第117話 ファイレル城にて
その後、ファイレルの城に戻った茜たち一行はグレーコ2世に魔王討伐の報告をした。
ゴキブリの魔王・ゴキングを退治に成功した話は衝撃的なものであった。
ゲートの話、魔王の中で人間の好意的な者がいることなど驚愕的な話であった。
功績として全員に戦功勲章・白銀という最高位の勲章を全員が授かった。
ほとんど役立たずの男子にも。
この勲章も茜の力で9割獲得したようなものであった。
この白銀というのはグレーコ2世が若い頃、呼ばれていた二つ名であり、その二つ名から取られたものであった。
アルファも当然、受賞することになり茜に深く感謝をしたのであった。
国民はアルファを称えた。
「勇気ある偉大な王子」
「救国の英雄王子」
アルファは気恥ずかしいだけだった。
自分は何もしていない。
茜様のおかげだ。
だが素直に嬉しかった。
幾度と無く魔王に苦杯を舐めさせられていたアルファにとって魔王を討伐できたことが素直に嬉しかった。
自分の王子として、騎士としての誇りより国民を苦しめていた厄際を祓うことが出来たことが嬉しかった。
ファイレル王国を救うために働けたことが嬉しかった。
茜には特別にファイレル国から初めてSSランク・冒険者としても表彰された。
受賞後、茜は一言
「・・・・・・・でも、無職なのよね」
と。
叙勲式の後、茜たちは今後どうするのか話し合いをすることになった。
一つ目は、ゲートを使って日本へ戻るか?
二つ目は、次はどの国へ行けば良いか?
まず一つ目だが、茜は日本へ戻る気はさらさら無い。
兄の碧を探してから帰るので戻る選択肢は無かった。
「私はハルフェルナに残るから」
と加奈が言う。
「私も茜ちゃんと一緒に帰る」
と詩織も言う。
「私も残る」
と千代も続いた。
「みんな無理してない?」
茜が3人に聞くと
「碧さんが心配だから」
「碧さんにはお世話になっているから」
「私は則之さんが心配」
と詩織、加奈、千代が答えた。
「私も残る。将太君が気になるから」
と理紗も続いた。
「僕も残る。僕も最後でいいよ」
と平内が言う。
「平内、無理しない方がいいんじゃないか?」
「白田さん、僕、何も役に立っていないから、この世界で人助けの一つくらいしてからでないと帰れないよ」
「平内、お前、いい奴だな~」
と茜が平内の肩を叩く。
「茜ちゃん、にぶすぎる」
と詩織はつぶやくのであった。
平内を除く男子は帰る気満々だった。
「織田、お前は勇者なんだから封印の作業があるだろ、残りなさいよ!!」
と茜が言うと。
「白田が魔王を全員倒せばいいじゃん。別に封印する必要は無いんじゃないか?」
確かにそうなのだ。
役立たずの織田がいなくても問題は何一つ無い。
そこへ詩織が手を上げて
「あの~、メアリーさんが戻れると言っていたけど複数人が戻れるの?一人だけ?」
「しまった、それを聞いていなかった!!」
と茜が顔に手をやった。
誰もがコイツ、親父臭いしぐさをすると思うのであった。
「そこまで考えが及ばなかったわね。確証をえるまでゲートを使うのは止めておいたほうが良いかも?」
加奈が慎重論を唱える。
「一人は確実に戻れるのよね。もう、私たちがこっちへ来て2週間以上経過しているわよ。
日本も大騒ぎになっていると思うの。
確実に帰れる一人を日本へ送り返して事情を説明した方がいいんじゃないかしら」
詩織が堅実な提案をした。
「じゃ~ 俺が日本に戻ってみんなに知らせ・・・・・」
と織田が言い終わらないうちに茜がアイアンクローを噛ませ
「お前は9番目だ!! 私と一緒に日本に帰るんだよ!!」
と。
「私は桃花に戻ってもらいたいと思うのだけど。
僧侶だし・・・・自分で身を守るのは難しいと思う。
なにより私が巻き込んでしまったように思うの・・・・・」
と申し訳無さそうに茜が答えた。
「私は回復が出来るからみんなの役に立つと思うの・・・・・」
「桃花、遠慮するな」
「ううん、やっぱり残る」
と首を振りながら言った。
「だから、俺が日本に戻るから」
と織田が言った瞬間、
「お前だけは無い!!」
とアイアンクローが飛んできた。
話し合いの末、明石が戻る事になった。
二つ目は明石を送る足で西側に隣接しているウインレルへ向かうことにした。
ウインレルへは茜、加奈、詩織、織田、王子とお付の騎士二人で向かう事にした。
ファイレルとウインレルはとても親密な友好国で交易や交流が盛んに行われている。
ゴキングが乗っ取った城も有事の際の防衛拠点であるのが近年は交易の中継地点としての意味合いが強かった。
子爵の懐も潤っていたようだ。
そして、この城にはファイレル西側領地とウインレルに何かあったときのための援助物資の集積地でもあった。
そのためにゴキングに狙われたのかもしれない。
そして、ウインレルにはアルファの婚約者・聖女アリア・ウインレル第一王女がいる。
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