第15話 イゼリアの町と冒険者ギルド


街道を馬車で進むと隣町のイゼリアに着いた。

町の外で俺と七海は待つことにして智弘たちに七海の姿を隠すためにお面、手袋、靴を買ってきてもらう事にした。

取りあえずは俺の余った衣類を着て貰って町に入ってから七海の好みで選んでもらうことにした。


「白田君、ごめんなさい。私のせいで火傷しちゃって。火傷は消さないの?緑山君の魔法で消せるでしょ」


「異世界にいる間は消さないでおく」


「私、責任感じちゃうよ」


「七海を守ることができなかった罪を背負う男・白田碧!! かっこ良くない?w」


「やだーやめてよ。白田君が悪いわけじゃないんだから。

それに何度も助けてくれてありがとう」


「助けてもらったのは俺のほうだから。七海がいなかったら2回死んでるから」


「ううん」

七海が首を振り話を続けた。


「さっきの賊を殺したのも私のためでしょ。

あのまま放置しておいたらあの人たちは私の魔法で死んだと思うの。

白田君がとどめを刺すことで私が良心呵責に苦しまないようにしてくれたんでしょ」


俺は頷きも否定もしなかった。

これ以上、七海に苦しい思いをさせたくなかった。ただ、それだけだ。


「ありがとう。白田君は優しいのね」

と表情が無いはずの七海が笑うのが分かった。


「でも、私、リッチになったからなのかもしれないけど、人を殺すのに迷いが無かったの。

仲間を守るためなら平気で強力な魔法を討つことができると思う。

そして、寝ないでも食べないでも平気なの・・・・・・」





「もう、自分じゃないのかな?」

ポツリ、七海は寂しそうに言った。


「七海が元に戻れる方法を探そうよ。みんな協力してくれるから探そうよ」


「ありがとう。ありがとう」

七海は下を向きながら答えた。






「おーーーい、お二人さん!! 待たせたな。ついでに情報収集してきたぞ」

智弘たちが買い物を終えて戻ってきた。

七海用のお面は舌を出した可愛い顔の犬なので似合っていた。



「町に行ったら冒険者ギルドに登録して依頼をこなしながら生計を立てていこう。それと、レベル上げもな。

簡単に登録できるから身元不明な俺たちでも問題ないぞ。

町に入るのに一人3000円取られるけどギルドカードがあれば町に入るのに無料になるから有ったほうがいいな」

といってギルドのカードを見せてくれた。


「そんなに簡単に登録できるのか?」


「石版に手を置いただけでゴザルよ」


「なんか変な情報が漏れたりしなかったか?」


「いや、何も問題なく。すんなりいったでゴザルよ」




俺と七海も冒険者ギルド登録と御者のおじいさんの遺体を引き渡すために馬車でイゼリアの町へ入った。

まずは御者のおじさんの遺体を引き渡しに騎士団の詰め所へ向かった。


詰め所で何も問題なく遺体の引渡しが行われ、馬車も俺たちが貰っても良いと言うことになった。

俺たちの話がイゼリアにも伝わっていないか不安ではあったが何一つ疑われるようなことはなかった。

その後、冒険者ギルドへ向かった。


七海の格好が怪しすぎるのだがギルド内にはローブにマスクの装いの者がチラホラいた。

誰も不審に思う者はいなかった。

それよりモヒカン頭に化粧、ピアスをした露出の高い女戦士の方が目立っていた。


七海がどこにでもありそうな石版に手を当てると「ピカー」と輝いた。

職員のアンちゃんが


「おお、これは優秀な魔法使いさんだね。すぐにCランクくらいに上がれそうだ」


冒険者のランクはSからGまでありSが最上、Gが最下となっている。

例外的にSS以上のランクがあるようだが、これは国が与えるようなランクだそうだ。

勇者・茜様は歴史上唯一のSSSSランクだそうだ。

言いにくいから「フォース」と言いうことらしいが誰も「フォース」とは呼ばず「茜様」で通じるようだ。

冒険者ギルドでは倒したモンスターを買い取ってくれるということだ。

あるモンスターは肉として価値があり、あるモンスターは毛皮が、あるモンスターは角が。

ドラゴンなど高レベルのモンスターは血の一滴まで素材すべてに価値があるそうだ。




そして、俺の番になり石版に手を置くと・・・・・







何も光らない。


え?なんで?



「あーー、お兄ちゃんは冒険者には向かないね。

冒険者になるためには戦士だろうが武闘家だろうが魔力が必要なんだよ。

魔力が無いと冒険者カードが反応しないんだよ。

だから冒険者ギルドには登録できないんだよ。

戦いをしてもレベルは上がらない職種だから冒険者は諦めた方がいいよ」



ガビーーーン!!

なぜだーー なぜ、俺はここまで異世界に嫌われている!!


「冒険者にならないと町に入るのに金取られるでしょ、毎回3000円の出費は厳しいですよ」


「それなら、他のギルドに加入するしか無いね」



発明ギルド   利用価値がある発明を持っていかないと加入できない。

学術ギルド   加入するのに難しい試験がある。加入しているのは学長や有名な本の著者など俺には加入できそうになかった。

錬金術師ギルド 錬金術師以外お断り。

学芸ギルド   芸術家のみ

と主だったものを説明してくれた。

最後に

商業ギルドを勧めてくれた。


「商業ギルドですか・・・・・・・」



それにしても、冒険者ギルドっていい加減すぎないだろうか?

手を置いて光っただけで身分証明書にもなるギルドカードを発行してくれるなんて・・・・・

仕方ないので商業ギルドへ行ってみた。

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