第38話 悪徳商人と聖女様
いつもなら昼間の時間の冒険者ギルドは人が少ないはずなのだが近くの森にモンスターが多く出現しているので休憩・素材の売買を兼ねて昼に一度戻ってくるチームが多い。
将太も合流してくれたので、ここから本格的な商いを始めるとしましょう。
カレーの匂いに釣られて一人、また一人購入をしてくれる。
やはり値段が高かったのか「もっと安くならないか」と聞かれることが多い。
が、1000円という値段を譲るつもりは無い。
イゼリアで食べたカレーが定価700円。
俺の作ったカレーはあの2倍は確実に旨い。これだけは自信がある。
肉の量だってかなり多く入っているので1000円を譲るわけにはいかない。
販売を開始して10分後くらいには行列が出来るほどになった。
その頃には値段の事を言うヤツは一人もいなかった。
それどころか2杯目を御代わりする冒険者も少なくなかった。
「兄ちゃんの作ったカレー食べると体力が回復する感じがするな~ いいスパイスでも使っているのかい?」
「そりゃ、企業秘密ってやつですよ。ハハハハ」
俺のカレーは体力が20アップするのだ。
疲れているときは回復効果があるようだ。
そして、用意したカレー100杯は1時間足らずで売り切った。
そうだろう、そうだろう。フフフ。
その辺のカレーとは違うのだよ!その辺のカレーとは!!
フフフフフフ、売り上げ10万円だ。
材料費、紙皿、スプーン代、労働コスト、出店料などを考えても5万円の利益は出せたのでは無いだろうか。
金欲に目が眩んだ俺は昼ごはん用に用意しておいた自分達、女神様の分も販売してしまった。
やばい、女神様になんて言い訳しようか。
夕方の客を狙ってもう一度100人分作っておく事にしよう。
お昼には少し遅れるが、その分から女神様のお供えを出そう。
夕食分の仕込をしていると血を流しながら腕を押さえている30後半を過ぎた軽装の装備をした冒険者がやって来た。
思わず、どうしたのですか? と聞くと。
「ハハハハ、オークに不意をつかれドジっちまったんだよ。そのときポーション落としちまってな~」
将太が慌てて冒険者に近づき
「ヒール」を唱えた。
見る見るうちに傷跡は塞がった。
「おお、お譲ちゃん、ありがとよ。助かったよ。少ないけど、これ取っておいてくれ」
と5000円を差し出したが将太は受け取らなかった。
「善意でやっているので受け取れません。それに、こう見えても、僕・・・・・男なんです」
「えぇぇぇぇ。男か! てっきりシスターのような格好しているから。 今流行の『男の娘』ってヤツか?」
「そういうわけでは無いのですけど・・・・・・女性物の服しか着れない呪いというか・・・・何というか・・・・」
将太は顔を赤くしながら下を向いた。
なんか前より可愛くなっているのは俺の気のせいなのか?
それより、異世界でも『男の娘』って流行っているのか? 恐ろしいな、ハルフェルナ。
夕飯の仕込を終え、遅めの昼食と女神様へのお供えをする事にした。
すると、レベルがまた上がった。
今のところ料理をするたびにレベルが上がっている。
ひょっとすると料理さえすれば上がるのでは無いだろうか?そんな気さえする。
レベルは35になりHPを400に迫る勢いだ。
体力や攻撃力は当初の伸びは無くなったのだが素の攻撃力は則之をも超えている。
剣技が無い俺は動きの遅い敵にしか攻撃は当たらないだろう。
魔法関係は上がる気配はないがHPは400近くあるのだ。
これなら防具が無くても多少なり前に出ることは出来るのではなかろうか・・・・・
おまけで前回の物の2倍のサイズの寸胴が2個追加された。
これは本格的に料理で稼げと言うことなのだろうか?
包丁も「一段と切れる包丁」に鍋関係は「より頑丈な鍋」に上がったようだ・・・・・・
でも、これって意味があるのだろうか?
日が傾き始めた頃になるとモンスター討伐や依頼のために出て行った冒険者達が戻ってきた。
さぁ、商売商売。
カレーの蓋を開け匂いを辺りに撒き散らす。
フフフフ、この匂いに耐えられるか?
このナミラーの町をカレー中毒にしてやる!!
俺の作るカレー無しでは生きていられない体にしてやる!! フフフフ。
俺は悪徳商人の如くほくそ笑んだ。
「おお、兄ちゃん、一皿頼むわ」
昼間に将太にヒールをかけてもらった冒険者だ。
「兄ちゃんのカレー大評判なんだってな~ ギルド内でも話題になってるぞ!」
「おおお。兄ちゃん、夜も店出しているのか。また一皿頼むわ」
今度は御代わりをした冒険者が来た。
「疲れてるときに食べると生き返るな~ ガハハハハハハ」
徐々にギルドに帰ってくる冒険者が増えると、あからさまな怪我人も増えてきた。
ギルド内からポーションは売り切れたよ!
入荷は明日の朝!とか
神官、僧侶いないか?
と聞こえてくる。
将太が慌ててギルド内へ入っていった。
「ヒール」
「ヒール」
「ヒール」
「ヒール」
片っ端から怪我人へヒールをかけているようだ。
「ありがとう。お譲ちゃん」
「ありがとう。お姉さん」
「聖女様。ありがとうございます」
「聖女様・・・・・」
聖女様、聖女様、聖女様・・・・・・
ギルドの中らから聖女様、聖女様と。
将太も善意でやっているのだが、女性と間違えられるのは痛し痒しといったところだろう。
諦めろ、将太。
お前が中世的な美少年なのが悪い。
すると、将太がギルド内から飛びだしてきて俺の後に隠れた。
?????? どうした?
「アオ君、助けてよ。パーティーの勧誘がうるさくて」
何人かの男が将太を追ってギルドから出てくると。
「なんだ、カレー屋の兄ちゃんの彼女か。仕方ねーな」
「パーティに誘おうと思ったんだけどな~」
「その兄ちゃんと別れたら、俺たちのパーティに来てくれよ」
冒険者たちは諦めてギルド内に戻っていった。
中からは
「男連れのパーティーだとよ。諦めろ」
「男いるのか~残念」
などなど声が聞こえてくる。
「おい、将太! お前、変なこと言ったんだろ。何を言った!!」
「えっ・・・・・・パーティーに入っているからとか言っても聞いてもらえず、あまりにしつこいから彼がいるからって・・・・・・」
えええええええ! 将太、何言ってくれちゃうの?
「おおおおおい、俺はそういう気は無いからな。ガキのころからの大切な親友だけど・・・・・
そういう気は無いからな!!!」
「わ、わ、判ってるよ。僕だってそういう気は無いから」
「ブハハハハハハハ、碧殿、将太殿を嫁にするしかないでゴザルな」
則之、お前、ブハハハじゃねぇ~よ!
人事じゃないんだぞ!!
お前も女になるんだぞ!
で、お前はその巨体とそのゴツイ顔で女になったら必ず「メスゴリラ」と呼ばれるようになるんだからな!!
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