第14話 初めてのモンスター戦

俺たちは森の街道を馬車で進んだ。

二頭立ての馬車なのだが馬が賢いのか完璧に調教されているのか操縦も思いのほか簡単だった。

手綱を馬に軽くピシっと叩けば勝手に歩き出してくれる。

走らせることは難しそうだが歩くのには高度なテクニックは必要が無いようだ。

則之がとても上手く、ほぼ、一人で操舵を引き受けていた。



みんなの魔法やスキルの事を話しながら街道を進んだのだが、俺が予想以上に役立たずと言うことが露見した。

他のみんなは何となく自分の魔法やスキルが分かるらしいのだが、俺には料理のレシピ一点だけ。

野菜スープのみ!! 情けない・・・・・・


七海はリッチなだけあって様々な魔法を使えるようだ。

この世界はおおよそ火、水、風、土の4大元素魔法に加えて、聖魔法、暗黒魔法、固有魔法の7つに分かれているそうだ。

固有魔法とは先の6つに含まれない魔法の事を言う。たとえば空間収納が代表的なものとされている。

七海は聖魔法以外の6つを使用できるとのことだ。

リッチ、半端ないっす!!

特に水魔法は長旅の水の確保の心配をしなくて済むのがありがたい。

ただ、詳しくどういう魔法が使えるかはよく分からないようだ。


智弘は火、水、風、聖の4つに適正があるようだが、火と聖の低級魔法以外は封印されているらしく使えないようだ。

将太は聖魔法のみで今のところヒールだけしか使えないと。

則之は聖魔法が使えるようだが封印されているらしい。

スキルが多く使えるようだが身体強化以外は何が使えるか分からないようだ。


「俺、どうしよ~ 役立たず以外の何者でもないよ」


「安心しろよ、シャベル剣法でも編み出せよ!」


「智弘、お前、無責任な! マジでオチこんでるんだぜ!」


「私と一緒にお料理作りましょ~」


優しい、優しい、リッチになっても七海は変わっていない。





「みんな、こんな骸骨が一緒で嫌じゃないの?」


「全然、七海は七海だよ。七海が居なかったら俺たち殺されていたよ」


「七海さん、気にすることないよ」

将太が御者台から振り向いて言う。


「そうでゴザルよ。七海殿がいたから助かったでゴザル」


「七海、お前のおかげで今こうしていられるんだ。感謝しかないよ」

智弘が続く。


「俺なんか、七海と一緒に旅できてテンション上がりっぱなし! 

ついさっきまで、七海は死んでしまったと思っていたから、こんなに嬉しいことは無い。

七海の体を元に戻す方法を探さないとね」


「白田君、ありがとう。みんな、ありがとう」

七海は俯きながら泣いていた。






ヒヒーーーーーン


馬が嘶き止った。


「何かいる、何か来るでゴザル!」

則之が叫んだ。


ガサガサ、バサバサ


周りの草木を掻き分け生物が飛び出してきた。

子供くらいの背丈の醜い顔をしたモンスターだ。


「ゴブリンだ!」

智弘が叫ぶ。

10匹くらいのゴブリンが馬車に向かって走ってくる。しかも、先頭の何匹かは剣のようなものを持っている。


則之が御者台から飛び降り剣を構える。


「将太、七海は馬車にいろ」


俺はシャベルを手にして馬車から飛び降り構える。


智弘もシャベルを右手に構え左手でマジカルステッキ額に当てて魔法を詠唱した。


「ファイヤーボール!!」


ゴブリンに命中し動かなくなった。


則之の長身から振り下ろされた剣の一撃はゴブリンの頭を勝ち割り、水平斬りは首を刎ねた。

ほんの一瞬で2匹があの世へ旅立った。

俺も負けじとシャベル剣法で剣を持った一匹と交戦。何度か打ち合いの末、撃退に成功した。


その間、則之と智弘は次々と倒していった。

そして、最後の1匹を俺が倒し一息つこうとしたとき則之と同じくらいの背丈のゴブリンが出て来た。


「デカイのが来る!上位種だ!気をつけろ!」

智弘が叫ぶ。


大型のゴブリンが持っている棍棒を俺に投げつけてきた。

は、は、速い!

「グボッ!!」

かわしきれず俺の肩に直撃した。

あまりの激痛に跪いてしまった。

ゴブリンはタックルを喰らわそうと突進してくる。動けない。動けない。やばいぞ。


「サンダーボルト!! フレイムアロー!! サンダーボルト!!」

七海が馬車から飛び出し魔法を3連発で唱えた。

ゴブリンの突進は止まり、明らかなダメージを負っている。

そこへ智弘が腹にシャベルを突き刺し、則之が肩を切り裂き首を刎ねた。

首の無くなったゴブリンは仰向けに倒れ絶命した。


将太も慌てて馬車から飛び出し、俺にヒールを掛けてくれた。

昨日から将太に何度助けられたことだろうか。

七海と将太がいなかったら確実におっちんでいたことだろう。


「あ」 「ア」 「あぁ」 「アッ!」


戦闘の直後4人がいっせいに声を上げた。


「レベルが上がった」


「レベルが上がったみたい」


「レベルが上がったでゴザル」


「レベル?上がったように感じたけど」


どうも今の戦闘で4人はレベルが上がったようだ。俺にはそのような兆候、感触はなかった。


「なんかレベルが上がったみたいだぞ。誰かステータス画面見えるヤツいるか?

女神様の間のときみたいにイメージしているのだけど見えないんだよな」


智弘がみんなに聞く。

他のみんなもイメージしてみるが見えないようだ。


「俺は上がらなかったのか、鈍いのか分からないがどんな感じなんだ?」


「なんか分からないがレベルが上がったというのは分かるんだよ」

と智弘がマジメに答える。


「僕、戦闘に参加してないけど、なぜ?」


「それは、碧にヒールを掛けたからかもしれないな」


「将太殿は昨日からヒールを掛けまくっているでゴザルからな」


レベルは上がったらしいがステータスがどうなっているか分からないらしい。

どうやら新たな魔法やスキルは取得していないようだ。

俺だけレベルが上がらないのは寂しいがみんなのステータスが上がるのは望ましいことだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る