第104話 出発


イフリート討伐の日がやって来た。

茜を初め召喚者10人。

アルファを筆頭にアルファ直轄の騎士たち100名で討伐部隊が組織された。

討伐部隊の雄姿を見ようと多くの者が見送りに集まった。

その中にはグレーコ2世、宰相マストンは勿論、第二王子のベルファもいた。


「可愛い~~ お姉さん、かまって上げたくなっちゃう」


「ショタコン、キモ~~~」


「煩いわね。ブラコンに言われたくは無いわ!!」


「ショータはいいのね。ベルファ王子に鞍替えするのね、この尻軽女は」


「将太君は別よ!!」



茜と理紗の口げんかをしているとベルファ王子がアルファの元へ寄ってきて。


「兄上、お気をつけて。あまり無理をなさらないでください。

 兄上にもしものことがあったら、この国は大変な事に成ります。

 けして、危険な事はしないでください。

 旅の無事をお祈りしています」


ベルファは14歳になったばかりなのだが理紗がキャーキャー言うのも分かるような可愛い美少年ショタコンキラーだった。

兄のアルファは武門に優れ、弟ベルファは学問に優れており、ベルファは兄が王位に付いたとき影から支えるのが夢なのだ。


「ベルファ、私に何かあってもお前がいる限りファイレル国は安泰だ。

 行ってくる!!」


「兄上、けして、けして無理はしないでください。

 どうか騎士団並びに異世界からの召喚者のみなさん、兄をよろしくお願いします。

 旅の無事をお祈りしております」


と言って茜たちに頭を下げるのであった。

そして、一行は城下を出発した。


馬に乗ったアルファの元へ馬の乗った加奈がやって来た。

実は加奈はこう見えても良いところのお嬢様で乗馬なども巧みにこなせるのだ。

召喚された中で唯一騎乗ができた。

茜も試してみたのだが馬に乗るとあまりの恐怖のためか馬は暴れるどころか一歩も動くことが出来なかったのだ。


「良い弟君ですね。アルファ王子」


「私なんかより弟が次期王になったほうが国民も喜ぶと思っています」


「そんなことないんじゃないのですか。アルファ王子より強い騎士はそう多くは無いでしょ。国の強さの象徴じゃないですか」


「王が強いことより民が幸せのほうがもっと価値がありますよ。

 ベルファはあの年で様々な政に参加しているのですよ。

 私があの年のころは剣を振る事しか考えていませんでしたからね」


「良いお兄さんですね。私は一人っ子だから羨ましいですわ」

と加奈は答え碧を思い出していた。

加奈にとって兄弟と言って想像するのは碧と茜であった。

色々茜には問題があるが・・・・いや、問題しか無いが二人のお互いを思う気持ちは美しいと思っている。

茜の事を『ブラコン!』と言って注意するが私のほうが実は『ブラコン』なのかもしれない。




その頃、馬車の中では


「平内、はい!」

と言って茜がドーナツ型クッションを平内に渡していた。


「あ、あ、ありがとう。白田さん」

と赤くなっている平内であった。


「それは試作品みたいな物だからダメなところがあったら言ってね。改良するから」


「い、い、いいよ。悪いから」


「悪くないわよ。 

『困っている人がいたら助ける!!』

 これ、お兄ちゃんの格言だから」


「あ、ありがとう」


「ひゅ~~ひゅ~~~、お兄ちゃんはいいのかな?」

茜がキッ!!と茶化した織田を睨む。


「茜ちゃんは器用よね~ ドーナツ型のクッションだって簡単に作っちゃうんだもん」


「茜はいいお嫁さんになるよな」


「さすが、詩織に千代!分かってるじゃない~~い」


「白田って料理や掃除も得意なんだろう・・・・・で、美人といえば美人なんだけど・・・・・

 何か恋愛対象にならないんだよな」


「うん、美人なんだよな。確かに。でも・・・・・ダメなんだよな」



「藤吉!明石!、それは誉めているのか?ケンカを売っているのか? どっち?」


「けして、ケンカなど売っておりませんから」

「右に倣って」

と背筋を伸ばし答えた藤吉と明石であった。


「お前たちが職業取ったから私は無職になっちゃったじゃないか!!  もう、恥ずかしい」


「いや、白田、お前、職業なんて関係ないじゃないか!」


「そう、織田のいうとおり」


「藤吉、『封印』が使えるのは勇者だけだから。

 私が勇者を取っていれば、みんなはお城でのんびり出来たでしょ。

 みんなを巻き込むことも無かったのに。

 織田ーーーー!お前が諸悪の根源だ!!」


「え~~~~~!」


「お前だけは死ぬほどこき使うからな!

 他のみんなが討伐にに参加しなくてもお前だけは首に縄をつけても連れて行くからな!

 美人で良妻賢母な私と一緒で嬉しいだろ!」

ニヤリと茜は笑った。


「は、はい。死んでしまうほど嬉しいです」


「奴隷の首輪とかないかな?」


「茜ちゃん、物騒よ」


「白田さま。それだけはご勘弁を。この織田、白田さまの忠実な僕となりますから。何卒何卒」


と茜は口だけの奴隷を手に入れた。


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