第139話 女神様・・・
「茜」
と加奈は近寄り崩れ落ちた茜を抱きしめた。
「大丈夫よ、大丈夫。一度ゲートを使って元の世界へ戻ればいいのよ。そして、またこの世界へ来ましょう。
居場所が分かったのだから碧さんを助けるだけでしょ。こんなことで挫けるなんて茜らしくないわよ。
さぁ、立ち上がりましょう」
と加奈は立ち上がり茜の手を引っ張るのであった。
立ち上がってもなお茜は暗い顔をしている。
「問題はどうやって、ハルフェルナに来るかよね。帰るのはゲートを使えば何とかなると思うのだけど」
と言うと加奈はチラッとフェネクシーの方を見やった。
ギクッ!
「ちょっと
とフェネクシーは恐る恐る加奈に聞くと女神が話に割り込んでくる。
「それは素晴らしいアイデアです。こんな老害の悪魔なんかさっさと殺しちゃってゲートにした方がハルフェルナのためです」
と名無しの女神は手を叩いて喜んだ。
「お前、この流れでそういうこと言うか?」
「老害は邪魔になるだけです!!」
ウウン!
加奈は咳払いをすると
「大魔王さんがいなくなると結界が亡くなって人類に危険が及ぶんでしょ。それは出来ないと思うわ」
「大丈夫です。私がもっと強い結界を掛けておきますから」
「へーさすが女神様ね」
とチラッとフェネクシーのほうを見る。
「ちょ、ちょっと待つのじゃ。こやつの結界は強すぎて悪魔が死んでしまうのじゃ!!」
「あ~ら、悪魔なんて滅びた方がハルフェルナのためですよ。人間に寄生しているくせに態度MAXですから」
「お、お、お前、タナ様、ロゼ様の直系の神とは思えない暴言じゃな。あのお二人はこれ以上の争いを否定なさったじゃろうが。忘れたのか」
「はいはい、お二人ともその辺でお止めください。これ以上グダグダ言っていると、また茜がキレてアイアンクローが飛んできますよ」
とパンパンと手を打ちながら加奈が言うと女神とフェネクシーは姿勢を正し正座をしなおした。
「魔王って沢山いるものなの?」
「欲望がある限り魔王は必ず生まれますからね。
このフェネクシーのような無害、人間に好意的な魔王は少数ですので心置きなく倒してください」
「では、帰りのゲートは心配ないと思っておいて良いのかな。問題はこちらの世界に来る時よね。
召喚待ちしていたら何時になるか分からないし私たちが召喚されるとは限らないし・・・・・何か良い方法は無いでしょうか?」
しばらく無言の時が流れた。
「・・・・・・・・・・では、これをお渡しします」
と女神は立ち上がり首につけていたネックレスを外し加奈に渡した。
ネックレスは二重になっており内側のネックレスの先端には赤い色の宝石のようなもの、
外側のネックレスには青色の宝石のようなもが付いていた。
加奈は受け取ると直感的に先端に付いている赤と青の石は宝石ではなく魔石だろうと思った。
「これは?」
「召喚のネックレスです。これがあれば皆さんの世界からハルフェルナに来ることが出来ます。
帰る事は出来ませんが何度でも何人でも来る事は出来ます」
「女神よ、それを渡していいのか?」
とフェネクシーが言うと女神は頷いた。
「もう召喚するのは茜さんたちで最後にしておきます。
勇者を何人召喚しても人類は同じ過ちを繰り返すだけでしたから。
魔王の脅威が迫ると異世界から勇者を召喚し、脅威が過ぎ去れば人間同士で争う。
これを永遠と繰り返していきました。
私の存在自体が諸悪の根源かもしれません。
私の力の殆どを茜さんに与えてしまいましたし・・・・・・
もう女神の仕事は終わりにした方が良いかと・・・・・・・」
一呼吸あけて女神は言った。
「もう疲れてしまいました」
と。
「考え直せ。この世界はお前を必要としているだろ。
他の女神どもはまだ世界を任せることが出来るほどの力、知識は持っていないだろう。
今居る神が必ずしも正義と言うわけでは無いじゃろ。 考え直すのじゃ!」
フェネクシーが慌てて翻意させようと説得した。
「ちょっと、私が呆けている間に深刻な話はしないでよ。なんか責任感じちゃうんですけど」
茜が話に加わった。
「最後の召喚者が茜さんたちで良かったのかもしれません」
と少し寂しそうに女神がつぶやいた。
「女神様、このネックレスで碧さんたちを召喚させていたと言うこと?」
「そうです。そのネックレスがあれば自らの意思でハルフェルナに来ることができます。
ただ、時間だけは指定できませんので何年後、何百年後になるのかは分かりません。
これを使って碧さんの時代に辿り着いてください。
碧さんたちはハルフェルナの最後の時代にいます。
何度か行き来しているうちに必ず辿りつけます。
私もその時代で待っています。その時代で。
茜さんの時代に戻ったらタナ様、ロゼ様によろしくお伝えください」
と女神は言うと空へゆっくりと舞い上がった。
「ちょっと待ってよ。まだ聞きたいことがあるんだから~~~~」
女神は優しい微笑を浮かべ茜を見つめながら消えていった。
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