第87話 ラッキースケベは必・・あぁ! そんなものねぇーよ!!


「あっ、それからこれを使えるようにして」


と茜は腰からプラスティックで出来たマシンガンとおもちゃのピストルを取り出した。

茜はこの日に備えて肌身離さずスカートと腰の間にこの2丁を仕込んでおいた。

持ち物検査や教師に注意されても


「教師たるあなた方の不注意で私のお兄ちゃんは異世界へ連れ去られてしまったのよ!!

 次に召喚が来た時、これさえあれば生き残れるから・・・・・・」

と、訳の分からない事を言って当り散らして没収を逃れていた。


「両方とも銃弾が永遠に出るようにして。玉切れにならないようにしてね。

なんだかこのマシンガンは銃弾が切り替えられるようになっているってお兄ちゃんが言ってたわ。

だから、そういうようにしておいてね。

そして、マシンガンの下の銃口から手榴弾みたいのあるじゃない。 

 ポンッとか言って飛び出るやつ! あれも出るようにしておいてね。

これも色々と切り替えが出来るらしいの。

 お兄ちゃん、喜ぶと思うからオモチャの設定通りしておいてね」


どうやらグレネードのことらしい。


「それから、私とお兄ちゃん以外、触れないようにしてね。

この銃は子供のころ、お婆ちゃんに買ってもらった形見だから絶対壊れないようにしておいてね」


やたらと注文の多い茜であったが、女神は諦めたような顔をしてプラスティックで出来たマシンガンとおもちゃピストルを手に取り魔法を掛けた。

茜は受け取ると手にとって両方を空に向けて撃つ。


マシンガンはダダダダダダダダとピストルはズキューンと銃声を轟かせた。


「すご~~~い、さすが、お兄ちゃんを召喚で選ぶ女神様ね!」

とニッコリ女神に向けて微笑む茜であった。


「あ、あ、茜ちゃん、危ない」


「大丈夫、大丈夫、試し撃ちだから」


詩織はいったい何が大丈夫なのだろうかと思った。


「おーーーい、クラスメイト諸君、私はもういらないから君達は好きな職業を選び給え!」


そのとき、クラスのみんなの心の声は


「横暴」「傍若無人」「独裁者」

と女神にははっきり聞こえていた。



「なんか武器とか防具無いの?」


クラスメイト達は誰もが思った。

「お前、今銃を手に入れただろ!!」

「いやいや、お前もう充分だろ!! もういらないだろ」

「まだ、欲しがるのかよ」

と。


「あっ!この剣、良さそうね」

と女神の隣にある岩に突き刺さった透き通った紺色の大剣に目をつけた。


「あああ、神剣・タナ様の剣。選ばれたものしか抜くことは出来ません。それは、あ・・・・」


「タナ? うちの犬と同じ名前じゃない。じゃ、私が貰っていくから」


剣に近寄り引き抜こうと力を入れる。


「ふん、ふん、ふーーーん!! 抜けないわね」


剣の前で大股を広げ踏ん張ったが抜けるどころかビクともしなかった。


「そうです。選ばれた者にしか抜けないようになっていますから」


「めんどうね~~ どっせーーー!!」



ドンドンゴンゴン

ドガドガン

ゴンゴン


と茜は周りの岩を素手でぶん殴った。

ぶん殴った、ぶん殴った、ぶん殴った、ぶん殴った、ぶん殴った、ぶん殴った!

ステータスMAXのパンチは楽々岩をも砕くのであった。


殴りに殴ぐって周りの岩を砕いた。


「抜けた抜けた、ヤッホーー、タナの剣、ゲット!!」


「茜ちゃん、それ抜けたとは言わないよ・・・・・」


「なんか剣の周りに岩の破片が付いているわね」


破片と言うより岩を殴って岩を小さくしただけだったの刺してあった周りの岩は、当たり前のように剣に付着している。

剣についている岩の破片を地面に向けてガツンガツンと叩き付けた。


「お、取れた。でも、まだ破片が付いてるわね。

 まぁ、いいか。そのうち取れるでしょう」


「あ、あ、あ~~~~~」

と女神は膝をつきorz状態になった。。


「こっちの白いローブ?ロングコートも綺麗ね。

 周りの赤い縁取りなんて私の名前にピッタリ、これも貰っておくね」


「あああああああ。それはロゼ様のローブ、返して下さい。それも、あお・・・・」

と縋るような仕草で女神が言った。


「ロゼ?うちの犬と同じ名前じゃない。ヤッパリ私が着るためにあるのね。ありがとう」

と颯爽と着る茜であった。


「ねぇ~みんな似合う?」


男子達は一様に


「お、おう」

「あ、はい」


と返事を返すのであった。


「あっ、それから今、制服着ているじゃない。

これスカート短いからパンチラとかすると困るからスカートがめくれたり、チラッと見えたりしないようにしてね」


もう、女神様は虚脱状態でありながらも茜の指示通りに魔法を掛けた。


「ラッキースケベ、無しかよ」

「白田、サービス、悪りぃーな」

と男子から残念がる罵声を浴びた。


「ラッキースケベ? あぁ~~ そんなもん、ある分けないだろ!!」

と、クラスの男子を一喝するのであった。


「お前ら!これから異世界へ行くけど、私はお兄ちゃんを探すために旅に出るから別行動ね。みんな頑張ってね」


「ええーーー!!茜ちゃん、何、勝手なこと言ってるの。こういうときは団体行動しないとダメでしょ」

詩織が茜を咎めると。


「そうだよ、茜の気持ちは分かるけど、まずはみんなで行動して情報を集めてからの方がいいんじゃないか?

 茜も一人じゃ寂しいだろ。土地勘もないだろう。

 ここはみんなで行動した方がいいんじゃないか」

危ない危ない、究極の力を手に入れた茜を野放しにしたら転移先の世界が破滅してしまう。


「う~~ん、そうね。加奈のいうことも一理あるわね。

 みんな、さっさと職業選んで~

 じゃ、女神様、早く異世界へ送って」



「はい、分かりました。 みなさん、お気をつけて」


と女神様は所在無さげに返事をしながら声は段々小さくなり茜たちを送り出した。

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