第105話 カルピナ山


カルピナ山に近づくにつれ気温が上がっていく。

なぜファイレル王国がこんなにも熱いのか?

なぜカルピナ山から離れたところまで熱いのか?

それはイフリートが呪いをかけたせいだと言われている。

イフリートは火の魔王だけあって低温より高熱を好むのだ。

自分が活動しやすいように国全体に呪いを掛けたと言われている。


誰もがジリジリと汗をかき不快指数は上がっていくのだが馬車の中だけは外よりも気温が低くというか冷風が吹いている。

理沙が氷魔法と風魔法を組み合わせ簡易クーラーの役目をしているからだ。

最初に茜が試してみようとしたのだが加奈に止められてしまった。

もし茜が試していたら今回の討伐部隊はイフリートとの戦いの前に終わっていたかもしれない。


通過する村は王子たち一行を歓迎してくれるのだがどこも水不足で井戸や溜池が干上がっており深刻な水不足に悩まされていた。


「はいはい、私の出番ですよ~~~」

手を上空に挙げ


「アイスボール!!」


と呪文を唱え溜池や湖に100mサイズの氷河をジャンジャン投げ入れまくった。

投げ入れたときの地響きと共に氷河による冷風が辺りを覆う。


「これで少し気温も下がるわな」


「茜様、ありがとうございます。これでこの村の民たちも救われます」

王子が頭を下げると村の者も茜の周りに群がり礼を言う。


「茜様、ありがとうございます」

「村が救われます」

「これで農業が再開できます」


「あ、いいから、いいから、礼は王子さんに言って、王子様がいたから私はここに来たのだから。

 それから白田 碧というかっこいい少年を知りませんか?異世界人ですけど」


村人たちは

知ってるか?

異世界人なんて見たことないな

誰か聞いたヤツいる?


誰も知らないようだった。

茜もダメもとで聞いてみただけなので期待はしていなかった。


「もし、この村に訪れたら大変かもしれませんが王都まで連絡をお願いします」

と頭を下げた。


「あああああ、茜様、頭をお上げください。その者が村を訪れた必ず連絡させて頂きます」

と年配の村長らしき人が返答してくれた。



^-^-^-^-^-^-^-^-^-^-^-^



カルピナ山へ到着し馬車から降りると


「うわ~暑いわね~」


と言っても茜は顔以外はそんなに熱くは無い。

ロゼのローブがあまりにも熱い外気を遮断しているからだ。

当然、冷気も遮断する。

騎士団もみんな鎧を脱いで上半身裸になっている。

それを見た女子たちはみんな顔を背け赤い顔をしていた。

その女子たちも上に来ているものを脱ぎ茜以外の全員は薄手のシャツ一枚になっている。


山には洞穴がありそこから地下へ行くようになっている。


「昨年、来たときと変わっていませんね。

 中は下りの坂になっており密閉されているので熱さが倍化しています。

 討伐部隊は全員が脱水症状になり戦うどころの話ではありませんでした。

 準備不足でした」

と悔しそうにアルファが答えた。


「どうしたらいいのかな? 加奈と理紗に冷風を出してもらって突入する?

 それとも私と織田だけで特攻する?」


「お、お、俺と白田だけは止めようぜ。俺、生きて帰れそうに無いから」


「根性無しが! ちょっと偵察にいってくるわね。すぐ戻ってくるから、みんな待っていてね」


「待って、茜ちゃん。私も行く」

「私も」

と詩織と加奈も二人の後を追った。

二人は思った。

偵察だろうが何だろうが茜を一人にしてはいけない。

茜を一人にすると碌なことにならない事を知っていた。

アルファも慌てて3人の後を追った。


通路は広く直径4mほどはありそうだ。

100mほど進むと入り口からの光はまったく届かず先が見えなくなった。


「何も見えないわね。 Right!」

と呪文を唱えた瞬間!


ドン!

ドン!!

ドン!!!

ドドン!


と全員が通路の右側にぶっ飛び押し付けられた。


「痛い、痛い、痛い!! 茜、何してるの」


「いたたたた、Rightの呪文を唱えたのよ」


「ちょ、ちょ、ちょッと待てスペルが違うんじゃないか!

 LとRを間違えて唱えたろ」


「へ?」


「解除、しなさいよ、早く。潰れちゃうから!!」


茜は魔法を解除した。


「ホント、茜はバカなんだから。

学年でもベスト10に入ってるのに何でバカなのよ!!

 中学生でも間違えないわよ!!」


「ご、ご、ごめんなさい」


王子は体に付いた土をはたきながら


「大丈夫です。さぁ~行きましょう」


と爽やかな笑みを振りまきながら言ったのであった。


それを見た加奈は、この王子様、只者では無いと思うのであった。



「・・・・・・・・じゃ、暗いから光の呪文を唱えるから・・・・・」

と声が小さくなっていく茜。


「茜! 次は間違えないで唱えるのよ! Lightよ!Light! Lよ、L!!」



深呼吸を一度して茜は呪文を唱えた。


「Light!」




「ぐは~~~眩しい!!」

「目が目が!!」

「何も見えな~~い」


茜の手の平に人間サイズの巨大な光の玉が出現したのであった。


「ばかーーーー! 茜、何やってるのよ!」


「だって、だって、こんなに大きくなるなんて思ってなかったから・・・・」


「加減しなさいって言ったでしょうが!!」


いつものように加奈に怒られる茜であった。




「王子!! 何事ですか!!」

「敵襲ですか!!」

「王子の前へ!!」

と騎士団員が50人ほど突入してきた。


「あ~~騎士団のみなさん、ごめんなさい。うちの茜がまたバカをやっちゃっただけですから。大丈夫ですよ」


「ごめんなさい。ごめんなさい」

と茜は突入してきた騎士団に頭を下げ詫びた。


「大丈夫だ。心配するな。お前たちは地上に戻れ」


騎士団を安心させ地上へ戻すのであった。

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