第36話 赤城 雄哉
俺はなかなかレベル上がらずに悩んでいた。
勇者という職業はレベルを上げるのに多くの経験値を必要とするようだ。
多くの職業の中でレベル上げの難易度は最も高い職業の一つらしい。
幸いな事にパーティーを組んでいれば全員に経験値が入るので他の者に討伐してもらって入ってくる。
当初は賢者・松原、剣聖・竹井、僧侶・梅沢たちと行動する予定だったのだが、
あまりにレベルの上がり方が遅いので井沢、栗原たちのアイテムチームに入れてもらい彼女たちの力で経験値を稼がさせて貰っている。
男として情けないが力の差は歴然なのだ。
アイテム系の者達の力は正しくチートという言葉が相応しいくらい殲滅力が高いのだ。
運動神経は抜群に良いが栗原は剣の心得などの無いにも拘らず騎士団長顔負けの剣技でモンスターをなぎ倒すのだ。
もし黒木のような剣道の有段者がチート剣を持っていたらと思うとゾッとする。
井原のチート槍も恐ろしい。投げると百発百中。手元に戻ってくるという有り得ない槍だ。
そして、レオタードのようなスーツが艶かしい。いや、素晴らしい。
剣で切られてもモンスターに噛み付かれても無傷。
魔法さえも防いでしまう。
魔王を封印できるのは勇者しかいないと言うことなのだが。
チート系アイテムを見ると勇者を選んだのは失敗だったような気さえする。
七海に続いてアホ1、アホ2、アホ3が亡くなった。
女神様の力は凄いものだ。
彼らにも名前があったのに誰一人思い出すことは出来ない。
誰もがアホ1、アホ2、アホ3と呼んでる。
当人同士も自分の名前を思い出せずアホと呼んでいる始末。
アホチームは脱走を計り騎士団に見つかり失敗し、その場で3人とも首を刎ねられたらしい。
ハルフェルナは情け容赦のない世界、いや、フェルナンド王に情けが無いのだろう。
こんな王のために力を貸すことなんて出来るだろうか?
そしてガルメニアの侵攻が始ってしまった。
鈴木、星野、山中以外はガルメニアに待機、いや、軟禁されている。
あの3人以外使い物にならない・・・というか戦争に協力できない旨をフェルナンド王に伝えた。
日本で教育を受けた俺たちが、なぜ意味もない戦争に協力できるのだろうか?
「魔族からの侵略を防ぐために人類を統一しなくてはならない」
と、フェルナンド王は綺麗ごとを言うがあの王を信頼することは出来ない。
どう考えても野心がむき出しではないか。
人類を統一するのであれば話し合いによってなされなければ意味が無いはずだ。
しかも、武力によって制圧・征服をするのなら新たな対立・憎しみを生むだけでは無いか。
罪も無い人が自己の欲望のために殺されていく。
そんな事に誰が協力することが出来ようか。
が、あの3人は率先してフェルナンド王に与したのだった。
武勲を挙げれば爵位・恩賞も思うまま。
愚かだ。愚か者の考え方だ。
山中などは人間、亜人のハーレムを作るために力を貸すそうだ。
くだらない。
そんなことのために人を殺せる思考が理解できない。
山中は極度の内向的性格で人付き合いができないタイプの人間だ。
愚痴っぽく僻みっぽく、気難しく、自己主張が強く、自分の話ばかりし人の話をまったく聞こうとしない。
自分が一番優れていると思っているようだ。
女子達はオタク的趣味だけで水原と同一視するが俺には理解できなかった。
水原は善悪の分別はある。
人の話を理解できる頭脳を持ち冷静な判断力を持っている。
偏った知識は持っているがそれは人間一人一人の好みの問題だ。
そして、何より白田、緑山、黒木という友人を持っている。
3人とも人を外見だけで判断しない目と心を持っている。
少なくとも水原を含めた4人は人の陰口など言って楽しむような人格はしていない。
職業的には色々と微妙な点はあるが、もしパーティを組めるのならあの4人と組んでいたい。
けして仲間を見捨てるようなことはしない、他の誰よりも信頼できると思う。
あのメンバーにリッチの七海がいれば大概の困難を乗り越えることがでただろう。
リッチの力を発揮することなく・・・・・・・
七海が亡くなったことは今でも信じられない。
聡明で気がきいて誰にでも優しく誠実に接する人だ。
クラスメイトの誰もが動揺し残念に思ったことだろう。
失ってはいけない人だったのだ。
これ以上、戦火に巻き込まれないうちにガルメニアから逃げ出さなくてはいけない。
俺たちは人殺しをするためにこの世界へ来たのでは無いから。
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