第5話 いざ異世界へ



「う、う~~~ん」


徐々に意識が戻ってくる。

気がつくと大理石の床の上で寝ていた。

すでに何人かは立ち上がって周りの者達と話していた。

ここはどこだ?

まぁ、転移先には違いないのだが。

立ち上がり周りを見るとやたらと広い部屋だった。

パーティなどイベント用もできるくらい広い部屋だ。

両脇の壁沿いには鎧を着た数十人の騎士が帯剣して直立不動で立っていた。



「異世界からの召喚者諸君!!

ようこそガルメリア王国へ!私がこの国を治める、フェルナンド3世である」


部屋に大声が響く。

声の主の方を見ると、王様というより将軍というほうが似合いそうな大きな男がいた。

服装も王様らしい派手な服と言うより軽装な鎧に漆黒のマントを羽織っている。

城に居ても鎧を着ているような王様だ。

城にいて戦いを待つというより前線で指揮を取るタイプの王様なのだろう。



「まずはステータスの鏡を使って諸君らの能力を見せていただきたい

神官長、持ってまいれ」


王の隣に居た、いかにも神官のような白いローブを着た60は過ぎていそうな老人が若い神官達に目配せをした。

すると神官達の後ろの方から背の丈ほどの巨大な鏡を数人がかりで丁寧に運んできた。



「この鏡はステータスの鏡。一人ずつ鏡の前に立ち体を映し、手で触れなさい。

諸君らの能力が映され、我々も諸君らがどれくらいの能力を持っているか分かるようになっておる」



『神々の力』? 『女神の祝福』ではないのか?

ハルフェルナの世界では『女神の祝福』のことを『神々の力』いうのか?

それとも、召喚する神はあの女神様以外にも居るということなのか?



「さぁ、異世界から転生者よ、そなた達の力を我に見せよ」


フェンルナンド王が右腕を挙げ宣言した。

俺たちは客人として迎えられているのではなく兵士として迎えられているようだ。

いや、下手すると駒にぐらいしか思われていないのかもしれない。


「誰から行く?」

「お前、行けよ」

「やだよー、お前こそ先に行けよ」

「こういうことは男子からね」

「こういう時に限って男子って、男女平等じゃないのかよ」


クラスメイト達がざわつき始めると。


「俺から行きます」


お、さすが、我らの頼りになる委員長 赤城君。

頼もしい限りですな~


赤城は言われたとおり全身が写るよう鏡の間に立ち右手で鏡に触れた。



鏡がまばゆい光った瞬間、赤城の体には鎧がが装備されていた。

足元には剣と楯があった。


女神様、すげーー 職業だけではなく装備までついているのか!

太っ腹だぜ。

?????


職業についていて装備までもあるって、アイテム系の人間は損してないか?

俺のキッチンセットも期待して良いんですよね。女神様。



鏡には各種ステータスが表示されているようだ。


若い神官の一人がステータスを読み上げる。


  赤城 雄哉 


 【 職 業 】 勇者


 【 レベル 】   1 


 【 H  P 】 200

 

 【 M  P 】  50


 【 体 力 】  200


 【 魔 力 】  100


 【 攻撃力 】  150

 

 【 防御力 】  100 


 【 俊敏性 】  50 


 スキル  剣術LV1 楯術LV1 弓術LV1

 魔法   光魔法LV1 雷魔法LV1

 特殊技能 封印



「LV1でこのステータスは、さすが勇者といったところでしょうか。国王陛下

もう少しスキルが欲しいところですが勇者として必要最低限の物はもっているようです」


神官長らしき老人が国王に告げた。


「『伝説の勇者 茜』レベルの者は、そうそう現れないということか」


茜?妹の茜ちゃんと同じ名前だ。

珍しい名前かもしれないけが無い名前では無いからな~


「アオ君、『伝説の勇者 茜』だって。茜ちゃんのことじゃないw

茜ちゃんが召喚されたら勇者ぐらいなっていそうだよ」


「いやいや、茜さまなら魔王だよw」


お前ら、俺の可愛い妹になって事を言う!

