第122話 歓談




普通、国王と他国の王子、しかも皇太子が歓談の間で会談をすると言う事は考えにくいことだろう。

が、ウインレル王・エドワード5世は堅苦しい事を嫌う性格であった。

皇太子だったころは騎士団長を勤め父王エドワード4世の武を補佐していていた。

ファイレルのグレーコが『白銀』と言う異名を持つようにエドワード5世は『黄金』と言われハルフェルナに武勇を轟かしていた。

騎士団の遠征などのとき、皇太子だからといって特別なテントなどではなく部下と同じテントで寝泊りをし、場合によってはその辺で雑魚寝もいとわないワイルドな性格の王子だった。

父王から治世を継いだときも、しばらくそのクセが抜けずに宰相・レイランから幾度と無く怒られていた。


レイラン曰く


「エドワード5世陛下は王としての威厳が無さ過ぎる!  王が王でなくては国は成り立ちません!」

と何度怒られたことだろうか。


城下など平気な顔をして出歩くのが日課となっている。

誰もが王と分かっているのだが、国民からはけして声を掛ける事はない。

これが王の楽しみ&視察と言う事を誰もが知っているからだ。

タレイランは暗殺の心配をするのだが、エドワードを傷つける者など、この世にそう多くは無い。

万が一のことがあっても王が逃げる間、国民が身を挺して守るであろう。

それほど、エドワード5世は国民に愛されている王であった。。


歓談の間には10mくらいの長い机があり、

上座にエドワードが座り、左側に上座からアルファ、茜、加奈、千代、織田、詩織の順番で座った。

右側にはアリア第一王女、レイラン、騎士団長らしき男、文官らしき男が数名着座した。

机には紅茶らしき物と葡萄ともブルーベリーとも思える果物が置かれていた。


「王子、よく来てくれた。

 ファイレル国の魔王討伐、余も嬉しく思う。これでファイレル王国の民たちも枕を高くして眠れることだろ」


「ありがとうございます。陛下」


「余も嬉しくての。息子になる王子が魔王討伐の英雄!!自分のことのように嬉しく思う。

 余も何度か魔王に挑んでみたが一度たりとも魔王を討伐することが敵わなかった」


「いえ、陛下、私の力ではございません。ここにいる異世界からの召喚者のおかげでございます。

 この者らがファイレルにいる5人の魔王を討伐したのでございます」


「正直だの王子は。臣下の手柄は王の手柄。もっと誇っても良い」


「この者たちは家臣ではありませんゆえ、誇ることなど出来ません」


「そうか、遠慮深いの~

その者たちを紹介してくれぬか」

エドワードは茜たちに目をやる。


「こちらが茜様です。彼女一人でほぼすべての魔王を倒しくださいました」

茜は立ち上がり礼をした。


ウインレル王国の者たち全員が驚きの表情をした。

特に騎士団長らしき男は一瞬、立ち上がろうとしたが思いとどまった。


「な、な、なんと。一人でか!」


「はい、相違ございません」


「いえ、王様、違います。私一人の力では無くみんなの力です。王子様を含めみんなが居たから成しえる事が出来ました」


「慎み深いお方よの~」


その後、加奈たちの紹介が続き最後に織田が紹介された。


「彼が勇者・織田殿でございます。4人の魔王を封印してもらいました」


「そうか、勇者か・・・・・

 実は我が国でも異世界から勇者の召喚の準備をしているのじゃ。

 近いうちに執り行なう予定でな」


「王様! ご無礼お許しください」

加奈が王と王子の会話に割り込んだ。


「ぶれ!」

とレイランが言おうとしたときエドワードが手で遮った。


「続けたまえ」


「エドワード陛下、ありがとうございます。 

 異世界から召喚するのに1000人の犠牲が必要と聞きました。

 私たちはその話を聞いたときショックを受けました。

 異世界から勇者を召喚するということはウインレルも魔王の侵略を受けていると思います。

 私たちが新たに召喚される者に変わりお力添えをさせて頂きたいと思っております。

 これ以上の犠牲は私たちも見たくはありません。

 ご再考していただけませんか?」


「加奈殿・・・・・」

アルファもウインレルの魔王討伐をしてもらいたいと思っていたが言い出せずにいた。

幾ら茜が強いとはいえ自分の国だけではなく他の国の魔王まで退治をお願いできるほどアルファの神経は図太くなかった。


「宜しいのですか?」

とアルファはみなに聞くと織田以外は全員頷いた。


「余の国の民の命が救われる。ありがたい。召喚者の諸君、力添え感謝する」

エドワード王は椅子から立ち上がり茜や加奈、一人一人と握手を交わした。


「王様、お聞きしたいことがあります。白田 碧という少年を知りませんか? 私の兄です。

 クラス全員35人召喚されました」

と茜が言う。


さ、さ、さ、35人!!

35人と申すか!

35人だと


ウインレル国の人間がざわめく。


「35人など召喚できる国はありませんぞ! そんなことしたら国が滅びてしまう!」

レイランはあまりの話に立ち上がりながら言った。


「大国と言われるウインレル、ファイレル、ウオレルでさえ10万人いませんぞ。3500人も犠牲に出来ない」

レイランは半切れぎみに言った。


「では、ウオレルが召喚したのかな~・・・・・」


「可能性は無いとは言えないが35人も召喚するとは考えにくい。

 ウオレル国王が望んでもニッケルメッヒなら反対するだろう。

 35人も召喚しても全員が戦えるとは限らないので有効な事とは思えんぞ」

レイランが答えた。


「そうなのですか・・・ウオレルに行ってみるしかないかな。

 あぁ、じゃ、お兄ちゃんの情報などが手に入ったら教えてください」

と茜はしょんぼりするのであった。



その後、魔王について知りえた情報をエドワードたちにウインレルに提供した。


魔王を人間が倒すことが出来る。

魔王が死ぬとゲートが出来る。



など、一夜にして魔王に対する認識が変わる事になったウインレル王国だった。

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