第4章 第18話 神のシステム

悪魔召喚レッサーデーモン!」


 召喚魔法で悪魔を呼び出す。

 こいつは正真正銘の悪魔だからな、こいつなら倒せるんだろう!?


「ほほぉ? 何だねコレは」


「悪魔だよ。お望み通り悪魔を呼んでやったぜ! さあ行け! あいつをブチのめせ!!」


 俺の命令でレッサーデーモンが攻撃を開始する。

 鋭い爪でドミストリィを斬り、魔法の炎で包み込む。

 どうだ? お前は神かもしれないが、こっちは悪魔だぜ?


 しかし期待も空しくあっさりと悪魔は倒されてしまう。


「がっかりしたよ。悪魔とは言っても最下級の劣化悪魔ではないか。たとえ攻撃が通用しても、単純な強さで勝ててしまうではないか」


 ああ分かってるよ。だから俺の狙いはこれさ!


 ドミストリィの腹に巨大な爪が突き刺さり、盛大に血を吐き出した。

 召喚した悪魔の爪さ。斧に括りつけての攻撃だが、十分に効き目がある様だ。


「は、はっはっは、中々面白い事をするではないか。今のは油断したよ」


 だが今度も傷口が塞がってしまう。

 しかし効果はあった。悪魔の体の1部を使った攻撃は、ドミストリィに有効だ!

 

 でもそれまでだった。

 斧につけた爪は簡単に破壊され、悪魔を召喚してもちりにされてしまい、打つ手が無くなる。

 神とか悪魔とか関係なく、単純にあいつが強くて歯が立たないのだ。


 しまったな、他に何か無いのか? なんでもいい、アイツにダメージを与える方法を……。


 何日戦っていただろうか。

 少なくとも3日は経っている。

 この城はドミストリィの支配下にあるらしく、誰も文句を言わないどころか、興味すらわかないようで、見物人も居ない。


 そして遂に決着が付いた。

 俺は念力の様なもので体を持ち上げられ、ドミストリィの指が円を描くと首がねじ切れ、胴体と別れてしまったのだ。

 接近戦でもダメ、遠距離もダメ……どうしろ……と……。


 視界が白黒になる。

 灰色のみすぼらしいフード付きローブをまとい、手も足もなく、顔もない幽霊になってしまった。

 ああ、死んでしまったんだな。

 ごめんリア、デート、出来なくなっちゃった。


 地面に転がっている自分の胴体と頭を見る。

 無理……だったか。

 振り向いてドミストリィを見ると……なんだ? アレ。


 ドミストリィの体、顔や手の素肌の部分が2重にブレている。

 どういう事だ。以前死んだとき、エリーナやリア、宝石ジュエルを見てもあんなのは無かった。

 ドミストリィだけなのか?


 接近して顔と手を観察する。

 なんでダブって見えるんだろう。よく観察すると、手前と奥にわずかにずれて体が存在し、奥側の体は傷が沢山付いている。

 しかしその傷も、かなりの速度で治っていく。


 ……? 体の動きは完全にシンクロしている。片方は無傷で片方は傷だらけ……ん? この傷は俺が付けた場所じゃないか?


 死ぬ前に見たドミストリィの体には傷一つなかった。でもダブっている奥のドミストリィには傷が沢山ある……!


 そういう事か! 考えてみれば当たり前だ、俺達はこの世界に呼ばれたんだ、そこに神なんて存在する方がおかしい。

 無理やりだ、無理やりシステム上で神を疑似再現しているだけなんだ!


 それならどこかにあるはずだ、どこだ、どこだ!


 ……バカか俺は。俺はもう死んでるんだぞ。そんな物を見つけてどうしようってんだ。


 このまま自分の体が無くなるのを見ているだけの存在だ……!


 風景が揺れた。

 風で木が揺れたとかではなく、視界全体が揺れた。

 なんだ? 一体何があったんだ?


 揺れは続き、ついに何かが割れる音がする。

 音は俺の後ろ、建物の2階辺りの空間が割れていた。

 あれは結界? いつの間にか結界が張られていたのか。そして外から人が飛び込んでくる。

 1人、2人……全部で5人が結界を破壊して乱入し、3人がドミストリィに襲い掛かり、2人は俺の死体を触っている。


 どうして……どうしてここに居るんだよ、アズベル、ベネット、エバンス、アニタ、そしてリア。


 アズベル・エバンス・アニタがドミストリィに襲い掛かり、リア・ベネットが俺の死体に手をつけている。

 ダメなんだ……もう治療では治せない、死んでしまったんだ。

 なんで、なんで来るんだよ。勝てるはずが無いじゃないか。無駄死にするだけなんだよ……なんで……。


 アズベル、きっとお前がリアを止めようとして、でも結局一緒に来たんだろうな。

 ドミストリィには攻撃が効かない。いくらお前の高速の剣でも……今、何かが光った。

 まただ、また何かが光った。


 アレがそうか!!


 アイツの頭上3か所で光っている物、監視している目はアレなのか!

 白黒という単純な見え方のお陰で、透明な水晶の反射が良く見える。

 なんとか、何とかみんなに伝える手段はないか!?





「げほっ! ゴホッゴホッ!」


 急激に咳き込んだ。

 なんだ? なんで死んでるのに咳がでるんだ!? 俺は口に手を当てて咳をした。

 手? なんで幽霊に手があるんだ?


「ユーさん! ユーさん!」


 リアが俺の手を握り、ベネットが俺の体を治療している。

 え? え? まさか……生き返った?


「ぼーっとしていないで、さっさと戦いに参加なさい。治療は終わったから」


「やっと、やっと成功したよ! よかった!」


 死者蘇生レザレクション


 第8グループの魔法だ。

 ああ、リアなら使える魔法だったな。

 自分の手を握りしめ、2人をみる。


「あいつの攻略法が分かったから伝えるよ」

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