第106話 イフリート封印


なおも下り坂を降りると気温も上がる。

今や70度くらいあるのではないか。


「これ以上、下に行くのは危険じゃない? 加奈、戻ろうよ」


「以前はここまで熱くなかったのですが・・・・

 イフリートが力をつけたということかもしれません」


「え、それはヤバイじゃない。早くしないとイフリートがもっと強くなっちゃう」

茜は心配するのであった。




シュピーン!! 



 

茜は閃いた。


「この中に大量の水を入れるのってどう?」


「へっ?水?」


「そうよ加奈。大量の水を流し込んでイフリートを冷やすのよ。上手くいけば溺死したりして」


「王子、どうなんですか?」


「大量の水はどうするんですか?加奈さん」


「え?それは茜の無駄な魔力を使って、この穴に流し込めば」


「うん、良いかも知れませんね。茜様、やっていただけますか?」


「はい、試してみましょう」


4人は来た通路を戻り外へ出た。

外で待機していたメンバーにその旨を伝え、祠の入り口に茜だけが残り退避してもらった。


目を閉じ一度深呼吸した後、呪文を唱えた。


「ウォーターウエイブ!!」



ゴボーーーー!!


と爆音を上げながら茜の手からおびただしい量の水が噴射される。

噴射される水の直径は祠の入り口サイズもあり水流があまりに強いため入り口が徐々に抜けずれていく。

何トンの水が放水されたであろうか?

5分10分経っても何も変わらず加奈とアルファが茜の隣にやって来た。


「茜、どう?」


「う~~ん、何も変化無いのよね。失敗かもしれない。どうする?止めたほうがいいかな?」


と茜が加奈に意見を求めたその時、グラグラグラと地面が揺れゴゴゴゴゴーと何かが避けるような音が聞こえてきた。


「何だ、この揺れは」

アルファが茜の顔を見る。


「地震? 水で地面が落盤したのかな?」

茜が加奈に聞く。


「ち、ち、違う。爆発による揺れだ!逃げよう」

加奈が切羽詰った声で叫ぶ。


茜はとっさに加奈とアルファを抱えSky highの呪文を唱え急遽空に飛びあがった。


グラグラグラグラ

ドッカーーーーン!!


カルピナ山が噴火した。

カルピナ山は火山ではなく普通の山だ。

山頂が吹っ飛び出てきたのは大量の水蒸気と熱湯だった。


「水蒸気爆発!」

と加奈は言うと魔法障壁を張った。


「え?なにそれ?」


「授業で習ったじゃないか。火山のマグマが膨張して地下水などの水源に触れると水が一気に気化して爆発を起こすって。

 今回はマグマではなくイフリートだと思うけど」


「みんなは大丈夫かな?」


「詩織たちが魔法障壁を張っていたから熱湯くらい大丈夫じゃない?」


そしてカルピナ山の方から詩織たちのいる方向へ人型をした何かが飛んいった。

そして、魔法障壁に激突し地面に落ちた。


「イフリート?」

茜はスピードを上げ詩織たちのほうへ向かった。



「イフリートです!」

と王子が叫んだがイフリートはぴくぴく痙攣している。


到着すると茜は剣を抜き構えた。

が、どう見ても息も絶え絶えの状態が見て取れる。


「織田!、早く封印だ」

加奈が叫ぶと織田は詩織や理沙の後ろからのっそりと現れた。


「な~大丈夫だろうな。白田、コイツ危なくない?」


「大丈夫だ。多分、何でもいいから早く封印しろ!勇者の責務を果たせ」


「多分って・・・・」


「早くしろ、織田!倒れている今がチャンスだろ」

あまりにもトロ臭い織田に加奈も怒鳴った。

織田はしぶしぶ前に出てきてへっぴり腰で封印の呪文を唱えた。


「勇者・織田が命じる!魔王・イフリートを封印せよ!!」


織田の手が光、イフリートへを照らす。

するとイフリートの体は小さくなり、やがて赤く笑った表情の仮面になった。


「封印することが出来たよ」


織田は大仕事が終わったという表情をしながら額の汗を拭った。


「王子様、これでいいの?」


「これで封印されたと思います」


「王子様もよく分からないのですか?」


「私も魔王を封印されたところを見たわけでは無いですから」


「ということだそうだ。織田!お疲れ!!さすが、勇者だ!かっこいいぞ」

と茜は織田の肩を叩いた。


「お、おう、これからも、俺に任せておけ!!」


クラスメイトたちは思った。


お前、何もしていないじゃないか!と。


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