将太、智弘、元の世界に戻ったら茜ちゃんに言いつけてやるからな。おしおきを覚悟しておけ。



「さぁ、次の者、参れ」


次々とクラスメイト達が鏡の前にたった。

松原 博

賢者・・・・・


竹井 猛 

剣聖・・・・・


梅沢 一

僧侶・・・・・


・・・・・・


赤城と同じく、みんなその職業らしい服装に変化すると足元には武器関係のものが置かれていた。

女神様!ちょっと質問があります。

職業を選んでも武器や防具が付いてくるのはおまけだと思うのですが?

ぼ、ぼ、僕は非常に不安です。ますます、不安になりました。教えてください女神様。



ここで、アイテム系の数人が鏡の前に立った。

デュラランダル、アロロンダイト、エクズカリバーなど、どれもパチモノとしか思えないのだが、

その名前を聞いたとき国王、神官、周りに居た騎士たちもどよめいた。



「凄い神様だ。これだけの伝説と言われている武具を召喚者に渡すとは。

今までの召喚で最高最大の『神々の力』だ!」


王はご満悦な顔をして感心したようにうなずいていた。

アイテムの後にステータスを神官が読み上げると王は渋い顔をして、


「アイテムを持っている者のステータスは一般人レベルだな」


その時、王は閃いたような顔した後、一瞬だけ悪い顔をしたのを俺は見逃さなかった。

この王様は曲者だ。

きっと碌な事を考えていない。

直感的に俺は感じた。


次は風紀委員の井原 藍が鏡の前に立った。


井原は『ロンロンギヌの槍【防護スーツ付き】』を選んだようだった。

すると他のアイテムを選んだ者とは異なり、鏡がまばゆい光を放った。

すると井原の服装は全身をレオタードの様な薄い布に覆われていた。


防護スーツってレオタードなんですか?


クラスメイト男子はもちろん、周りにいた騎士も


「オオーーー」と


声を出してしまった。

・・・・・・・エロい。エロ過ぎる。

胸がバーーンと出て、腰がキュッと締り、お尻もババーーンと出ている井原が着ると犯罪級のエロさだ。


う~~ん、扇情的!


「キャー何これ、何、ヤダー、恥ずかしい 見ないでー」


井原は腕で体を隠すように女生徒たちの後ろへ隠れるのであった。


本日2回目のラッキースケベ、ご馳走様でした。



どうもアイテムを授かった者はステータスは一般人とたいして変わらないようだ。




そんな時、鏡の前にいる若い神官と目が会った。そして、手招きをする。

あーーー次は俺の番なのね。

一抹の不安・・・・・いや、不安しか無いのですけど。



意を決して鏡の前に立つ。



  白田 碧


 【 職 業 】 学生


 【 レベル 】   1


  【 H  P 】  25


 【 M  P 】   0


 【 体 力 】   15 


 【 魔 力 】    0 


 【 攻撃力 】   20

 

 【 防御力 】   10


 【 俊敏性 】   20


  スキル   料理1

  魔法    なし

 アイテム  とても便利なキッチンセット【オマケつき】


と鏡に表示されると足元には、包丁1本 まな板1枚 20cmの両手掴みの鍋 が現れた。



若い神官が「はぁ?」という顔をしたのがはっきり分かった。

俺のしょぼいステータスを読み上げるとクラスメイトや騎士たちから失笑が聞こえた。


「何だこれは!ふざけているのか!余をバカにしているのか!!」


部屋に国王の怒号が響き渡る。


「包丁なんぞいらん! そんなもの我が国でいくらでも手に入る! この神はバカなのか!」 


国王の怒りに小便ちびりそうになった。

俺、殺されちゃうの? 処刑なの? ギロチンなの?

あ!!女神様、こいつ女神様の事をバカ呼ばわりしましたよ。

さっきまで絶賛していたのに。

この王は信用できないヤツですよ。

天誅を落としてください。


「お前のようなふざけた者はいらん。後で金を渡すから余の国から立ち去れ!!」


えーーー、俺、国外追放?

どうやって生きていくの!!

一人ボッチは寂しいよ。

ウサギは寂しいと死んじゃうんだよ。


目の前が真っ暗になった。




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