第123話 アインマッスルとレイラン


その後も歓談は続きアルファとアリア王女の仲睦まじい姿を見ることが出来た。


「王子もまんざらじゃないようね。最初は訳有りなのかと思ったけど。いい感じの恋人同士ね」


「私も最初はいやいやかと思っていたわ。マストンさんが絡んでいたから政略結婚かと思っていたわよ」

茜と加奈が話しているとエドワード王が二人の間に割って入り顔を出しながら話し始めた。


「茜殿に加奈殿、よろしく頼みますぞ」


茜と加奈は慌てて立ち上がろうとしたがエドワードが手で押さえた。


「そのままで良い。

 余も若い頃、魔王に幾度と無く挑んだが倒すどころか尻尾を巻いて逃げ帰ってきたのじゃ。

 とてもではないが我々の敵う相手では無かったのじゃ。

 今のファイレイル王、グレーコとも一緒に戦列を並べたこともあった。

 が、一度足りとも倒すことは敵わなかった。

 お願いじゃ、勇者・茜殿、賢者・加奈殿、お二人に力を是非貸して頂きたい」

とエドワードは頭を下げた。


「王様、頭をお上げください。私たちは出来る限りの事をさせて頂きます」

加奈は慌てて言った。


「王様、私は兄を探し出すまで、こちらの世界に残ります。帰る時は兄と一緒に帰ります。

 それまでは、この世界の人たちのために力になりたいと思っています」


「茜殿、加奈殿、ハルフェルナをよろしく頼みます」

とエドワードは二人の手を握った。


「王様、私は勇者じゃありませんよ。普通の女子高生ですよ」

「私も賢者ではなく魔法使いですよ」


「あぁ そうだったたな。失礼、失礼」

とエドワード王は詩織と千代、織田の方へ歩いていった。


その後、そこへエドワード王の近くに座っていた騎士がやって来た。


「私は騎士団長のアインマッスルです。 今は王の警護をしております」


アインマッスルはエドワード5世が騎士団長をしていたときの副団長であった。

エドワードが騎士団にいたときから片腕と言われるくらい信頼されていた。

エドワードが国王になったときに騎士団長に任命した。

性格も一本気でウインレル王国の武を代表する人物である。

謀略・詐術を厭わないレイランとは水と油な性格なのだがレイランの策に批判的な意を唱えた事は無かった。

年齢差もあるのだが前国王のときから宰相として国に仕えており武を代表するアインマッスルといえども格が違っており反目する事は無くレイランの言動は常に国王・国のための言動だということを心得ていた。


「茜殿のお持ちのタナ様の剣を見せて頂きたのですが宜しいでしょうか?」

武を代表するだけあって『タナの剣』の話を聞いたときから実物を見てくて仕方ないアインマッスルであった。


「あぁ、それなら部屋の外に置いてきました。見に行きます?」


「是非、お願いします」

と言いうと部屋の外へ出て行くのであった。

部屋の外には警護の騎士が居るのだが全員が床に置いてあるタナの剣を触ったり、ピストル、マシンガンを触ろうとしていた。


「こら、お前たち、何をしておるか!馬鹿者! アルファ王子のご友人の所有物を勝手に触るとは何事だ!」


「あ~~騎士団長、珍しいものですから触りたくなりますよ。

私だって珍しいものを見たら触りたくなりますから。気にしていませんよ」


「この馬鹿者共! 茜殿に感謝しろ!」

と怒鳴り騎士たちを怒鳴りつけた。


「これがタナの剣です。触ってみてください」


「お~~透き通っている剣なんて信じられませんね。美しい大剣だ」

見れば見るほど吸い込まれる美しさ。

何かが宿っていると直感的に思うアインマッスルであった。


とアインマッスルは透き通った紺色の大剣を持とうとするがどれだけ力を入れようが、どれだけ踏ん張ろうが持ち上げることが出来なかった。


「なんですか!この重さは!! 茜殿は持てるのですか?」

と言うと茜はアインマッスルの前でひょいと持ち上げてみた。


「おおお!! 神剣と言われているので『持ち主以外は所持を拒む』と言うことでしょうか?」


「え、そうじゃないと思います。私、力持ちなんですよ。ステータスMAXなので。

 それに私は剣に認められた持ち主ではありません。

 力ずくで抜いたというか周りの石を削って取り出しただけです」


「え!!そんなこと可能なのですか?」


「と言うか・・・・現に力技で使ってるので」


「さすが勇者様ですな~」


「私、勇者ではなく普通の女子高生です」


「あ~そうでしたな。こちらの2つは?」

とアインマッスルはピストルとマシンガンを指した。


「これは私たちの世界で『銃器』といわれている物で危険な物です」


「触っても宜しいでしょうか?」


「私と兄以外は触れませんよ。試してみてください」


と、アインマッスルは持とうとしたが手が素通りしてしまう。


「こ、これは面妖な!」


「女神様の力で私とお兄ちゃん以外は触れないようになっているの」


「な、な、なんと!女神様のお力は偉大ですな」





と茜とアインマッスルの会話が弾んでいるとき歓談の間では加奈とレイランが話しをしていた。


「賢者・加奈殿」


「これはレイラン宰相閣下」

と加奈は立ち上がり丁寧に頭を下げた。


「私は賢者では無いですよ。魔法使いですから」


「あ~そうでしたな。それでは知者・加奈殿とお呼びした方が良いですかな?」


「私ごときが知者など笑われてしまいますよ。知者と言うのはマストンさんやレイラン宰相閣下のような方にこそ二つ名が相応しいと思います」


「いやいや、小耳に挟んだのですが加奈殿がベルファ王子の元へ嫁入りしてファイレルの宰相になると言う話を聞きましたが」

その話を聞くや否、ギョッとした顔をした。


「そのような話、今、初めて聞きました。異世界の人間が歴史あるファイレルの王子と結婚なんて国民が納得しませんよ」


加奈は思った。

このじいさん、私たちを警戒していると。

友好国だといっても間者の一人、二人は居るだろう。

レイランの目的は何なんだろうか?


「そうですか? 魔王討伐の英雄の一人なら国民も歓迎するのでは?」


何を聞きたいのだろうか?

王子との結婚なんてありえない。

こっちはダミーだ。

本命は宰相の方か?

宰相もありえない・・・・・

それとも・・・・


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