが出来るのだろうか』
と・・・・・・・
遠距離からの魔法なら人間にも撃てるかもしれない。
でも、殺意を向けて斬りかかってきたとしても人間を斬るなんて・・・・・
私には・・・・・
怖い・・・・・助けて、お兄ちゃん。
私の力を全力でタナの剣に乗せれば剣ごと、鎧ごと人を斬ってしまうだろう。
そんな事はしたくは無い。
剣の腕があれば相手をいなす事も出来るだろう・・・・・・
剣の腕があれば・・・・・
「・・・・・・・あ~~~~!!忘れてた!!
私、剣のスキルとかも持っているじゃない!!」
といきなり大声を出し頭を抱えた。
女神から多くの魔法スキルを貰った弊害なのだろうか?
多くの物を貰うと探すことが大変になる。
それに結局のところ、最も使う物で済ましてしまう。
「白田、お前はアイアンクローしか使わないから・・・・・
持っていても無駄なんじゃね。
アイアンクローで全てを解決させてるだろ」
といきなり頭を抱えた茜に訳も分からず織田は言うのであった。
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