第37話 カレーライス


宿代はオーク2点セットのおかげで賄えそうだということで今日はモンスター討伐では止めて各自自由にする事になった。

智弘、七海は図書館へ、将太と則之は俺の商売を手伝ってもらうことにした。

自分の作ったカレーがどれくらい売れるの気になっていたので朝から市場に出向き材料を買い込んできた。

それと武器屋で鎧を装備することができるか試してみたが予想通り装備しても動くことが出来なかった。

朝食の用意をした後、仕込みに取り掛かった。



俺には勝算があった。

ハルフェルナのカレーは食べればカレーと分かるのだが、家庭で作るカレーのルーを使ったもの、ファミレスなどで提供される工場で一括で作ったものとも違う。

ましてや高級カレー屋の味とも違う。

何かが足りない。

一味どころか二味も足りない。

味が深くないのだ。

単純にカレー粉を使っただけの料理。

不味いとは言わないが日本人から言わせるとダメカレーなのだ。

カレーとラーメンは日本が世界一美味しいと言われるだけあって我々の舌を満足させることができる味では無い。

と、偉そうに語っているが俺が凄いのではなく料理スキルが凄いだけなのだが。


そうそう、朝食を作ったらまたレベルが上がった。

今度はサックブラッド・ナイフというモノを贈ってくれた。

このナイフは名前の通り、血を一滴残さず吸い取ってくれるという優れものだ。

昨日のオークの解体の苦労を天界から見ていてくださったのだろう。

女神様からの注意書きが同封されていて


「このナイフは大変危険な物なので紛失には気をつけてください。

もし紛失したときは碧さんがナイフをイメージすれば手元に戻ってくるようになっています」


おお、これは凄いぞ。

フフフフ、チートアイテムでは無いか!!

使える! このサックブラッド・ナイフは使える!!

そう、俺はこのナイフを使った戦い方を思いついたのだった。

フフフフ、今に見ていろモンスター共!!

と悪い笑みを浮かべた。


もう一通、手紙が同封されていた。


「碧さんの料理スキルは素材の力を最大限に生かすことが出来ます。

たとえば、料理に薬草を混ぜるとHPの回復効果が付与されます。

毒消し草を混ぜると毒に対する耐性が付きます。

このスキルを今後の旅に生かしてください」


この事を知っていればマリーちゃんは助かったのかもしれない・・・・・・

教えてくれなかった女神様が悪いのではなく俺が色々試さなかったことがいけなかったのだろう。

人生はTry&Errorなのだから。

これから食事に薬草と毒消し草を少量ずつ混ぜるようにしておこう。



市場に出店の申請を願い出ると商業ギルドの人が言ったとおり冒険者ギルドの近くしか空いていなかった。

なぜ空いているかというと、冒険者ギルドの側は必然的に冒険者が商売相手になる。

冒険者たちは往々にして荒っぽい物が多いので揉め事になる可能性が高いので嫌われているそうだ。

トラブルがおきたときのために用心棒として則之に来てもらおう。

お手伝いは我がパーティーの綺麗どころ将太が後から来る事になっている。



昼食時になり冒険者ギルドの隣で店を開いた。

ハルフェルナには現代世界で言うコンロと同じような魔道コンロというモノがあり、

違いは魔道石が燃料になっているのだが1台100万円は下らないそうだ。

仕方ないので、いつもの石で作ったみすぼらしい釜戸で作ったカレーを温めるのであった。


女神様のマジックランドセルが優秀なのだ。

普通、ランドセルから引っ張り出すように取り出すのだろうが、

コンロの上にランドセルを逆さまにしてカレーを作った寸胴をイメージするとコンロの上にスルッと出てくる。

回収するときも持ち上げてしまうことなくランドセルを逆さまにして被せるだけで収納できるのだ。

これなら100人前作れる寸胴も持ち上げることなく出し入れ出来る。

なんと釜戸に火が点いたままでも出し入れ可能。

当然、中の物も燃えることがない

ありがとうございます。女神様!!



釜戸に乗せ用意出来たところで寸胴の蓋を開けカレーの匂いを当たりに撒き散らす。


ホレホレ、いい匂いだろ。

食欲をそそるだろ。

ナミラーの町をカレーライスで征服じゃ~

俺はカレー王になる!!

とまでは思わないがカレーの香りの破壊力は半端ないだろう。



すると、昨日の受付のお姉さんとタマのおばちゃんがやって来た。


「いい臭いがすると思ってきてみれば、昨日のタマのお兄ちゃんかい」


ぐはっ! おばちゃんも俺の事をそう呼ぶのか。

と俺は心に深い傷を負いながらも笑顔で


「カレーですよ。驚くほど旨いですよ。一皿いかがですか?」


「じゃ、二人分貰おうか」


「2杯で2000円になります」


「高いよ、半額にしなさいよ」


「え!!それじゃ利益が出ないですよ」


「私達は安月給なんだよ。一食1000円なんて出せないよ。こんな可愛い子に1000円なんて出させるのかい?」


「じゃ~仕方が無いですね。『碧君、素敵! ウフ!』と言ってもらったら500円にしますよ」


「そうかい、じゃあたしが言ってあげるから『碧君、素敵! ウフ!』 これでいいね、お兄ちゃん」






「あ・・・・・はい」


おばちゃんじゃないんだよ。おばちゃんじゃ。

ぼ、ぼ、僕はそちらの可愛いお姉さんに言って欲しかったんです。

しぶしぶカレーを装っておばちゃんたちに出した。


「お兄ちゃん、このカレー美味しいね。こりゃ1000円と言うのも分かるわね」


「本当、美味しいですね。私もこんなに美味しいカレー食べたこと無いです」


「あたしゃ、カレーがこんなにおいしい物とは思わなかったよ」


「でしょう。自信作なんですよ」


おばちゃん、お姉さんにも大好評ですな。

ハルフェルナの人の味覚も日本人と同じに考えて良さそうだ。


「長年の研究の成果ですよ。ハハハハハ」


と、ここはもっともらしく大嘘をブッコいておくことにした。

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