第131話 強欲の魔王・ジルド・ブラドー
茜は一人先に着くと10mを超える化け物が背中を向けていた。
「ヒルって見たことないけど・・・・・あれが魔王なのね。シャクトリムシ?ミミズ? 何か気持ち悪いわね~
ハルフェルナの魔王ってこんなのばっかね。あまり近づきたくないわね」
背中を向けている巨大生物はの魔王はもう一人の空を飛んでいる魔王にファイヤーボールを一方的に喰らっている状態だった。
魔法が当たるたびに
「きえ~~~きえ~~~」
と叫び声とも悲鳴ともつかない声を上げる。
もう一人の魔王は銀髪のオールバックに黒い服、黒いマントを羽織っていた。
「あ~~~これ、メアリーと同じパティーン?」
色欲の魔王メアリークィーンと遭遇したときを思い出す茜であった。
あの時メアリーは新しい武器を新調するために薔薇の魔王を狩っていた。
今回も同じなのだろうか?
「あの~銀髪のお兄さん! 何しているんですか?お手伝いは必要ですか?」
と大声で叫ぶ。
銀髪の男は茜の声に気がついた。
「いや、けっこう。私一人で片付ける」
と手を振りながら答えた。
茜は一人と一匹が真横からよく見える位置に移動して近くにあった岩に腰掛けた。
その距離30mと離れていないだろう。
巨大なモンスターは叫び声を上げながら口から鋭く尖った舌のようなものを銀髪の男めがけ突き刺す。
ヒュッ!
ヒュッ!
と空気を切り裂く音が聞こえる速さだ。
男はギリギリでかわすがその避け方には余裕が感じられる。
明らかに大きな一匹の魔王を見下している様子が伺えた。
「余裕そうですね。お兄さん」
「あぁ、この程度のヒルくらい私の相手にはならんよ」
「あぁ~この魔王、やっぱりヒルなんだ。ミミズにしか見えないわ」
男はファイヤーボールとフレイムランスを交互に出しヒルの魔王のHPを体を削っていく。
虚空からサーベルを取り出し構えるとヒルの魔王は先ほどの鋭い舌を男めがけ突き刺す。
ヒュッ!
と音が聞こえた瞬間
パシュン!
キシェーーーーー!
ヒルの魔王は舌を切り落とされ血が噴出し叫び声をあげた。
「まさか、あの舌で武器を作ったりはしなわよね~」
「ハハハハ、勘弁してくれ。私も遠慮しておくよ」
銀髪の男は余裕を見せ付けるように笑いながら言った。
「キシェーーーー!!」
とヒルの魔王が大きな口を開けた瞬間
「ファイヤーボール!」
を叩き込み
「ヘルフレイム!」
と地獄の業火をヒルの魔王に浴びせるのであった。
ヒルの魔王は炎に包まれ絶命した。
そこには赤色の魔王石が落ちていた。
「茜~~~!」
「茜様!!」
そこへ馬に乗った加奈とアルファがやって来た。
「ご無事ですか?茜様」
「大丈夫、大丈夫。見学していただけだから」
茜は岩から降り銀髪の男に声を掛けた。
「私は白田 茜。異世界からの召喚者よ。あなた何者? 魔王だと思うけど、何してたの?」
と銀髪の男に声を掛ける。
銀髪の男は赤い魔王石を拾いながら答えた。
「ほ~異世界からの召喚者か。
私はジルド・ブラドー 吸血鬼だ。
強欲の魔王と呼ばれている。
このナイフを完成させるためにヒルの魔王を探していた」
と言うと胸のポケットからナイフを取り出し、拾い上げたヒルの魔王石を握りつぶし降りかけた。
ナイフはまばゆい光を放ち粉々になった魔王石を吸収した。
「吸血鬼と言う事は人間の敵なのね」
と茜は尋ねた。
「人間はすぐ敵味方で判断しようとする。くだらないな。
そして、敵はすべて抹殺すると」
「ブラドー、あなたは人間の血を吸うんでしょ。吸った者を下僕にして悪い事をしているんじゃないの?」
「確かに人間の血は吸う。が、下僕など不要だ。私は一人で好きなことをして生きる。
このナイフだって私の趣味で作ったものだ。そう趣味に生きるのだ。
生きていくために最低限の人間の血は貰うが強制的に下僕にした者は一人もいない。
血を頂くのも合意の上だ」
「あなたは好んで人と争う気はないのね」
「ない。人類を敵に回して私に得は無い。人間が全滅すれば私も死ぬ事になるのだからな。
まぁ~家畜の血でも生きていけるが人間の上質な血の方が好みでな。
今さら牛、豚の血を吸ってまで生きていたくわない」
「メアリー・クィーンを知っている?」
「無論、サキュバスの女王だ」
「え?アイツ女王なの?」
「サキュバス王家の女王だよ。彼女の下には数百のサキュバスが従っている。
メアリーが女王についたときの儀式にも出席した」
その話を聞いたとき加奈はぎょっとした顔をした。
そんな偉い女王様の胸を鷲掴みにして引き千切るって脅迫する茜って・・・・
と心の中で思った。
「ちょっと教えて欲しいのだけど、ゲートってあるじゃない。あれ何人まで一度で運べるの?」
「ゲートによってだな。高位のゲートは一度に2,30人運べるが使い捨てのゲートは5人までと言われている」
「言われている?」
「そう。言われている。私は一人旅しかしないのでな」
「ブラドー、あなたも何度か使ったことあるの?」
「大陸の西から東など行くときくらいだがね」
とニヒルに笑ってブラドーは答えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます