第149話 護送
ウオレル騎士との戦いを避けた茜たちはとりあえず北へと向かった。
フェネクシーの意を汲んで茜たちは北の森へ行く事になったのだが、そこにアルファたちファイレル国の人間がいるとウオレルとの軋轢が表面化する恐れがあり、ファイレル国王グレーコにも事の顛末を報告する義務もあるので加奈はアルファには帰国を提案しアルファも受け入れここで分かれる事になった。
安全を考えてウオレルの勢力が弱まる西へ迂回し国へ戻る事にした。
北の森が近づくに従い戦いの後と思われる荒地や焼けた木々が目立つようになる。
人目を避けるように林や森を進むと10人ほどの亜人たちを引き連れ護送しているウオレルの騎士団に遭遇する。
亜人たちは一様に項垂れ戦いに敗れた様子が見て取れる。
獣人、エルフ、ドワーフと思われる背の低い種族も見受けられる。
「大魔王さん、あの亜人の人たち、どうなるの?」
「護送しているところを見ると奴隷にするのじゃろうな」
「嫌な感じね。助けに行きましょうか」
「女子、簡単に言うがウオレル国と敵対するということじゃぞ。良いのか?」
「だって、このまま見過ごす方がもっと不愉快な気分になるじゃない。
宰相・加奈はどうした方がいい?」
「え?いきなり私に振らないでよ・・・・どうしたらと言われても・・・・
私もウオレル国とは仲良くやっていけそうにないし・・・・茜は助けたいんでしょ。
なら、一つしかないわね」
と加奈が言い終わらないうちに茜は飛び出しウオレルの騎士にLightの魔法を打ち込んだ。
「眩しい!!」
「敵襲だ!!」
と騎士たちが言い終わらないうちに茜は5人ほどの騎士をタナの剣の腹の部分で殴り飛ばし失神させた。
残った騎士たちは剣を構えたが目が眩んでいるのであらぬ方向へ剣を構えている。
「逃げろ~」
と背の高いエルフが叫ぶ。
犬なのか狼なのか分からない獣人が鎖を引き千切り、他の仲間の鎖を引き千切る。
捕らわれた亜人たちは雲の子を散らすようにあっという間に森へ消え去った。
その間に茜は残りの騎士たちを殴り飛ばし片っ端から気絶させる。
「貴様ら、亜人に味方するとはどこの者だ!」
騎士の一人が逃げそびれた猫のような獣人の首に短刀を突きつけ人質に取りながら叫ぶ。
その騎士は茜のLightの魔法を逃れたのかスキルを持っているのか通じなかったようだ。
「大人しくしないと、コイツを殺すぞ!」
猫のような獣人は腕からは血が流れており苦悶の表情をする。
茜は両手を挙げ降伏のポーズを取った。
「お前の剣をこっちへ投げろ!他の奴らも武器を足元へ捨てろ!
茜はタナの剣を放り投げた。
ズン!
と軽く地響きを轟かせ騎士が目をタナの剣に移した瞬間、ブラドーはウオレル騎士の背後に回り首を斬った。
血しぶきを吹き上げ騎士は絶命した。
あまりの早業に誰も声が出ない状態だった。
「ブラドーさん、何も・・・・・・・」
と茜は途中で話すのを止めた。
「女子よ。ブラドーが代わりに手を汚したんじゃ。
そなたでは人を殺めることは出来なかっただろ」
「姫様の意は存じ上げておりますが、この亜人の生存を最優先にさせていただきました」
と跪きながらブラドーは答えた。
「そうね。私では・・・・・・私だったら躊躇して失敗して亜人さんも助けられなかったかもしれない」
と茜はポツリと言うのであった。
「ヒール! 大丈夫ですか?ネコの亜人さん」
詩織がヒールを掛け近寄る。
「あ、あ、ありがとう。なぜ、人間が私たちを助ける。俺を騙そうとしているのか?」
若い猫の亜人は礼を言うが凄く警戒をしていた。
「だって、私たちはあなたに恨みなんてないから」
と茜が答えると顔には?の文字が浮かんでいた。
「私たちは異世界からの召喚者なんですよ。だからネコさんに恨みや憎しみなんてないですから。ヒール」
詩織は安心させるように優しい声で話し再度ヒールを掛けた。
「俺たちは異世界からの召喚者と戦っていたんだぞ!
多くの物がお前たちの仲間にやられたんだぞ!!」
「ひょっとすると水色の肌の人たち?」
「そうだ。あの残虐な奴らだ。お前たちも仲間なんだろ!!」
「違うわよ! あんなクソガキどもと一緒にしないでくれる。
私たちはもっと穏やかな世界から召喚されてきたのよ。
大魔王フェネクシーさんがあなたのところの親分を助けたいというから、やって来たの!!
だから案内してよ」
「騙されんぞ!フェネクシーのような大魔王がお前たちと一緒にいるわけないだろう」
「猫族よ、ワシがフェネクシーじゃて」
とフェネクシーは前に出てくるが
「人間のジジーじゃねーか!俺を謀るのか!!」
「仕方がないのー」
と
「なんだよ、ジジーがナマケモノに変身したからって大魔王とは限らないだろう!
第一に大魔王の姿なんて殆ど知られてないんだよ!
だから、大魔王といわれても分からん!!」
茜と加奈はジト目で蔑むようにナマケモノを見た。
「あ~~軽蔑の眼差し!! う~~ん、これも美味!」
「じいさん、ヒキコモリ過ぎなんじゃないか? 大魔王と言われている割にはマイナー過ぎじゃね!?」
と織田は情け容赦のないツッコミを入れた。
「・・・・・・そ、そうかも知れん」
と膝から崩れ落ちたフェネクシーであった。
「なら、私は知っているか? 強欲の魔王・ジルド・ブラドーと言えばそこそこ名は通っていると思うのだが」
とネコの亜人の後ろから語りかけるのであった。。
「おお、ブラドー卿ではないですか。数年前、北の森の採掘場に来たので覚えています」
と振り向き後ろに立っていたブラドーを見た。
「あの時は世話になった。あの採掘場は良い鉱石が取れるからな」
「ダイヤモンドもある?」
「茜! 強奪するんじゃないわよ!」
と茜が欲の皮を張って会話に参入しようとするが加奈に注意されるのであった。
すったもんだの挙句、猫の亜人を馬車に乗せ北の森へ向かう事になった。
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