第7話 光魔術師リリィは陽キャである③



討伐した僕達は町へと戻る事にした。



 リリィは「イェーイ友情パワーッ!!」なんて言ってハイタッチを所望するほどテンションが上がってらっしゃったけど、僕としてはなんだか申し訳ない気持ちでいっぱいだった。



 彼女に貢献できた気がしない。この程度の活躍で報酬を貰ってもいいのだろうか……?



 ……と言っても、リリィの性格から察するに報酬を受け取らないなんて絶対に許さないだろう。明るくて温厚である一方、彼女は自分の発言を絶対に曲げないという頑固な面も持ち合わせていた。



 報酬を受け取る受け取らないの不毛なやり取りをするぐらいならば、素直に受け取ってしまった方がいろいろと楽に違いない。まぁ、ここまで来た運賃代と無理矢理納得しておくことにしよう。



 僕は焼けた大地に落ちた『魔石の欠片』を拾い上げると、再び二匹の『狼』を呼び出した。かなり早く魔獣を討伐できたので、日没には余裕で町に戻れるだろう。



「コン太郎! コン次郎! 生きてたの~~~~~~!! 良かったぁ!!」



 そう言って狼に抱き着くリリィの懐で、プルルルルルと機械的な音が鳴った。彼女はポーチから四角形に削られた魔道具を取り出して強く握るとうっすらと輝き始め、魔道具から慌てた様子の男の声が聞こえて来た。



『もしもし。リリィちゃん聞こえる? ちょっと魔獣討伐で予定外の事が起きた。詳しく説明している暇は無いから僕達の座標だけ送るね。もし手が空いてるなら助けて来て欲しい。それじゃあ』



 プツンと声が聞こえなくなり輝きを失う魔道具。……確か今彼女が手に持っているのは、最近驚異的な流行りを見せている小型通信魔道具『スマイフォンネル』略して『スマホ』という奴だろう。



 何でも一度お互いのスマホの座標を登録する事で、どれだけ遠くにいても魔力を込めるだけで会話が出来る優れものらしい。



 今や魔術師以外も持っているのが当たり前になりつつあるのだけど、僕はもちろん持っていないし、これから持つ気も更々ない。



 あえて流行に逆らう天邪鬼精神とかじゃなくて、本気でスマホを必要としないからである。……僕が持ってても誰と会話するんだよ。会話する友達なんかいねぇぞ。便利な魔道具も僕にかかればただの光らないガラクタである。悲しい事に。



「ごめんエレノアくん! なんだか友達が大変みたいだから助けに行きたいんだけど、一緒に来てくれないかな……?」



 リリィが掌をパンと叩いてお願いのポーズを取る。申し訳なさそうな顔に上目遣いという反則技も相まって可愛さが爆発していた。



「……別に断る理由も無いし、いいけど……」



 僕は目線を少し彼女から外して頷くと、リリィは嬉しそうに感謝の言葉を連呼する。僕はなんだか照れくさくてそっぽ向いてしまった。それから座標を教えて貰い、彼女の友人とやらを助けるために全速力で狼を走らせたのであった。


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