第118話 明石、帰還



茜たちはウインレルへ向かった。

途中、明石を日本へ送るためにゴキングの成れの果てであるゲートに寄った。

あの激闘から5日、城のあったところにゲートがポツンと残っていた。


「良かった、ちゃんと残ってるいるわね。さぁ、明石、この中に入りなさいよ」


「えっ?いきなり?」


と明石が答えた。


「このゲートってどう使えばいいの?」


と茜が聞くと全員が????と言う顔をした。


「あ~~~、メアリーに教えてもらえば良かった。ちゃんと聞くんだった」

と茜はおっちゃん臭く顔を押さえた。


「あの状況では頭が回らないわよね。茜ちゃん」


「とりあえず扉を開いて。魔王石を前に置いてみたらどう?」

と加奈の言うとおり茜は魔王石を虚空から取り出し置いてみた。


・・・・・・・・


しばらく時間が経過したが何も変わらなかった。


「投げ込んでみたらどうかな?茜ちゃん」

詩織に言われ扉の中央にある小さい虹色の部分をめがけ投げ込んでみた。

すると小さい虹色は大きくなり扉のサイズまで広がった。


「こうするのね! 明石、気をつけて帰ってね」


「日本に戻ったら事情を説明しておくよ、みんな元気だと。でも信じてもらえるかな?」


「明石、これを持って行きなよ」

と茜は虚空からコブシ大の金の塊を取り出し手渡した。

ハルフェルナは砂金のような小さいサイズではなくコブシ大のサイズで手に入るため現代より手に入りやすかった。


「このサイズの金塊があれば信じてもらえると思う」

茜は明石に金塊を手渡した。


「これ売ってもいい?」

と明石は耳元で茜に話した。


「私も日本に戻ったら売りまくる」

と悪の微笑みをしながらヒソヒソ話をするのであった。


「じゃ、みんな申し訳ない、俺は役立たずだから先に帰ってみんなの事を報告しておくよ」


「ちゃんと日本をイメージするのよ」


「分かったよ、白田」

と手を振ってゲートの中に入っていった。

明石が入ると虹色の光は小さくなり、また点のようになった。

そして、ゲートは光ったかと思うと消えてしまった。


「行っちゃったね。無事に着いてくれるといいんだけどね」


「もし、明石に何かあったらメアリーのデカ乳を引き千切ってやるから」




その後、国境を越えウインレル王国へ入国したのであった。



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ウインレル王国は常に国の西側にあるラスビア渓谷から風が吹いてくる。

渓谷に住む『怠惰の悪魔王・フェネクシーの寝息』と言われている。


そこへ100人ほどの騎士を連れた馬車がやって来た。

騎士は全員、青い鎧を装備して一糸乱れぬ統率が取れている。

茜がタナの剣を出そうとしたとき


「彼らは大丈夫ですよ。ウインレルの青騎士団です」

とアルファが手で制した。


一人の騎士がアルファの前に寄って来て馬から降り傅いた。


「これはアルファ王子、遠路はるばる起こし頂きありがとうございます。

 グレーコ2世陛下より早馬で書状を賜っております。

 お迎えにあがりました」


とそこへ馬車が止まり一人の美しい女性が降りてきた。

ストレートの銀髪ロングヘア。

いかにもお淑やかな雰囲気。

降りるしぐさも流麗で上品。


「アルファ様。お久しゅうございます」


「これは、アリア第一王女殿下。お迎えありがとうございます。

 王女殿下がわざわざ出迎えに来なくても・・・・・」


「いえ、アルファ王太子殿下がいらっしゃると聞いていてもたってもいられなくなり、私のわがままでお出迎えにあがりました」


と言うとアルファを馬車の中に招きいれようとした。


「鎧姿の者が姫様の乗る馬車に同乗するのは失礼きわまります。

私の馬は私以外に乗られるのを嫌がりますので申し訳ございません」


「そうですか」

と残念そうにアリア王女は馬車に戻っていった。


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