第142話 見よ! ワシの偉大な力を!
ウオレルへは茜、アルファ、加奈、詩織、千代、織田、フェネクシー、お付きの騎士が二人で行く事になり旅立つのであった。
その馬車の中、フェネクシーは隅でイビキをかきながら寝転がっている。
「本当にこれで大魔王なのかよ?」
織田が聞くと
「女神様と壮絶な戦いをしたらしいわよ」
と詩織が答える。
「メチャクチャ強いみたいだぞ。このおじいちゃん。悪魔族の長のような者らしいから」
千代が答える。
「そんな強い悪魔と一緒で大丈夫なのかよ。俺たちも強くなったとはいえ、そんなレベルの悪魔と戦う事になったら俺は逃げるからな」
「大魔王さん、人がいい悪魔だと思うわよ。人間界のために結界張ってくれてるみたいだから」
と詩織が言う。
「早川、人がいい悪魔ってなんか言葉がおかしいぞ」
「安心しろ。加奈が大魔王さんに茜とどっちが強いのかと聞いたらしいんだけど、茜には絶対に勝てないような事を言っていたぞ。
なんでもロゼのローブを着ている限りダメージを与えられないと。
タナの剣に斬られると一撃で深刻なダメージを受けるそうだよ。
それにHP,MPも高いし自動回復するみたいだから勝てる見込みは無いって言っていたぞ」
と千代は話しながら馬車の外で馬に乗る加奈、加奈の後ろに掴まっている茜を見やった。
「あのさぁ~ 人間も魔王になっちゃうんだろう。
俺・・・・・・・一番怖いのは白田が魔王になることだと思うんだけど・・・・・
あいつが魔王になったら誰も止められないだろ」
「織田君、それは大丈夫よ。茜ちゃんはお兄ちゃんに会いたいだけだから」
「もしだよ、もし。そのお兄さんが誰かに殺されたりしたら白田のことだから相手を絶対許さないだろう。
その怒りで魔王化したらと思うと俺、怖すぎてさぁ~
白田には何度も助けて貰ったからそんなBad endは見たくないし・・・・・
俺が勇者と言っても役立たずだろ・・・・・
俺に止めろとか言わないでくれよ」
自分の無能さを自覚している織田であった。
「それなら大丈夫じゃろ」
といきなりフェネクシーが起き上がった。
「あぁ~じいさん、狸寝入りかよ! 汚ねーな」
「うん? 今起きたとこじゃ。ワシの悪口でも言っておったのかな?」
「いや~~そんなことは無いけどな~」
と織田はフェネクシーと目を合わせずに答えた。
「安心せい、あの
そんな心の弱い奴に女神もあんなに巨大な力を与えんじゃろ。
それにタナ様の剣、ロゼ様のローブが護ってくれるじゃろ」
「とは言うけど、じいさん!白田の奴、女神様を脅して力を貰ったんだぜ。
剣やローブだって与えられたんじゃないぜ、強奪だぞ、強奪!!」
「それ、本当なのか?」
とフェネクシーが聞くと3人は黙って頷いた。
「・・・・・・多分。大丈夫じゃろ。あの女神の人選なら・・・・・多分」
「頼りねーな、じいさん!本当に悪魔族最強の大魔王なのか? あまり強そうには見えないし」
「ほう~~若者よ、ワシを疑うのじゃな! ワシの実力をその目で見てみるか!
良かろう。その目でしかと確かめよ!!
見よ!!ワシの偉大な力を!!」
とフェネクシーはパシッと自分の膝を叩き立ち上がった。
「いや、いい。すまん。俺が悪かった」
と織田が詫びを入れる間もなくフェネクシーは馬車の中で魔法を唱えるのであった。
一瞬、体が黒い霧に包まれると巨大な双丘を誇る裸体の詩織に変化した。
3人は一瞬あっけに取られ目の前で起こった事を理解できなかった。
え?
うん?
何??
「きゃー、止めて何しているんですか大魔王さん」
詩織も馬車の中で立ち上がりフェネクシーと織田の間に割り込み自分の裸体を守った。
「う~~ん、美味じゃの~ 勇者の一瞬の恐怖、聖女の恥じらい。異世界からきた人間の感情は格別じゃ。満足じゃ」
「大魔王さん、止めてください。私、恥ずかしくて死んじゃいます」
詩織は涙目になっていた。
「大魔王様!!ご馳走様でした。ありがとうございます。一生付いていきます!」
と、跪き拝み倒す織田であった。
「偉大な力じゃろ!」
「はい、左様です。次は白田と松平もお願いします」
とフェネクシーを拝む織田だった。
「ちょっと、おじいさん! 私の裸体に
「こうか?」
と言うと今度は千代の裸体に変化した。
「きゃーーー、止めて!!」
今度は千代がフェネクシーと織田の間に割り込んだ。
「う~~~ん。美味じゃ!」
「フェネクシー様。ありがとうございます。偉大な魔王様」
と織田はフェネクシーを拝んだ。
加奈の馬の後ろに乗っていた茜が馬車の中の騒ぎに振り向き
「何やってんの?」
と馬車に飛び移った。
「次は白田を」
「良かろう」
と今度は裸体の茜に変化する。
「うを~~~素晴らしい、魔法です。フェネクシー様!!」
「素晴らしいじゃろ」
と織田とフェネクシーが言うと茜はすかさず無言で二人にアイアンクローを噛ました。
右に織田、左にフェネクシーを掴み持ち上げるのであった。
「うがーーーーー!」
「痛い、痛い、痛い」
ピキピキと頭蓋骨がきしむ音が聞こえる。
「止めろーー止めてくれ」
「悪かった、ワシが調子に乗りすぎた。すまん」
と茜は手を離すと
「前にも言ったろ!ゴメンで済めば警察は要らないって!!
あぁ!分かってるんだろうな!!
次やったら頭蓋骨握りつぶすからな!!
あぁ! 返事は!!」
「は、はい」
「ハイ!!」
フェネクシーと織田は頭を押さえながら正座をし返事をした。
茜は加奈の後ろへと戻っていった。
「痛い、痛い」
と織田は頭を押さえながらうずくまっていると
「ヒール、ヒール、ヒール」
詩織が織田とフェネクシーにヒールを掛ける。
「もう、二人ともダメですよ。こんなイタズラをしたら。
私も恥ずかしくて死んじゃいます」
「詩織、こんな奴らにヒールなんてかけなくてもいいんだぞ!」
と千代が言う。
「聖女よ、すまんな。回復はいらないと言っておいて。
でもな。あの女子の負の感情は今までに味わったことがないほどの美味なのじゃ。
この感情さえあればワシは後千年、生きていけるのじゃ」
とフェネクシーは恍惚とした表情を浮かべていた。
「気持ち悪いぞ、このじいさん! ただのヘンタイだ!」
と冷たく言い放つ千代であった。
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