第140話 ペット
女神は空へ消えていった。
「なんかいきなり来て、いきなり帰っていったわね。まだ聞きたいことがあったのだけど」
と茜が言うと
「あやつは昔から勝手な奴でな。昔から協調性が無いのだよ。
だからボッチなんだよ」
とフェネクシーが答える。
「このネックレスは茜に渡すわ」
と言って加奈は手渡そうとする。
「それは加奈が持っていて。女神様が加奈に渡したのだから加奈が持っているべきよ」
「でも私より茜が持っているほうが役に立つでしょ」
「うんうん」
と首を振りながら
「やっぱり加奈に持っていて欲しい。私一人じゃ何も出来ないから・・・・加奈にそばにいて欲しい」
「そちが持っていたほうがいいんじゃないか? あの女神は意味の無い事はしないからの~
そなたに持たせたということは何か意味があるのじゃろう」
とフェネクシーは正座しながら二人を見上げながら言った。
「分かったわ。私が持っている。必ず碧さんたちを探しましょうね」
と首に掛けヒシッと両手でネックレスを握り締めた。
「じゃ、これで一件落着じゃの」
とフェネクシーはようやく正座から解放され立ち上がった。
パンパンと膝についた砂を掃うと
「ワシはまた寝るんでな」
「ちょっと待って」
と石棺の方へ歩いていこうとするフェネクシーの手を茜が引っ張り呼び止めた。
「ここの結界はあなたが近くにいないとダメなの?」
「いや、そんな事は無い。一度張れば破壊されない限り問題ない。
この結界を破壊できる者などそう多くは無いがな」
「すご~~~い。さすが最高の魔王と言われるだけあるわね。かっこいい。
その辺にいる魔王とはレベルが違うのね。素敵!! お兄ちゃんの次に素敵だわ」
と茜は手を叩きながらフェネクシーを賞賛した。
「お、そなた力だけではないの~~ワシの凄さが分かるのか。
うんうん、さすが名無しの女神が見込んだ事はあるの~」
「そこはかとなく高貴なオーラも溢れているわね。さすが大魔王さまよね~」
と加奈に振る瞳は同意を求めていた。。
「そ、そ、そうね~ 凄いわね・・・・・・」
加奈は何がどうなっているのか良く分からない状態で相槌を打った。
「分かるか! 分かるか! うんうん、そなた!見る目があるの~」
と言って頷き
「じゃからもう用件はすんだじゃろ。そなた達も帰るが良かろう。ワシは寝るんでな」
と茜は石棺へ戻ろうとするフェネクシーの襟首を掴んだ。
「決めた! 大魔王さんを連れて行く!」
とニンマリ笑って言うのであった。
「な、な、何を言っておるんじゃ。ワシは関係ないじゃろ」
「あ、あ、茜! 何言っているの? 魔王よ、魔王!」
「そうじゃ、ワシを連れて行っても碌な事にならんぞ。対立を生むだけじゃぞ。考え直すのじゃ」
「大魔王さんの知識は有益じゃない。女神様とはもう会え無さそうだから一緒にいてもらったほうがいいんじゃない?
良いアイデアだと思うのよね~」
「ワシにとっては良いアイデアじゃないぞ。拒否権は無いのか? ワシは寝ていたいのじゃ!」
「あるわけ無いじゃん!! ニートみたいなこと言ってないでキリッと働く!! 主に私のために!! 逃がさないわよ」
と右手でフェネクシーの襟を掴みながら左手に加奈を抱え詩織たちの元へ戻った。
「茜ちゃんたちが戻ってきたわよ」
最初に気が付いたのは詩織だった。
詩織は館の方を常に心配で気にかけていた。
「なんかぶら下げているけど?」
「何でしょうか?」
「お土産じゃね?」
「ただいま~~みんな。戻ってきました~」
茜がニッコリ微笑みながら言うと
「白田、なに?この変な生き物?」
織田が聞いてくると
「あ~これ、私の子分と言うかペット。悪魔の大魔王フェネクシーよ」
「え!茜ちゃん・・・・・」
「茜、何言っているんだ?」
「あ、あ、茜様!!」
詩織、千代、アルファはただ驚き。
「白田、お前、何連れて来るんだよ~元のところへ返して来い」
織田は大魔王を物扱いするのであった。
「ほら、みんなドン引きじゃろ。普通はこういう反応じゃ。
悪魔王と旅をするなんて考える者はお主だけじゃぞ!」
「まぁ~いいじゃない。最悪、この大魔王さんをプスっと
ね!大魔王さん」
と悪魔さえも引きつる笑顔を見せる茜であった。
「お主、それはあんまりじゃろう。ワシは寝ていたいのに無理やり連れ出して・・・・酷いの~」
茜、加奈はフェネクシーのボヤキを無視してアルファとウインレルの騎士たちと今後の事を話し始めた。
大魔王のそばに詩織がやって来た。
「大魔王さん、よろしくお願いします」
と頭を下げた。
「しっかりしているお嬢さんじゃの。こちらこそよろしく頼む」
「安心してくださいね。茜ちゃんはあんなこと言っているけどゲートなんかにしませんから。
あぁ言う冗談をよく言うのですよ」
「恐ろしい冗談じゃの~ そなたはワシが怖くは無いのか?」
「茜ちゃんが子分とか言って信頼しているみたいなので怖くはないですよ」
「ワシは子分にもペットにもなった記憶はないのだが・・・・」
「私、これでも聖女なので怪我したら言ってくださいね。ヒールをお掛けしますから。
あっ! 悪魔はヒール掛けても大丈夫なのですか?」
「問題ない。そうそう世話になることは無いと思うが、もしもの時はよろしく頼む」
とフェネクシーは頭を下げるのであった。
茜たちの話し合いの結果、ウインレルの城に戻り経過を話した後、ファイレルに戻る事になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます