第88話 異世界転移


なに?ここは? どこ?

転移したと思われる場所を見渡す。

辺りを見回すと舞踏会でも開けそうなくらい広い部屋で、壁は一面、石が積み重なって作られている。

どうやら城のようだ。


「ようこそ、ハルフェルナに。ファイレル王国に。若人・・・・」


「おじさん、白田 碧というカッコいい少年を知りませんか?」


「達よ、我々の召喚に答えてくれたことに感謝・・・・・・・」


「そこの偉そうなおじさんに聞いているのよ」


「あ、あ、茜ちゃん。ちょっと・・・・・」

詩織が止めに入る。


「する。 私は国王のグレーコ2世である」


「おじさん、おじさん、白田 碧という名前に聞き覚えない?」


「あ、あ、あ、茜!王様が話しているんだぞ」

加奈も止めに入った。


「王様だろうが、何だろうが知らないわよ」


「無礼者!! 国王陛下のお言葉だぞ! 控えぬか!!」

王の隣にいた60過ぎほどの老人が答えた。


「うるさい、おじいちゃんね。おじいちゃんも知らない?」


グレーコは様々な宝石がついている豪勢な杖を右手に持ち両手を広げたまま固まっていた。

ワシ、国王なんですけど・・・・・

と、心の中は泣いていた。



そこへ白銀の鎧を着た爽やかイケメンの青年が微笑を振りまきながら近寄ってきた。


「赤い髪の美しいお嬢さん、そんなに慌てないで話を聞いてください。

 私はアルファ・ファイレル」


クラスの女子達が


「素敵~」

「白馬の王子さまよ」

「あのような方が恋人だったら・・・」


茜の前で立ち止まった。


「素敵なお嬢さん。少し我々の話を・・・・・・・グゴーーーーー!」


いきなり茜はイケメンにアイアンクローをブチ噛ました。


「お前、今、私にチャームの呪文を掛けただろう! 舐めたことしてくれる!!」


王子!!

無礼者!

不敬だぞ!

周りにいる騎士団が騒ぎ出し茜の周りに剣を抜き寄ってくる。


「お兄ちゃんが言っていたのよね。

 笑顔を振りまきがら寄ってくるイケメンは悪い事を考えているから気をつけなさいと」


「ググググ、痛い。離せー」


「はぁ~何言っているんですか?

 レディーにいきなりチャームの呪文を掛けておいて! 

 何ふざけているんですか?」


一段と指先に力を入れる。


「あ、あ、あ、あ、茜ちゃん。ダメ、離して。王子様に何してるのよ!国際問題になっちゃうわよ」

いや、そこは異世界問題だろ!というツッコミは無しにしてくれ。


「茜、大事にならないうちに手を離すんだ!」

加奈が茜を引っ張りながら叫んだ。


仕方なく茜はアイアンクローを離すことにした。


「お、お、お前、第一王子の私に何たる無礼な! 死刑だ!!」


ガバッ

茜はさっきより強い力で王子にアイアンクローを噛ました。


「はぁ?」


「ぐはぁ~~ 痛い、痛い、離せ~~」

王子はあまりの激痛に涙目になり鼻水をたらした。

イケメンも台無しである。



「鼻水たらしながらビービーうるさいな、お前。

 それでも王子か? お兄ちゃんのほうが我慢強いぞ!」


いやいや、あんた、さっき女神様からステータスをフルにしてもらったでしょとクラスメイト達は思った。

茜のHP、MPをはじめ体力、力、魔力などステータスは『9999999』完スト状態であった。


なぜ、王子のチャームの魔法が分かったかというと、ステータス以外にも様々な耐性までも付与されている。

魔法耐性、毒耐性、疲労耐性、ステータス異常耐性・・・・・・

1分で1割のHP・MP回復を持っている。

しかもタナの剣には1分で2割のHP回復、ロゼのローブにも1分で2割のMP回復される。

それどころかロゼのローブは悪意のあるすべての魔法の完全無効化、悪意のある攻撃の完全無効化が備わっている。

ハルフェルナで最大のダメージを与える攻撃、魔法でも1発で1000を超えることは無い。




「あ、あ、あ、茜様。お許しください」

王子は白旗を上げた。


「仕方ないわね~ 離してあげるから、もうビービー言わないで。

私の質問に答えなさいよ。

 私のお兄ちゃん、白田 碧という格好いい少年を知らない?」


王子は跪き答えた。


「も、申し訳ありません。存じ上げません」


「お、お、王子、大丈夫ですか?」

「無礼者!!」

「成敗してくれるわ!」

周りに騎士団らしき武装をした者が王子の周りを取り巻き茜に剣を突きつけた。


「止めろ! お前たちでは敵わない。無駄死にするだけだ」


アルファは魔王とも相対した事がありファイレル王国の中でも5本指に入る強騎士であった。

そのアルファに敵わないと言われれば騎士団たちは剣を治めるしかなかった。

幸いにして王との謁見の場が血塗られることはなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る