第147話 他世界召喚者


「茜ちゃ~~ん、大丈夫~~」

「茜様~~!」


ブラドーを助けた茜たちの下へ馬に跨ったアルファがやって来た。

その後には詩織が乗っている。


「詩織、大丈夫だぞ! ブラドーさんも大丈夫だ!」


詩織は馬から降りブラドーの元へ向かった。


「良かった~ ブラドーさん、ヒール掛けておきますね。ヒール。

 どこか痛むところはありますか?」



「ありがとうございます。左胸の辺りがまだ傷みます」


詩織はブラドーの左胸に手を当てて、ゆっくり何度もヒールを唱えた。


「茜様、大丈夫ですか?」


「大丈夫、大丈夫。ブラドーさんも無事に救出することが出来たわ。

 よくこの場所が分かったわね~」


「こちらの方向から何かが凄い勢いで飛んできたのですよ。

 そんな事を出来るのは茜様以外いないだろうと思いまして」


「あ~~~~あれね」


「あれは何だったのですか?」


「異世界からの召喚者よ。どうも私たちとは違う世界からみたい」


「茜様たちと違う世界ですか・・・・・」


「いけ好かないガキで口の利き方が成っていなかったからお仕置きしておいたけど、ブラドーさんに対する仕打ちを考えると残忍な性格をしていそうよ。

 気をつけたほうが良いかも」


そこへ千代たちを乗せた馬車がやってきた。

御者台から織田と千代、フェネクシーが降り、織田と千代は茜のところへ、フェネクシーはブラドーのところへ歩み寄った。


「白田、何か分からないがこの辺りから凄い勢いで飛んできたぞ」


「あっ、あれはウオレルの異世界召喚者。肌の色が水色だったわよ。

 私たちとは違う世界みたい」


「マジかよ! 水色の肌ってなんか気持ち悪りーな」


「しつけの成っていないクソガキだったからお仕置きしておいたわ」


「何にせよ、ブラドーさんを救出できて何よりね」

と千代が言う。



「ブラドー、お主、大丈夫か?

 お主ほどの者が後れを取るとはウオレルの召喚者たちも侮れないな」


「老人、そなたはフェネクシーか!?」


「そうじゃよ。ワシじゃ」


「ナマケモノよりその姿のほうが似合っているな。大魔王に相応しい格好かもしれん」

一呼吸置いてブラドーは続けた。


「ウオレルの召喚者たちはカミラーズ人と言うそうだ。

 やたらと好戦的で残虐な性格をしておりプライドが高い。

 姫様とは大違いだ」


「姫様って誰じゃ?」


「茜様のことだ」


「何じゃお主!いつから姫様呼ばわりしているのじゃ」


「ついさっきからだ。命を助けていただき血まで分けてくださった。

 私の今後の人生は姫様を主君として仰ぎ仕えることにした」


「なんじゃ、それは。お主、吸血鬼じゃろ。血を吸ったお主が眷属になってどうするんじゃ」


「今まで飲んだ血の中で最も洗練され麗しい血で私が虜になってしまった」


「お主な~・・・・・まぁ、ワシも分からんでもないが。

 あの女子の負の感情は今まで味わった中でも格別な美味じゃからな~」


「ちょっと、そこの2人。私は肴に変なこと言うのは止めてよ~

 なんか私が危ない人みたいじゃない」


茜の言葉を聞いた織田は思った。


いや、どう考えてもお前は危ない人だよ!と。


が、口にするとアイアンクローが飛んでくるのが分かっているので口には出さなかった。



「ところでカミラーズ人たちはどんな戦い方をしたのじゃ。

 お主ほどの手練れがやられるとなると警戒しないわけにはいかんからの~」


「奴らは5人組で男3人、女1人、子供1人。

 中肉中背でガッシリしている奴が他の連中に命令をしていたのでリーダーだろう。

 全員、魔法より肉弾戦を得意としているようだ。

 見たことのない魔剣、聖剣の類を持っていた。

 斬られた瞬間、生命力や魔力を吸い取られてしまい為す術なく取り押さえられた。

 あいつらは危険だ。

 私をすぐに殺すことが出来たにもかかわらず嬲り殺しにするような事を平気で行う残虐性を持っているから気をつけたほうが良い」


「聖剣か、やっかいじゃの~」


「茜ちゃんのタナ様の剣があれば大丈夫なんじゃないですか? 大魔王さん」

と詩織が訊ねる。


「相手は5人いるのじゃよ。一人ずつ相手にするのなら問題ないじゃろうが、いくら女子でも一度に5人は厳しいじゃろ」


「大魔王さんは戦ってくれないのですか?」


「ワシは痛いのはあまり好かんのでな~」


「女神様と戦ったと聞きましたけど」


「昔はな……今は、寝ていたいのじゃよ」


「大魔王さん、お願いです。力を貸してください」

と詩織は胸の前に両手を握りお祈りのポーズをしながら上目遣いでフェネクシーを見つめた。


「分かった、分かった。ワシも協力する」


悪魔をも落とす詩織の必殺技であった。


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